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第1996話 匂いの混濁

テクニカルタイム明け、奈央のサーブは?

 ☆麻美視点☆


 テクニカルタイムアウトが明けてコートへ戻って来た私達ー。 スコアは8-6となっています。 少しリードー。 サーブは西條先輩に戻ってきているぞー。


「奈央ちゃん行けー」

「言われなくてもサービスエース狙いですわよ」


 西條先輩には強力な回転をかけたサーブがいくつもあり、そのどれもがサービスエースを狙える大技。 次はどんなサーブを見せるのかー。


「次はスラッシュサーブですわよ」


 おー! 新サーブー! これもネオドライブサーブの派生の一種のようで、大きな助走距離を取っている。


「そぉい!」


 パァンッ!


 西條先輩の放ったサーブは、ネオドライブサーブと同じように山なりに飛んで行くが、ネットを越えた辺りで鋭く斜め左方向に落ちた。 まさに「(スラッシュ)」サーブである。 真っ直ぐに落ちると思い込んでいたであろうフランス代表(リベロ)のクロエさんは、慌てて両腕を横に出したがそれでは拾えない。


 ピッ!


「ほら、サービスエースですわよ」

「なはは! さすが西條先輩ー!」

「本当にエース取るんだから恐ろしい」


 佐伯先輩は呆れたように一つ溜息をつく。 エースを取るって言って本当に取るのは凄い事だからねー。


「ふふ。 それじゃあもう一球。 超とっておきのサーブを見せてさしあげますわよ」

「ち、超とっておき?」

「まあ、反則に近いけど」


 と言いながら、やはり大きな助走距離を取っている。 今度はどんなサーブを見せてくれるのかー。


「そぉい!」


 パァンッ!


 インパクト音が響くと、一瞬遅れてボールが私と亜美姉の間を凄い勢いで通り過ぎて、ネットに引っかかった。 こりはサーブミスかー? 西條先輩でもこんなミスするのかー。 フランスサイドではサーブミスを見て中央に集まり、ローテーションを始めている。


 シュルシュルシュル……


 しかし、その時ボールはというと……。


「嘘でしょ……」


 シュルシュルシュル……


 何と、ボールはネットを駆け上がって行き、そのまま越えてしまった。


 トン……


 ピッ!


「ええ……入っちゃったよ」


 ネットに引っかかったボールが、回転の力だけでネットを駆け上がり、フランスコートに落ちて行くという無茶苦茶な事が起きたー!


「ふふふ。 秘技滝登り」


 かっこいいー!


「奈央……あんたの頭の中どうなってんの?」

「おほほほ」


 並みの回転ではああはならないと思われる。 一体どれだけの回転を掛ければ、ボールがネットを駆け上がっていくのかー。 漫画やアニメじゃないんだから勘弁してほしー。


「10-6ですわよ」


 また差が開き始めたー。 フランス代表はローテーションしかけていたポジションを戻してプレー再開。 フランス代表の顔から油断が消えている。


「まだ何か不思議サーブあるわけ?」

「無いわよー。 普通のネオドライブサーブいくわよ」


 あのサーブも普通とは言えないけどー。 


「そぉい!」


 パァンッ!


 しかし、このネオドライブサーブに関してはフランス代表も攻略しているのか、上手く拾ってきた。 フランス代表の攻撃に変わるー。


「むぅ……」


 鼻を使ってセリアさんのトスを読もうと試みる。 しかし、その匂いはセリアさんだけの匂いではなく、マリエルさんやクロエさんも同時にトスを上げようとしている感を漂わせている。 しかも、3人とも別の人にトスを上げようとしている。 これは偶然ではこうはならないと思われるので、意図して私の嗅覚を惑わせる為にやっているのだろう。 しかし、結局最後にセットポジションに入る人がトスを上げるというのは決まっているー。 ギリギリにはなるけど、何とか先に動く事は可能!


「ジャンヌさんー!」

「らじゃだよ!」


 亜美姉が前衛にいる時は、結構な頻度でジャンヌさんにトスが上がる。 ジャンヌさんのパワーなら亜美姉のブロックにも勝てる可能性があるからだと思われるー。


 パァンッ!


「うわわーっ」


 ピッ!


 こんな風にー。 亜美姉もブロックは上手いんだけど、パワーに押されて負けるパターンがよくある。 お姉ちゃんのスパイクを止める練習もしてはいるけど、やはり完璧に止めるまでには至らないようだー。


「ごめん。 しょぼーん」

「まあ、ドンマイドンマイ」

「次止めよー!」

「だねぇ」


 西條先輩の連続サービスエースのおかげで、10ー7となっている3セット目。 ここまで来れば、後少しで亜美姉がゾーンに入れるようになるー。 まずはここを一本で切っていきたいところ。


「ジャンヌさんサーブだね」

「はぅ。 任せて! 奈々美ちゃんのスパイクで鍛えた私が拾うよぅ」

「多分、私を狙ってきますわよ」

「はぅはぅ」


 さっきから、西條先輩が後衛に下がる時は西條先輩狙いでサーブしてくるようになっている。 2種類の高速連携を嫌っての事だろう。


 パァンッ!


 やはりやはりー! 今回も西條先輩狙いー! しかしー! 西條先輩はそんな事お構い無しにセットポジションへ向かい移動している。 西條先輩が居た場所にはすかさず希望姉がカバーに入るー! 完璧な連携であるー!


「よっと!」


 そして希望姉はあっさりとジャンヌさんのサーブをレシーブ。 これが希望姉の鉄壁守備だー!


「はい、時間差!」


 希望姉を信用していた私達は、西條先輩の指示に即反応ー! 順番に助走に入ってフランス代表を攻める。


「和香さんよろしく!」

「オッケー!」


 ブロックがついて来ていない佐伯先輩にトスが行き、それをしっかりと決める。 完璧な流れでフランスサーブを一本で切り、私達はローテーション。 次は亜美姉のサーブとなる。


「亜美姉、亜美姉ー」

「ん?」

「ゾーンにはどれくらいから入る予定ー?」

「それは聞いておかないといけませんわね」

「15点ぐらいからかな」

「結構後半になるのね」

「うん。 あまり長い時間は自信無いからね」


 亜美姉はスタミナを考慮して15点目を取った辺りがギリギリだろうとの事ー。 そこまでは今のままいくことに。 このペースでも15点までなら何とかなると思われる。 方針は変えずにこのままのペースで試合を運んでいく事に。


「亜美姉のサーブからだぞー」

「おー、そうだねぇ。 まあ、私はエース取れないから守備よろしくねぇ」

「なはは」

「はぅ」


 さて。 そんな亜美姉のサーブ。 これもクロエさんに拾われる。 しかし、今回はクロエさんがトスを上げられないので、トス先の先読みがやりやすいー。

 マリエルさんとセリアさんの2人から匂うが、ここはセリアさんからアリスさんへのバックトスだ。


「佐伯先輩、アリスさんの方ー!」

「オケー!」


 アリスさんの方に向かってブロックに跳ぶが、佐伯先輩はアリスさんとの勝負経験が少ない為、上手くやられてしまう。 11ー8ー。 点差は大きくは無いけど15点まで引っ張っていければほぼ勝ちであるー。 亜美姉のゾーンの先に関してはまだ全貌が見えていないけど、月島先輩の「絶対女王」とは違うのだろうか?

このまま亜美のゾーンタイムまで行けるか?


「遥だ。 もう少しだな」

「頑張るよ!」

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