第1928話 別会場では?
アメリカ代表と中国代表の試合は中々見応えがあるようだが。
☆亜美視点☆
現在、アメリカ代表対中国代表の一戦を観戦中。 試合はアメリカ優勢で進んでおり、もうすぐ1セット目を取りそうであるが。
「試合時間長いんちゃう?」
「中国が凄く粘って繋いでくるからねぇ。 長くもなるよ」
「アメリカ代表、思わぬ苦戦って感じですわねー」
「苦戦ってより、手間取ってるって感じよね。 点差だけ見れば結構あるし」
ピッ!
「やっと第1セットが終わったねぇ」
「長かったー」
「スコアは25ー15なんだけどねぇ。 ラリーが長引いたよ。 アメリカ代表も中々の守備してるよ」
特にミアさんとオリヴィアさんの守備は堅い。 オリヴィアさんは言わずもがな、世界トップレベルのMBだし、ミアさんはどんなプレースタイルも模倣出来る天賦の才を持っている。 現在はしぶとく粘る中国チームのLの模倣を見せているよ。 相手からしたら堪ったものじゃないだろう。
「アメリカはあの新戦力のジニーという子が加入して、攻撃にも一本筋が通りましたね」
「今までパワーで押していたところに、テクニックのあるプレーヤーが入ったからね。 攻撃の選択肢が増えて厚くなったよ」
「はよ対戦したいもんやな」
「アメリカとは準決勝まで当たりませんね。 その前にイタリアも倒さなくてはなりませんが」
「中々きついトーナメントだこと」
「フランス代表が賢かったわねー」
「アホ抜かせや。 強い奴らに勝って勝って勝ちまくって優勝する。 それが最強の証明やないか」
「ま、弥生の言う通りっしょ」
「2人とも戦闘狂か何かなのかな?」
弥生ちゃんと紗希ちゃんは「我らさいきょー!」とか言って肩を組んでいる。 本当、いつの間にか仲良くなってたよねぇ、この2人。 話によると、大学受験前に紗希ちゃんが京都へ下見に行った時に仲良くなったらしいけど。
「2セット目始まりましたわよ」
「アメリカ代表が勝つやろってのはわかるけど、このままやとあまりインパクトあらへんな」
「アメリカ代表としても情報は隠しておきたいでしょうからね。 あのジニーという選手も、本当ならもう少し隠しておきたかったんじゃないかと」
「パワーだけじゃ押し切れなさそうな中国代表に対して、仕方なく出したって感じだね」
「多分そうですね。 私達としてはデータを取れてラッキーです」
「だねぇ。 あの手の選手はアリスさんや宮下さんのおかげで対処法もわかってるし」
「私は対処されないわよー!」
「はいはい」
第2セットも基本的には第1セットと変わらず、攻めるアメリカ代表に守って繋ぐ中国代表という流れになっている。 アメリカ代表の攻撃の主力はミアさんと新戦力のジニーさん。 オポジットのキャミィさんは中国守備陣にあまり有効ではないのか、よく拾われている。
「しかしまあ、あのキャミィの強烈なスパイクをよう拾いよるな。 しかもコース外されても飛びついて拾うし」
「運動能力はかなりのものですね、あのL」
「さすがに強いよ、中国チームもー」
今もキャミィさんのスパイクをダイビングレシーブで拾って繋いでいる。 このチームにまともな攻撃力があれば、もっと上に来ても不思議じゃないんだけどねぇ。
ピッ!
「食らいついてはいるけど」
「3-6。 アメリカ優勢は変わらずねー」
「拾って繋ぐまではええんやけどなぁ。 そこからブレイクに持っていけへんからリード奪えへんのやろ。 惜しいチームや」
「ですね。 アメリカは間違いなく苦しんでいるのに、それがスコアに反映されていないのは単に中国チームの攻撃力不足の所為でしょう」
グループ予選まではそれでも通用していたが、アメリカ代表クラスが相手ともなると、といった感じかな。 試合の方も徐々にアメリカがリードを広げていき、結局セットカウント3ー0でアメリカ代表が勝ち上がった。
「まあ、大方の予想通りね」
と、奈々ちゃん。 たしかにアメリカが勝つのは予想通りだけど、スコアの見た目に反してアメリカ代表の表情は厳しいようにも見える。 やはり、思ったより手間取ったといった感じなんだろう。 もちろん内容的には強かったのだけど……。
その後はブラジルとドイツの試合も観戦。 こちらも何と、攻めのブラジルと守りのドイツという構図になり見応え満点であった。 結果も3ー2とフルセット戦い、僅かにブラジルが勝利を手にした。 これでブラジルは次戦アメリカ代表と対戦となる。
そして、ブラジルドイツの観戦を終えると、前田さんのスマホにフランス偵察隊から連絡が入り、驚愕の報告を受けるのであった。
◆◇◆◇◆◇
「フランスの試合結果ですが、偵察隊による報告を聞いたところフランスが3ー0で勝ったようです」
「そらまあ、予想の範疇だろ?」
遥ちゃんが言うように、フランスが勝つであろう事は容易に想像出来た。 たしか相手は私達のグループで2位抜けしたセルビアだったはずだ。
「3セット中、1セットはスコンク、残り2セットも一桁失点だそうです」
「な、何ですって?」
「スコンクて何ー?」
ズサーッ……
宮下さんの気の抜けた一言でズッコケる私達。 まあ、今はあまり使わないからねぇ。
「スコンクっていうのは卓球やテニスで言うところのラブゲーム……つまりゼロ失点ゲーム、完封という意味です」
「え? じゃあ25ー0ってこと? やばいじゃん!」
「相手はセルビアでしたわよね? 格下ではあるけど、そんな圧倒的な差がつくような試合ではないと思いますわよ?」
「しかし、スマホで送られてきた画像にしっかりとスコア表が載ってますから」
前田さんが見せてくれた画像を皆で覗き込む。
25ー6
5ー25
25ー0
と、はっきりと写し出されていた。
「全体を通しても11点しか取られてへんやん。 一体何が起きたんや」
「わかりません。 偵察班が動画を撮っている筈なので、帰ってから皆で見てみましょう」
「だね」
アメリカやブラジルが勝ち上がったという事より、フランスがセルビア相手に圧勝したという事のインパクトの方が強かった。
◆◇◆◇◆◇
ホテルに戻ってきた私達は、その衝撃の試合内容を動画で目の当たりにするのであった。
スタメンにアリスさんはもちろん、マリエルさん、クロエさんという日本おなじみのブロッカーリベロコンビ、更に新戦力のジャンヌさんにエミリーさん、Sにはオリンピックにもいたキャプテンセリアさんという、おそらく今大会のフランスフルメンバーが揃っていた。
「セルビア相手にフルメンバーかいな……」
「ジャンヌさんとエミリーさんはOHなんだね」
「立ち位置だけどす。 試合見てもろたらわかるけど、2人ともユーティリィー。 万能プレーヤーや」
「リベロ的な守備やトスアップに単独ブロック、全部こなしとったわ。 もちろん、OHとして攻撃にも参加しとった。 この2人、バケモンやで」
黛梨乃さんが額から汗を流しながらそう言った。 2人のユーティリティープレーヤーというと、私とマリアちゃんもそうだけど……。 とりあえず動画を見てみよう。
別会場ではフランスがセルビアに圧勝。
「亜美だよ。 ゼロゲームは中学の地区予選でやった事があるね」
「はぅ。 それとはわけが違うよぅ」




