第1995話 佐伯和香出場
佐伯和香がコートへ。
☆亜美視点☆
「宮下さん!」
「ほいっ!」
パァンッ!
ピッ!
エミリーさんのサーブから始まるプレーを宮下さんが決めて4-5としたところで、私達日本代表はメンバー交替。 宮下さんと佐伯和香さんが入れ替えだよ。
「宮下さん、お疲れ様」
「うわはは。 後は任せた!」
「任せといて。 宮下さんみたいに活躍出来るかはわからないけど、やれるだけやる」
と、和香さんは宮下さんに劣る事を自覚しつつも、決して悲観せずやる気を漲らせている。 さすがは西條アルテミスエースだよ。 それに、OHとしての実力だって十分だに高い事は、この大会での成績が物語っている。
「よし、やるわよ!」
パンパン! と、両頬を叩いて集中する和香さん。 私達も負けていられないね。 さて、試合の方はローテーションして奈々ちゃんのサーブで試合再開だ。
「さて、狙うはエミリーさんかしら?」
「エミリーさんはレシーブ上手いよ」
「アリスさんもマリエルさんも上手いですわよ」
「狙いどころ無いじゃない」
奈々ちゃんはそう溢しながらサーブポジションへ。 ま、まあ奈々ちゃんの100km/hを超えるサーブなら関係無いかもしれないけど。
「ふんっ!」
パァンッ!
うわわ、やっぱり速い! あんなのもう兵器だよ。 エミリーさんに向かって飛んで行くサーブを目で追う。 エミリーさんは勇敢にもレシーブの構えを取る。 だ、大丈夫かなぁ。
パァンッ!
「うわわ……エミリーさん後ろに仰け反っちゃってるよ……」
とはいえ、レシーブ自体には成功しているのが凄い。 まあさすがにかなり乱しちゃってはいるけどそれでもコート内に上がっているのは凄いねぇ。
「二段トス。 攻撃返って来そうだ」
「麻美ちゃん、どう?」
「んんー! お、今回はわかるー! ジャンヌさんだー!」
「よし! 亜美ちゃん行くぞ」
「らじゃだよ」
遥ちゃんと一緒にジャンヌさんの前に移動して待機。 すぐにセリアさんからジャンヌさんへ二段トスが送られてくる。 本当なら3人でブロックに行きたいけど、奈央ちゃんは高さ的にブロックにはあまり役立たない為、ブロックフォローに回ってもらうよ。
「アミ!」
「うわわわ……また私狙いだよぉ」
ジャンヌさんは大会前から私と紗希ちゃんに対してはライバル心を燃やしていた。 高さに自信があっただろうジャンヌさんと同等以上の高さを出したわけだからね。
パァンッ!
「あぅっ! ごめん抜かれたー」
「拾えないー!」
ピッ!
ここはジャンヌさんに軽く決められてしまったよ。 奈々ちゃんと練習して来てはいるけど、毎回上手く止められるわけじゃないんだよね。
5-5とされたよ。
「せっかくサーブで崩したのに」
「うう、ごめんだよ」
「まあまあ。 あれを完璧に毎回は無理でしょ」
と、代弁してくれているのは和香さん。 わかってくれる人がいると助かるよ。
「さ、フランスサーブ集中ですわよ」
「ライラさんだねぇ」
MBのライラさんのサーブ。 ドライブサーブを得意としている。 日本代表の今の後衛は、麻美ちゃん、和香さん、奈々ちゃんだ。 和香さんはレシーブ力もそれなりにあるけど、他2人は並みぐらい。 そこを狙われると……。
パァンッ!
「なははは! 任せろー!」
麻美ちゃんが狙われたよ。 大丈夫かなぁ?
パァンッ!
「なはは! ちょっとズレたー」
「だからせめてBパスで返して頂戴!」
奈央ちゃんはセットポジションから走り出してボールを追いかける。 た、大変だねぇ。 私達はとにかく何も考えずに同時高速連携に走る。 奈央ちゃんならあれぐらい乱れたレシーブからでも、ドンピシャトスを合わせてくれるからねぇ。
「角度的に和香さん、お願い!」
奈央ちゃんが選んだのは和香さん。 たしかにトス位置から考えたらそこが一番出しやすいか。
「はっ!」
パァンッ!
ピッ!
和香さんもそのトスに応えてしっかりと決めていく。 すぐさま6-5とした。 ローテーションしてサーバーは遥ちゃんに。 麻美ちゃんが前衛に来たねぇ。 もうすぐ希望ちゃんも戻ってくるよ。
「遥サーブミスは無しよ」
「わかってら」
遥ちゃんは落ち着いてサーブに入る。 得意のランニングジャンプドライブサーブ。 しかし、クロエさんの真正面に飛んで行ってしまい、簡単に拾われてしまう。 こればかりは仕方ないねぇ。
「麻美ちゃん」
「むぅ。 アリスさんー」
と、麻美ちゃん。 さっきからちょいちょい「匂いが入り乱れてわからない」みたいな事を言っていたけど、今回もちょっと悩んだねぇ。 何かフランス代表が仕掛けているのだろうか?
しかし、セリアさんは本当にアリスさんにトスを上げている。 先読み自体は生きている様子。
「なはは! 勝負だアリスさー! ちょいさー!」
「てやや!」
ここは麻美ちゃんと高さを合わせてブロックに跳ぶ。 麻美ちゃんの高さでもアリスさんに対抗可能だからね。
「亜美姉! 右に倒してー!」
「み、右?! てや!」
急に麻美ちゃんから指示が出たので、慌てて両腕を右に倒す。
パァンッ!
倒した腕にアリスさんの打ったスパイクがぶつかり、まさかのシャットアウトブロックになった。 あ、麻美ちゃんの読みは何か凄い……。
7-5とリードを広げたよ。
「藍沢妹、本当怖いわね」
「なはは。 アリスさんは読みやすいー」
以前からそんな風な事を言い続けている麻美ちゃん。 私にはさっぱり読めないんだけどねぇ。
さて、その後はフランス代表のセリアさんにまたもやツーアタックをやられて7-6になり、日本コートには希望ちゃんが戻ってくる。 フランス代表のセリアさんサーブから始まるその次のプレーでは、和香さんが見事にブロックアウトを取り8-6でテクニカルタイムアウトに入る。
「ふぅ。 中々フランス代表も粘るね」
「ですね。 動きも今までと変えてきたりしていますし」
「まあ、何とかなるわよ」
「それより麻美ちゃん。 さっきから先読みが出来ない時があるみたいだけど」
「むぅ。 実は、セリアさん以外にもマリエルさんとかクロエさんがトスを上げるぞーって匂わせてくるのだー」
「ええ……?」
ようするに3人分ぐらいの匂いが混濁していて、誰がトスを上げるのかを惑わせてきているらしい。 鼻が利き過ぎる故の弊害か。
「ふむ。 恐らくですが、麻美さんの先読み封じでしょう。 フランス代表の誰かが麻美さんの能力に気付いて、指示したんだと思います。 中々やりますね、フランス代表の参謀も」
前田さんが認めるとは……。 本当にそんな人がいるのかな。
「とにかくリードを維持したまま、清水さんのゾーン突入まで行きましょう」
「そうね。 そこまで行ってしまえばほとんど勝ちみたいなもんでしょうし」
「なはは。 頑張って止めるー」
「はぅはぅ」
このセットで優勝を決めるべく、皆の気合いが一段と高まる。 私も頑張るよ。
少しずつリードを広げていく日本代表。
「紗希よ。 亜美ちゃんがゾーンに入れば勝ちはいただきね」
「が、頑張るよ」




