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第197話 好きよ?

1日目の観光を終えて旅館に戻ってきた奈々美達。


 ☆奈々美視点☆


 私達は1日目の観光を終えて、旅館へ戻ってきた。

 時間は17時半。

 私の部屋は遥、奈央と同室。

 他に2人、田中さんと大岩さんがいる。

 クラス内ではよく絡む友人である。

 まだ戻ってきてはいないようだけど。


「月ノ木学園生徒一同に連絡します」


 急に館内放送が流れてきた。


「18時から19時の間は大浴場を解放します。 時間内に入浴を済ませる様に」

「18時からね」

「さっさと入っちゃう?」

「そうだね。 汗もかいて気持ち悪いし」


 ということで、18時になったらすぐに入浴することにした。

 B組の亜美達はどうするのかしら?



 ◆◇◆◇◆◇



 18時になり、私達は大浴場へ向かう。

 どうやら皆考えることは同じのようで、大浴場は混雑していた。


「うへー、これはゆっくりできそうにないわねー。 ちょっと待つー?」


 奈央がその状況を見て言った。

 これじゃ逆に疲れそうだし、それもありかもしれないわね。


「そうね」

「ま、しょうがないよなー」


 と、引き返そうと振り返ると──。


「あれ、どしたの奈々ちゃん達?」

「あー、亜美」


 B組の亜美達が入浴セットを持ってやって来たところのようだ。

 私は、今大浴場が混雑していることを教えてあげた。


「うわわ……本当だ。 考えることは皆同じか―」

「どうする亜美ちゃん?」


 希望はそう訊くと「うーん」と考え込む亜美。 だがすぐに紗希が口を開く。


「あとだと時間に追われて慌ただしくなるし、今入ってとりあえず空くのを待てば良くない?」

「うーむ」


 紗希からは新しい案が飛び出した。

 確かにそういうのもありね。 湯船に浸かるのは後回しで、先に体と頭洗っちゃって湯船が空くのを待つ。


「うん、それでいっか」

「じゃあ、乗り込むかー」


 私達は再度振り返り、脱衣所へ入っていくのであった。


 大浴場内は中々の人口密度であった。

 2クラスずつで旅館を2つ使ってはいるが、2クラス約30人の女子を収容するには少し狭かったようである。


「あ、バレー部御一行!」

「うわー、すんごいナイスバデー軍団じゃん」

「西條さんはその……需要はあるから」

「だまらっしゃい!」


 とりあえず予定通り、まずは体や頭を洗って時間を潰す。

 その間に少しでも空いてくれれば御の字だけれど。

 

「隙あり!!」

「うわわ!」


 またやってるわね、紗希の胸揉み。

 ま、警戒したとこで防げないし狙われたら潔く諦めましょう。


「おお、亜美ちゃん90に乗った?」

「知らないよぉ」

「毎日揉まれてるだけあるわねー」

「週に2、3回だもんー」


 この子は紗希の簡単な誘導に引っかかってるし。

 でも週に2、3回か。 結構なペースね。


「亜美ちゃん……もうちょっと冷静に」


 隣で希望が注意するも、既に紗希の魔の手は希望に向けられている。

 哀れ。


「はぅぅっ!?」

「おほー、希望ちゃんの反応はやっぱり良いねー!」

「おっさんみたいですわね」


 それに関しては私も同意である。

 最近はそうでもなかったけど、こういう所で裸になると触ってくるのよね。

 定期的に3サイズチェックも兼ねてるんだろうけど。

 その後、私も揉まれたけど、いつも通り反応が面白くないと文句を言われた。

 ただ、1ポイント成長してると言われたけど。


 ◆◇◆◇◆◇


 入浴を終えると夕食。

 今日は各班ごとにすき焼きを作って食べる。

 材料が配られており、後は好きにしなさいと言う事らしい。


「さっさと肉入れろよ肉」

「あーもう、うっさい」


 宏太が急かしてきて面倒くさい。 遥も一緒になって「肉肉」言うもんだから尚更。


「奈央は大人しく座って待っていてお利口さんねー」

「子ども扱いしないでくださる?」


 見た目お子ちゃまだもの仕方ない。


「肉はまだ煮えてないのか?」

「うっさいわね。 お腹壊したいなら食べればいいでしょ?」

「べ、別にそこまでして食いたくはないけどよ」

「に、賑やかだね。 いつもこんな感じなの、バレー部とバスケ部のグループって」


 同じ班に放り込まれている上田さんが、冷や汗をかいて私達の漫才を見ていた。

 

