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第1989話 もう少し

紗希がゾーンに入っている間は紗希を使う。

 ☆奈央視点☆


 決勝戦の2セット目に入って少ししたところで、紗希が何故かゾーンに突入。 仕方ないのでしばらくは紗希を中心に点を取りにいく作戦に変更。 早速紗希が2得点を決めて2-8となり、テクニカルタイムアウトへ。 前田さんも当然想定外の出来事ではあるが、やはり紗希を中心に点を取りに行く作戦で進めるようね。 フル出場予定だった紗希だけど、ゾーンに入ってしまった事によるスタミナ問題が起こる。 なので、3セット目には奈々美が代わりに出る事になったわ。 しかしまあ、この試合2人もゾーンに入ってスタミナ切れって。


「麻美ちゃんナイサー!」


 テクニカルタイムアウト明けは麻美のサーブで試合再開。 麻美は「ちょいさ!」と声を出してドライブサーブを放つ。 フランス代表はマリエルさんが見事なレシーブを見せてセリアさんに繋ぐ。 後衛のジャンヌさんに加え、エースのアリスさん、更にはエミリーさんにライラさんが助走している。


「蒼井先輩、エミリーさんだー!」

「了解!」


 麻美がその嗅覚で嗅ぎ取ったトス先を、遥に伝えて遥が動く。 麻美の嗅覚が進化してから格段にブロックの成功率が上がってるわ。 亜美ちゃんはエミリーのクロスを警戒したポジショニング、麻美はストレートね。 遥と紗希が揃ってブロックに跳ぶ。 エミリーは今の紗希とは勝負出来ないと悟ったか、避けるようにクロスに打ち込んでくる。 クロスには亜美ちゃんが待ち構えているので、多分問題無いでしょう。 すぐさまセットポジションへ移動して亜美ちゃんのレシーブを受ける準備をする。


「はいっ」

「ナイスレシーブ!」


 亜美ちゃんも、希望ちゃんや新田さん程じゃないにしろレシーブが上手い。 ある程度のレベルのスパイクなら、座ったまま拾う事もあるわ。


「まあここも当然紗希!」


 ゾーンに入って無敵状態の紗希にトスを上げる。 それは読まれていたのか、ライラさんとエミリーさんの2枚ブロックで対抗してきた。 ブロック2人が跳び上がり紗希を止めにかかるが……。


「一人時間差……」


 紗希は踏み切りから跳び上がらずに、ワンテンポ攻撃を遅らせた。 普段はそんな事あまりしない癖に。


「っ!」


 ブロッカーの高度が下がり始めたところで紗希の高さが頂点に到達。 開けた前方に悠々とスパイクを打ち込んで決める。 2-9。 まるでフランス代表が子供扱いじゃない。 ジャンヌさんやエミリーさんが本気を出しているはずなんだけど。


「なはは。 サーブサーブー」


 引き続き麻美のサーブ。 先程と同じようなドライブサーブで攻める麻美だが、やはりマリエルさんに拾われる。


「ジャンヌさんだぞー!」

「あいよ!」


 同じように麻美の先読みで遥と紗希が動く。 ゾーンに入っていても、一応遥を見てブロックに動くらしいわ。 麻美の読み通りジャンヌさんのバックアタックで攻めてくる。 ストレートを閉めてブロックに跳ぶ遥と紗希だけど、ジャンヌさんはそれを避けてクロス打ちを選択。


 パァンッ!


「うわわわわ?!」


 奈々美クラスのパワースパイクを打たれて、亜美ちゃんもさすがに拾い切れず。 真っ正面ならまだしもあれだけ横にズレてると亜美ちゃんでも厳しいか。


 ピッ!


「オッケーですわよー! まだ3-9ですわ」

「だね」


 フランスサーブに移りサーバーはアリスさん。 チラッと電光掲示板に目をやると、ちょうど得点王ランキングの順位が映し出されていた。 紗希とミアさんの点差は5点差。 単独首位までは6点か。 紗希、それまでに力尽きるんじゃないわよ?


