第1931話 強くなってる
カナダ代表と対戦中の日本代表。 まだ完封しているようだが?
☆亜美視点☆
ピッ!
「ほっ……やっと点を取られたね」
「きゃはは。 プレッシャーから解放されたわねー」
現在、決勝トーナメント2回戦カナダとの試合中。 1セット目を0ー25で完封した私達は、その後もゼロ進行を継続していたが、ここで初失点となる。 5ー1となった後は6ー1、7ー1とまた流れが来るが、すぐに2点目を取られる。 更に8ー2でテクニカルタイムアウトを挟んだところから試合再開だよ。
「ようやく出番が来ました」
「はぅ。 お待たせマリアちゃん。 頑張ってね」
「はい」
ここまで全く失点が無く、ローテーションが発生しなかった為、交替要員であるマリアちゃんの出番が無かったのだけど、ここでようやく出番というわけだ。
「身体が冷えてしまいました」
「なはは! 大丈夫かー?」
「問題ありません。 すぐに温まりますから」
ここまで試合に出られず、フラストレーションが溜まっているようだ。 じゃあ爆発してもらおうね。
「麻美ちゃんナイサー」
「おー! ちょいさー!」
パァンッ!
麻美ちゃんも全力の6割くらいの力で試合をしているようだ。 本来なら私達とのトレーニングの成果でパワーもジャンプ力も跳ね上がっているけど、それはあえて見せない。
「なはは。 拾われたー」
「返ってくるわよん」
「マリアちゃんはコミットブロック! 弥生ちゃんは私とこっち!」
「はい!」
「よっしゃ!」
二手に分かれてブロックへ。 今回はセンターのクイックを使って来たのでマリアちゃんのコミットブロックが光る。
「ワンタッチです!」
「ほいっと!」
紗希ちゃんが上手く拾って奈央ちゃんに繋ぐ。 奈央ちゃんはマリアちゃんに一瞬アイコンタクトを取る。 マリアちゃんも意図を察したか、すぐにマイナステンポの助走を開始する。
「はっ!」
「そぉれ!」
マリアちゃんへの最速の平行トスが送られる。 黛姉妹の十八番、高速連携だ。 当然奈央ちゃんは色々な選手に合わせられる。 サインが必要だけどね。 この手の連携をノーサインでやれるのは黛姉妹ぐらいだよ。
パァンッ!
「よし!」
「ナイスマリア!」
「キレキレね!」
「まだまだ足りません」
「相当フラストレーション溜まってんな。 まあ、ウチらもやけど」
「本気も出せないしねぇ」
「ですわね。 さっさと勝ってしまいますわよ。 準々決勝はイタリアと試合出来るから本気でいけるし」
「やな」
「カナダ代表には悪いけど、このままあっという間に終わらせてもらうわよん」
「なーはーはー!」
私達としても全力でやれないこの試合はサクッと終わらせてしまいたいところ。 イタリア戦も基本的にこのメンバーかオポジットを宮下さんにするかといった編成なようだし。
「では、一気に行きますわよー!」
「おー!」
◆◇◆◇◆◇
という事で、全力を封印したままカナダと3セット戦った私達。 0ー25、25ー6、4ー25と完勝し短時間で試合を終わらせるのだった。 合計失点も10点と、フランス代表がセルビア代表から取られた点より少なく終えるのだった。
「だはは! 全力出さんでもこの通りや! セルビア代表相手に必死になって頑張ったフランスとはちゃうで!」
「なはは!」
「きゃはは!」
物凄く強気になり、フランスを煽り返す皆であった。
「お、お疲れ様でした皆さん。 あの、本当に全力を出しては?」
ベンチに戻って来て汗を拭いたり水分補給していると、前田さんがそう声を掛けてくる。
「出してへんがな」
「手抜いたわよー。 予定通り」
「うんうん」