「普段はもうちょっとうるさいですわよ」

「そうだねー」


 奈央と遥が腕を組んで偉そうな態度でそう言う。

 普段騒がしくしてるのはあんた達でしょうが。 何、他人事みたいな顔してんのよ。


「ほら、もう食べられるわよ」

「お、いただきます!」


 言うが早いか、速攻でで肉を掬い上げる宏太と遥。


「ちょ! 私達の分も残しなさいよ?! 均等分けよ均等分け!」

「わーってるよ」

「本当かしらね……」

「佐々木君も遥も、食い意地だけは張ってますからね」

「あ、あはは」


 上田さんも巻き込んだ夕食のすき焼きタイムは、結局肉の争奪戦になり、私が管理する事で均等に振り分けざるを得ない状況になるのだった。



 ◆◇◆◇◆◇



 夕食を終えて就寝の21時までは自由時間となる。

 敷地内ならどこへ行っても良いという事らしいのだけど、他の皆はどうするのか訊いたところ、亜美達B組女子は卓球大会をやるとのこと。

 宏太は電話してみても繋がらない。 同じ班の男子に訊いてみたら、もう寝てるということらいい。


「あいつは年寄か……」


 奈央と遥は土産物屋を見に行ってしまったし、1人になっちゃったわねぇ。

 部屋でボーッっとしてても面白くないし、その辺ぶらぶらとしてみましょうかね。


 そう思い立ち、部屋を出て廊下をゆっくりと歩く。

 途中で卓球コーナーを覗くと、B組の女子達が盛り上がっていた。

 ダブルス大会中のようで、トーナメント形式になっている。

 順当に行けば亜美・希望ペアが優勝でしょうね。

 少しだけ見てから、その場を後にして旅館の待合いまでやってきた。

 庭に出て少し夜風にでも当たろうかしら。


「よ、奈々美1人か」


 不意に背後から声をかけられた。

 聞き知った声なので振り返らずに返事をする。


「1人よ。 あんたは卓球大会見なくて良いの?」

「見なくても亜美と希望のペアで決まりだろ。 紗希ちゃんも強いけどペアがちょっとな」

「まあそうね」

「外出るのか?」

「ちょっと庭に出て夜風に当たろうと思ってね」

「女1人で出歩くのは危ないぞ」

「旅館の庭ぐらい平気でしょ。 心配ならボディーガードしてくれる?」

「しゃーねーな」


 と言いつつ、こいつも私と同じ目的でここまで来たんでしょうけど。

 せっかくだし、たまにはこいつと2人で語らうのも悪くないわよね。

 最近、亜美とどうなのかも聞いてみたいし。


「んじゃ、ボディーガードよろしく、夕也」

「あいよ」



 ◆◇◆◇◆◇



 庭に出ると、同じように考えた生徒も何人かいたようで、外に出て話をしたり涼んでいる生徒がチラホラと見かけられた。


「ボディーガードいらないわね」

「さようか」

「冗談よ冗談。 話し相手は欲しいから」

「ふむ」


 2人で適当な場所に腰かけて話を始める。


「亜美とはどう?」

「上手くやってるよ」

「希望の時もそんな事言ってなかった?」

「うっ……」

「あっはは。 まあでも良かったわよ。 亜美が幸せそうで私も安心してるんだから」

「そうか」


 あの子は今まで本当に遠回りしてきて、希望の為だと言い聞かせて自分の気持ちを抑えていた。

 何度も心が壊れそうになったり、爆発したりして……。

 自業自得だったとはいえ、あの子はそれが最善だと思っていたみたいだから、私も見守ることしか出来なかったけれど。

 希望の事も心配ではある。 気丈に振る舞ってはいるが、あの子は本当は心の弱い子。

 いつ落ち込んで、塞ぎ込んでもおかしくは無い今の状況。

 夕也と亜美がフォローはするだろうけど、私も出来るだけあの子のフォローに回って上げるつもりでいる。 亜美の味方してたやつが何言ってんのって感じかもしれないけれどね。


「宏太はどうしたんだ?」

「寝てるらしいわ」

「年寄かよ」

「やっぱそう思うわよね?」


 意見が一致する。

 夕也とは割と感性が合うことが多く、お互い「そうよね」「そうだよな」と意見が一致したりする。


「私達が付き合うって展開っていうのもあり得たのかしらね?」

「可能性としてはあったんじゃねぇのか?」

「例えば?」

「お前が宏太にフラれて、俺が亜美にフラれてたりとかしてたら、案外そうなってたかもしれんぞ」

「確かにありそうな展開ね」


 実際私は、宏太にフラれるかも知れないと思いながら、去年のキャンプの時に告白した。

 あの時はそれぐらい、宏太の心の中に亜美がいた。

 夕也も去年の6月に亜美に一度フラれている。

 少し違えば、私と夕也が恋人になっていた可能性はあったのだ。


「そう考えると面白いわよねー、人間関係って」

「んだなー」


 ちょっとだけ、そうなった時の私達ってのも見てみたい気がする。

 宏太と亜美が付き合ってて、私と希望が夕也を取り合う展開。

 想像したらちょっと楽しそうじゃない。


「お前、俺の事はどう思ってんの?」

「え? 好きよ?」

「それは友達としてだろ?」

「それも半分。 男としても半分」

「一応恋愛対象になるのか?」

「ちゃんとなってるわよ。 今やると絶賛浮気だけどね」

「違いないな」


 2人で笑い合いながら、そんなもしかしたらの話で盛り上がる。

 庭に出ていた他の生徒達が、少しずつ旅館内へ戻っていく。 スマホを見ると、時間は20時45分。

 私達もそろそろ戻った方がいいかもしれないわね。


「戻りましょうか」

「おう」


 夕也が立ち上がり、私もゆっくりと立ち上がる。


「……っ」


 一瞬立ちくらみに襲われてバランスを崩してしまった。


「っと」


 その私を、咄嗟に抱きとめてくれる幼馴染。


「ありがと。 ちょっと立ちくらみした」

「貧血かー?」

「どうかしらね」


 私は夕也の胸から離れる。


「助かったわ。 んっ」

「んんっ?!」


 お礼に軽くキスをして上げると、夕也は驚いたように目を丸くした。


「ふふ、続きがしたかったらいつでも呼びなさい。 亜美より絶対気持ちいいわよ?」

「お、お前な!」

「じゃあまた明日。 おやすみなさい」


 困ったような表情で突っ立ている夕也を置いて、先に旅館へ戻る。

 亜美に見られてたりしたら修羅場ってたわねぇ。


もしかしたらそうなっていたかもしれない。

そんなもしかしたらを想像して満更でもない奈々美。


「紗希よー。 良いわねーそういうの。 もし私が奈々美や亜美ちゃんの代わりに今井君の幼馴染になってたら、今頃は私がメインヒロインだったわけねー」

「でも紗希ちゃんの事、作者さんはお気に入りだよ?」

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