 パァンッ!


 おっと、プレーが始まったわね。 アリスさんのサーブには亜美ちゃんが反応している。 しっかり拾って私へレシーブを上げているわ。


「紗希っ!」

「……!」


 パァンッ! ライラさんとエミリーさんのブロックに対しては、宮下さん顔負けのテクニックを見せてブロックアウトプレーに取る。 3-10として、紗希の得点王まであと5点。


「宮下さんごめんなさいね」

「オッケーオッケー。 今は紗希っちに任せておいた方が点取れるし。 私ももう射程圏に捉えてるし」


 宮下さんとキャミィさんの点差は6点で、単独首位までは7点か。 紗希がスタミナ切れしてからでも間に合うわね。



 ◆◇◆◇◆◇



 その後は4-10、4-11、5ー11、5-12、6-12、6-13と、ブレイクも無く進む。 この間の日本代表の得点は全て紗希によるもので、得点王ランキングの点差もあと1点差。 単独首位までは2点となっている。 宮下さんが得点王になるにはあと9点はいるし、上手く調整すればそれぞれに個人タイトルを分けられそうですわね。


「……」

「紗希ちゃん、あと2点だよ。 頑張って」


 紗希はまだゾーンを維持している。 さて、サーブは私に回ってきたわ。 希望ちゃんもコートに戻って来て最高の布陣。 サービスエースを取ってしまうと、紗希の得点が稼げなくなるからネオドライブは無しですわね。 普通のドライブサーブでお茶を濁しますわよー。


「そぉい!」


 パァンッ!


 ネオドライブサーブに比べると幾分回転数と威力の弱い通常のドライブサーブ。 これは、フランスの(リベロ)のクロエさんに拾われる。 よしよし、それで良いですわよ。


「亜美姉、アリスさんだぞー」


 麻美がアリスさんに向かってブロックへ。 それに亜美ちゃんがついて行く。


「せーの! ちょいさー!」

「てややー!」


 タイミングを合わせてアリスさんのブロックへ。 アリスさんは亜美ちゃんを狙ってブロックアウトプレーを仕掛けてきた。


「てややだよ!」


 しかし、亜美ちゃんはアリスさんの動きを瞬時に見切り、ブロックの手の角度を修正してブロックアウトを阻止。 ワンタッチを取り希望ちゃんが繋ぐ。 私は迷わず紗希にトスを上げて、紗希がそれを決めた。 6-14になったわ。


「おお! 亜美ちゃん凄い!」

「なはは! スーパーブロックー!」


 これで紗希はミアさんと並んで首位タイ。 後もう一本で……と、そう思ったのも束の間。


「はぁ……はぁ……」

「さ、紗希?!」


 紗希が膝をついて屈み込んだ。 ゾーンも切れてしまい、スタミナも底を突いてしまったようだ。 後1点なのに何やってるのよ。


「紗希ちゃん、大丈夫?」

「はぁ……きゃはは……平気平気」


 と、フラフラしながらも立ち上がって構える紗希。 まともにプレー出来るとは思えないんだけど。


「紗希。 あと1点よ。 後1点取るまでは倒れちゃダメだからね」

「……りょ」


 いつもの元気はどこへやら。 まったく力の無い返事に少し不安になるも、今のところベンチに動きもない。 続行ね。 ここはサービスエースを狙った方が紗希も休めるし良いかしら? もう少しでテクニカルタイムアウトだし、それまでは宮下さんや亜美ちゃんを使って凌ぎましょう。


「そぉい!」


 サービスエースを狙ってのネオドライブサーブだったが、アリスさんに上手く拾われてしまい、そのままジャンヌさんに決められる。7-14となったがベンチに動きはまだ無い。 紗希、後1点絶対に取らせますわよ。

もう少しというところでゾーンが切れた紗希。


「遥だ。 ここにきてかよ」

「紗希ちゃん、大丈夫かな?」

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