第1992話 つくづく化け物揃い
大量リードの日本代表。
☆佐伯視点☆
2セット目終盤。 11-19と大きなリードをしたところ。 これだけのリードがあるから私を起用したのか? と、思ったけど、次のセットも途中から出番あるかもしれないとの事。 どうやら宮下さんはベストアタッカー部門確定したタイミングでベンチに下がりそうという事だからよ。 3セット目は頭から藍沢姉が出るのが決まってるし、清水さんも多分そう。 宮下さんもベストアタッカー確定するまでは出るだろうから、私は途中からって事ね。 他にもOHはいるけど私が選ばれたって事は、前田さんは私が一番実力があると思われてるのかしら。
「フランスサーブくるよー」
おっと、試合に集中。 フランス代表、ライラさんのサーブ。 控えのMBだけど、サーブや攻撃面を見ればスタメンのマリエルより上。 要注意よ。
パァンッ!
今、日本サイドの後衛には清水さんや雪村さんがいない。 藍沢妹に宮下さん、それに私。 レシーブ力が一番あるのは多分私だけど……。
「任せろー!」
私とは逆サイドの藍沢妹が狙われており、フォローは無理。 ただ、あれくらいのサーブなら藍沢妹も問題無く……。
「ぬわー! めちゃくちゃ乱れてしまったー!」
「だ、ダメね……」
ブロッカーとしては世界トップクラスだし、アタッカーとしても十分世界レベルだと思うけど、何故かレシーブは微妙なのは何?
「もうー! せめてBパス返しなさいー!」
文句言いながら猛スピードでボールを追いかける西條さん。 は、速い……。 どんな足してんのあれ? ブースターでも付いてるの?
「そぉい! 亜美ちゃん頼むわよー!」
「らじゃだよっ!」
高い高い……高校時代で既に無理ゲーだったのに、あれからどんだけ高くなってんのよ。 やっぱり月ノ木の卒業メンバーは化け物だらけだわ。
パァンッ!
「よぉし!」
11-20になり、2セット目もあと5点取れば終了。 あれ? フランス代表ってめちゃくちゃ強いって話だったわよね? いまいちわからないんだけど……本当? それともこの人達が異常に強いのか?
「さあ、ローテーションだ。 サーブサーブ」
蒼井さんは「私ゃ天才とかじゃない」って言ってるんだけど、私からすりゃ蒼井さんも大概なのよね。
パァンッ!
「ナイスサーブ!」
あのパワーよ。 藍沢姉とか月島姉に隠れがちだけど、パワーはかなりのもの。 高さもあるしブロックも上手いし、十分化け物。
「亜美姉ー、ジャンヌさんー」
「らじゃだよぉ。 また凄いスパイク打たれそう……」
ぼやきながらジャンヌさんのブロックへ向かう清水さん。 「てやや」とか「ちょいさー」とか言いながらジャンヌさんと対峙する。 私はクロスを警戒して構える。
パァンッ!
「ビンゴッ!」
私の真っ正面。 しっかり構えてアンダーハンドで受ける。 受ける際、少しバックステップしながら威力を少しでもいなす。
パァンッ!
「オッケ!」
「上手いー!」
「ナイスですわよ和香さん!」
そ、そんなに褒められる事かー? まあたしかにめちゃくちゃ強烈なスパイクではあるけど、真っ正面なら何とでもなるじゃない。
「はい! 同時!」
「忙しいわねー!」
たった今レシーブしたところなのに、すぐに走れと言いますか。 まったくもう。
「ほい! 宮下さん!」
「うわはは! くらえー!」
気合い満点で腕を振りかぶる宮下さん。 ブロック1枚に対してなんであんなに気合い入ってんの? まあ、Vリーグで対戦した時もあんな感じだったけど。
あっさりと決めちゃって11-21とまた差が開く。 宮下さんもあと4点でベストアタッカー賞首位かしら?
「よーし、このまま2セット目も終わらせますわよー!」
◆◇◆◇◆◇
ピッ!
ブーッ!
「ナイススパイク宮下さん。 これで首位タイですわね」
「うわはは」
あの後、お互いにブレイクは無かったものの、15-25で2セット目も取った私達日本代表。 優勝まであと1セットとなった。
「皆さん、素晴らしいですよ素晴らしい」
「うわはは! 我ら最強!」
「なははー! もはや優勝待った無し!」
ベンチに戻るや元気な宮下さんと藍沢妹。 この2人は疲れとか知らないのかしら? 藍沢妹に至ってはアメリカ代表戦で転倒して頭打ってたはずだけど。
「さて。 3セット目は頭から奈々美さんに出てもらいます。 佐伯和香さんは一旦下がってください。 宮下さんがベストアタッカー賞安全圏に入ったタイミングで交替で入ってもらいます」
「了解」
「やっぱり下げられるのかー……」
「宮下さんがあまり点を取り過ぎると、神崎さんの得点王まで奪ってしまうのでそこは我慢してください」
「はーい」
意外と素直に言う事聞くのね……。
「さて3セット目ですが、奈々美さんはサーブでもエースを狙っていってください。 100km/hを超えるサーブでガンガンと」
「まあ、やれるだけやってみるわ」
「攻撃の流れは2セット目と同じく、常に高速連携で攻めください。 そして清水さん」
「うん」
「程よいタイミングで暴れちゃってください。 それで優勝です!」
「らじゃだよ!」
何よその、暴れちゃって優勝って……。 清水さんって日本代表のジョーカーか何かなの? まあたしかに清水さんが誰かに負ける姿って想像出来ないけど。
「天堂さん、神園さん。 一応アップしておいてください。 ピンチサーバーで出てもらうかもしれません」
「はい!」
「わかりました!」
若いとこにも活躍してもらわないとね。 天堂神園……天神コンビなんて呼ばれてるらしいけど、この2人も大概化け物よねー。 上の連中がおかしいから普通に見えるけど。
「では、優勝に向けて!」
「いくぞー!」
「おー!
凄い気合いね。 でも、優勝か。 地区大会ぐらいでしか経験無くて、こんな大舞台で優勝を経験出来るかもしれないなんて夢にも思わなかったわ。 日本代表に呼んでくれた監督さんと前田さんには感謝しないと。
「宮下さんー! さっさと私と替わりなさいよー!」
「うわはは! 奈央っちの気分次第だー!」
あー、たしかに。 西條さん、トスを上げる相手はしっかりと選んでるものね。 たまに贔屓してるような事もあるにはあるけど。
「さあ、3セット目始まるぞ」
あ、監督が珍しく喋ったわ。 何か前田さんがマネになってから、影が薄くなったらしいんだけど。 前田さん優秀だし仕方ないか。
「宮下さんを替えるタイミングは?」
「とりあえず2点取ってもらって交替です」
「2点ね」
今、ベストアタッカーや得点王争いに残っていて、目があるのは宮下さん、神崎さん、そしてフランス代表で今試合中のアリスさんの3人らしい。 ただ、アリスさんは2人から少し離れた順位にいるので、ほぼ安全圏だとの事。 つくづく化け物揃いのチームだこと。 私、日本に帰ったらレギュラー外されるんじゃない?
優勝に向かって一直線。 佐伯さんは冷静にチームメイトを評価しているようだが。
「希望です。 はぅ。 佐伯さんだって日本では全国レベルの選手だったんだよぅ」
「私達が毎回倒しちゃってたから、全国で日の目を見れなかったんだよ」