「で、ですよね。 データで見てもやっぱり全力では無さそうだし……えぇ……もうちょっと点を取られる想定だったんですが」
どうやら前田さんの想像以上だったらしい。 私達、何かやっちゃったみたいだよ。
「ヤヨイー!」
「おお、キャミィかー。 偵察ご苦労さんやなぁ」
「ワハハ! スゴイなミンナ! ウチらもまけてられヘンナ」
「次はブラジル戦やろ? 気張りや!」
「まかしとケー!」
偵察に来ていた各国代表も、次の試合を見る事はせずに順次解散していく。 どうやら目当ては私達の試合だけだったらしい。
「新しく見せたのは時間差高速連携だけだし、他は大した収穫も無かったはずですわよ」
「そうでないと困りますよ。 さあ、私達も引き上げましょう」
「はーい」
と、緩く返事を返しながらコートを後にするのであった。
◆◇◆◇◆◇
ホテルに戻り、私達試合に出ていたグループは先にお風呂に入ることにしたよ。
「ふぅ。 にしても余裕やったな」
「私達の力がオリンピックの時より遥かに上がってるって事ですわよ」
「そゆこと」
全力を出さずにカナダ相手にスコンクまで決めてしまったからねぇ。 イタリアやアメリカ相手ではそうもいかないだろうけど、結構な自信になったよ。
「明日はイタリアの2回戦よね? 偵察には行くのかしら?」
「見に行くと思うよ」
「相手は格下やろ? 見に行く必要あるんか?」
「まあどんな試合であれ、次に対戦するであろうイタリアの試合なら見ておいた方が良いですわよ」
「ソフィアって人のプレーももっと見ておかねばー」
「ぅんぅん」
イタリアにはソフィアさんという新戦力が入っている。 これがまた中々の強者で、あのアンジェラさんと同じジャンプを使えるのだ。 私達は頭を抱えているよ。
「ふぅむ。 そやな。 見に行った方がええか」
弥生ちゃんも納得したようだ。 今日の私達の試合に影響を受け、何かしらやってくるかもしれないし。
「なあ。 ちなみに今日ウチらが本気でやってたら全部0点に出来たんちゃう?」
「出来た可能性はありますわねー」
「それはそれでやってみたかったわねー!」
「なはは! 伝説になってしまうー」
「あはは……多分、それでなくてもかなり目立っちゃったと思うよ」
何せ試合時間も最短だったらしいからねぇ。
「イタリア戦が決まったら時間差高速連携の練習をしますわよ。 イタリア戦からは出し惜しみしてる暇ないだろうし」
「だね」
ここからは順当に行けばイタリア、アメリカの上位ランクチームと連戦になり、決勝はフランスとなるはずだ。 もう手を抜いて勝てる相手は残らないだろう。
「アンジェラさんとの勝負楽しみー」
「あれとの勝負が楽しみって、あんさんマゾかいな」
「楽しいぞー?」
麻美ちゃんはアンジェラさんに対抗出来る貴重なMBだ。 イタリア戦になったら期待しているよ。 他の皆はあの不思議なジャンプに翻弄されて困ってるのに、楽しみにしてるっていうのは凄いねぇ。
◆◇◆◇◆◇
試合後のミーティングを終えた私は、マロンとメロンを抱っこして夕ちゃんと夜のシドニーを散歩中である。
「今日は凄かったな、お前達」
「自分達もびっくりしてたんだよ。 あれでも力を抑えてたんだよ」
「マジか……」
「あはは……でも次の試合からは私達も本気出さないと」
「準々決勝だもんな」
「うん。 頑張るよ、私達」
「おう。 応援してるぞ」
夕ちゃんに応援の言葉ももらえてやる気アップだよ。 まずは明日、イタリアがどんな試合を見せるかだね。
自分達が強くなっているのを実感した亜美達。
「奈々美よ。 いや、強くなり過ぎじゃない?」
「あはは。 それはそうだねぇ」




