第1950話 イタリアリーグ
ランチへ向かう亜美達。
☆亜美視点☆
アメリカ代表対ベルギー代表の試合を観戦し終えた私達は、次のフランス代表対ドミニカ共和国代表戦が始まるまでの間にお昼を済ませる事に。 麻美ちゃんが凄いコミュ力を発揮して、イタリア代表のアンジェラさんを誘い、一緒にランチする事になりました。
「アンジェラさん、大丈夫? 居心地とか悪くない?」
「だいじょうぶでス」
西條グループが開発した超小型翻訳機のおかげで、簡単にコミュニケーションも取れる。
「ニホンのみなさん、とてもあたたかいでス」
「バレーボール選手は皆仲間やからな」
「ハイ」
うんうん。
「そういえばアンジェラさんや前田さん、麻美ちゃんが言ってたジニーさんは曲者っていうのは?」
「それ、気になるわよね」
「見た感じ何もわからへんかったで?」
「あー……」
「なはは」
「あのプレーヤーはロジカルなプレーではなかったでス」
「論理的じゃないって?」
「あのジニーという選手、麻美さんと同じで野生的な何かを頼りにプレーするタイプみたいです」
「そ、そうなの? 奈々ちゃん、そんな風に見えた?」
「さあ? わからなかったわよ?」
「夕方、ホテルで動画を流しながら説明しますよ」
「う、うん」
麻美ちゃんタイプのプレーヤーかー。 だとしたらたしかに曲者だ。
◆◇◆◇◆◇
近くのレストランに入りランチタイムだよ。 人数が多いから何グループかに分かれて座るよ。 私はアンジェラさんと同じグループだ。 後は希望ちゃん、麻美ちゃん、宮下さん、奈々ちゃん、新田さんが一緒である。
「アンジェラさんはシドニーの観光とかしたの?」
「ハイ!」
オペラハウスやハーバーブリッジ等、私達と同じ所を観光して回ったらしい。 シドニーと言えばなスポットだからね。
「アンジェラさんはイタリアのリーグから日本のリーグに移籍したりしないのー?」
と、麻美ちゃんがアンジェラさんに質問している。 アンジェラさんは現在、イタリアリーグのセリエAのトップチームに所属しているらしい。 サッカーのセリエAのバレーボール版だと思っていいとの事。
「普通逆だよ麻美ちゃん……イタリアのプロリーグであるセリエAは世界最高峰のリーグなんだよ。 わざわざ日本のリーグに移籍はしないよ。 ね?」
「ソウデスネ。 アミやアサミ達はセリエAに来ないのですカ?」
と、逆にアンジェラさんから質問されてしまう。
「私は日本のリーグでのんびりやるよ」
「なはは。 私もー」
「もったいないですネ……。 ミナさんならセリエAでもカツヤクまちがいナシですヨ?」
「どうだろうねぇ」
日本人選手も、男子女子どちらからもセリエAに挑戦している選手はいる。 男子の岩田選手なんかは、オリンピックでも日本代表として活躍しているしね。
「ウチはいずれ行くで。 イタリアリーグ」
「弥生っち? わざわざ席立ってまで言いに来なくても」
「おもろい話しとるからや」
弥生ちゃんはどうやらセリエAに挑戦するつもりでいるようだよ。 まあ、日本での実績もかなりの物だし、世界大会でもしっかり結果を出しているからねぇ。 普通に通用するかもだよ。
「オー! おまちしてマス!」
「そん時はよろしゅう。 まあ、その前に日本で倒しておかなあかんのがおるでな」
「うぅ」
「オー……アミはモンスター……」
「人間だよ」
私を化け物扱いするのって、もう世界共通なのかな?
◆◇◆◇◆◇
お昼を終えて試合会場に戻って来た私達。 もう少しでフランス対ドミニカ共和国の試合が始まるよ。 スターティングメンバーも既に発表されており、フランスはジャンヌさんやエミリーさん、クロエさんを温存。 主力はSのマリエルさんと、個人タイトルが狙えるエースのアリスさんが出場のようだ。 ちなみにアリスさんもイタリアのセリエAでプレーしている。
「あまり偵察し甲斐は無いですね」
「欲しい情報はジャンヌとエミリーのやからな」
「その2人が試合出てないと意味無いー」
アリスさんマリエルさんについては、それなりに情報を手に入れている為、そこまで注意して見なくても良さそうだ。
「佳奈っち。 今大会のアリスさんのプレーはどんな感じー?」
アリスさんに個人的にライバル心を燃やしている宮下さん。 やはり気になるらしい。
「以前よりはやはりレベルアップしていますね。 相変わらずテクニックがずば抜けていますが、パワーの課題にも取り組んだのでしょう。 スパイクの球威も上がっています」
「さすが我がライバルね」
ちなみにアリスさんも宮下さんの事をライバル視しているらしく、ちゃんとライバル同士なのである。
「美智香姉とアリスさんは似てるようで実は違うー」
「違うのぅ?」
麻美ちゃんは「うむ!」と頷くと。 どう違うのかを端的に説明してくれた。
「美智香姉はクセだらけー。 アリスさんはクセが無いー」
との事だ。 ブロッカーとして対峙すると嫌なタイプは宮下さんのようなタイプなんだとか。 以前にも言ってたっけ? 「宮下さんはクセだらけでよくわからない」「アリスさんはバカ正直でわかりやすい」と。
「お、始まったぞー」
遥ちゃんの声を聞いてコートに視線を向けると、ドミニカ共和国代表のサーブで試合が始まったところだ。 フランスLは正Lではなく控え選手のようだけど、特に問題も無く拾っている。
「綺麗なレシーブだよぅ」
「控えであれですか」
日本のL陣からも称賛の声が上がる。 しっかりとマリエルさんの頭上に返ったレシーブ。 セットアップしトスアップする瞬間にアリスさんが助走を開始。 一発目はエースアリスさんにトスが上がり、やはり華麗にブロックを避けつつ際どいコースに落としていく。
「やっぱり巧いですわね」
「ライバルぅぅ!」
「前田さん、どう?」
「特に新しい発見は無いですよ。 ただまだ100%でプレーしているわけではなさそうなので何とも言えないですが」
やはりドミニカ共和国代表相手だと、本気は出さないか。
「アンジェラさんはイタリアリーグで対戦したりするよね?」
「アリスですカ? ハイ、シアイはなんどかしましタ。 とてもテクニカル。 ミヤシタさんみたい」
「うわはは!」
「あんさんは一々反応せな死ぬんか?」
「アリス、テクニックもですガ、ちかごろはパワーアップやジャンプアップをカダイにしているとききましタ」
「ジャンプも? あまり高くはなってないと感じるけど」
「多分、隠してるんでしょう。 清水さんや神崎さん、麻美さんと同じく」
「? アミたち、カクシテタ? ジャンプ?」
アンジェラさんが首を傾げる。 あ、これはイタリア代表の選手が聞いたら怒るやつかなぁ?
「なはは! 本当はもっと高く跳べるゾー」
「うわわ」
それじゃあイタリア代表を舐めてたみたいになっちゃうよ。 いや、実際そうなのかもだけど。
「ワオ?! アミたちやっぱりモンスター! ビックリでス」
と、アンジェラさんは大袈裟に驚きはしたものの、怒った様子は無いようである。 見た目通り、性格も天使なようである。
亜美は日本でのんびりプレーしたいようだ。
「希望です。 はぅ。 私も幼稚園のお仕事あるし」
「だよねぇ」




