第1927話 攻撃チーム対守備チーム
今日は有力チームの偵察に来た亜美達?
☆亜美視点☆
アメリカやブラジルといった強豪チームの試合がある本日は、絶好の偵察日和。 別会場ではフランスの試合もあるので、半数のメンバーは別会場へ向かった。 こちらには私や前田さん、観察眼に優れている麻美ちゃんに、目の良い希望ちゃん等の偵察に適したメンバーが集まっている。 月学OGメンバーは皆こっちだ。
「奈々ちゃんは観察眼が良いって言っても趣味が人間観察ってだけだしね」
「何よ? 文句ある?」
「無いよ。 全然無い」
人の事はよく見ていて、細かいところによく気付いたりするけど、こういう「偵察」とかにはあまり役に立たないんだよね。 言うと怒られるから黙っておくよ。
他には宮下さん、弥生ちゃん、新田さんもこちらに来ているよ。
「アメリカ対中国か。 アメリカは世界ランキング2位の優勝候補チーム。 中国は7位だっけ?」
「ですね。 中国は粘って繋ぐバレーが得意なチームですが、アメリカの攻撃力でどこまで崩せるか」
「アメリカはんの火力やったら余裕やろ」
「キャミィっちとミアっちは強いからねー」
「オリヴィアさんもオープン攻撃に参加するようになってるし、中国の守りがどこまで耐えられるか注目だよ」
「あとは……」
「はぁ。 誰? あの若い選手」
「まさかの新戦力ー?」
「アメリカにもいるんですかね……」
「フランスのジャンヌ、エミリーにイタリアのソフィア……で、アメリカのあの選手もって事ぉ? きゃはは……」
アメリカのスターティングメンバーには、見た事の無い若そうな選手が1人入っていた。 ポジション的にはOHだろう。 レフトの後衛に立っている。 オポジットの位置にはキャミィさん、ライト前衛にミアさんの形だ。
「あの選手がどんな働きを見せてくるか……要チェックですね」
「お、試合が始まるみたいだぜ」
「よーし、麻美アーイ!」
アメリカサーブで始まる試合。 アメリカSのレイラさんがいきなりパワーサーブを打ち込んでいく。
「いやいや、凄いパワーサーブやな」
「それを軽く拾ってるわよ、中国のL」
「さすがは粘りのチームって呼ばれるだけありますね。 同じLとして参考になる部分もあるかもしれません。
新田さんや希望ちゃんは中国Lの動きにも注目しているようだ。
パァンッ!
中国エースの王さんがスパイクを打ち込むが、それをアメリカ鉄壁のブロッカーオリヴィアさんが阻む。 シャットアウトかと思われたが、中国守備陣がすぐにフォローして拾い直す。
「粘るなぁ」
「これは中々厄介そうやな」
「さすがにバタついて強いスパイクは打てないっしょ」
「いや! しっかり立て直してるぞ!」
「崩れないですわね」
パァンッ!
中国エースの2発目のスパイク。 今度はオリヴィアさんミアさんのブロックを避けて打っていくが、これはコースに打たされた感じだ。 ブロックポイントを取るのが難儀だと判断するや、すぐに手を変えて来たアメリカ代表。 さすがの対応力だ。
「お、キャミィにオープンが上がったで。 いったれ!」
アメリカ代表はオポジットのキャミィさんにトスを上げる。 パワーは奈々ちゃんにも引けを取らないパワーアタッカーのキャミィさん。 彼女のスパイクが中国守備陣にどれだけ通用するか。
パァンッ!
「ブロックが上手く触ってLが拾ったわよ!?」
「うへー。 守り堅いー」
「粘りのチームとは対戦したくないわね!」
「気持ち良くなれへんからなぁ!」
「いやいや。 もっとブロックアウトとかしなよ」
「そんなん狙ってやれるん美智香だけやん」
「うわはは!」
「ほんまムカつくな」
中国チームの3回目のスパイク。 これが決まってようやく最初のラリーが終了。 0-1となる。
「アメリカさん、さすがに中国チームの守備には苦戦しそうやな」
「中国チームのサーブも中々ねー」
中国サーブで試合が再開。 アメリカ代表Lが拾ってSのセットアップ。
「あ、セカンドテンポであの若い子が!」
「トスもそっちにいきましたわね」
「おー! 麻美アーイ!」
早速あの新戦力のプレーが見られそうだ。 一体どんな選手なのか?
パァンッ!
「ブロックアウトになったね」
「パワーはあまり無いな。 技巧派か?」
「美智香姉やアリスさんと同じタイプー!」
「また新たなライバルゥ!」
まだこのワンプレーだけでは実力の程は計れないけど、あの強豪アメリカ代表でスタメンに入ってくるだけの事はありそうだ。 あのテクニックがあれば、堅い中国の守備を突き崩すことも出来るかもしれない。
「これで1ー1。 まだ始まったばかりだけど、中々見応えある試合ですわね」
「やな」
堅い守備で粘る中国と、高い攻撃にで崩そうとするアメリカという図になっているこの試合。 アメリカ代表が勝つだろうと予想してはいるが、簡単にはいかないかもねぇ。
「中国川、攻撃力がそこまで高くないのが救いだよぅ。 あれで攻撃力もあったら脅威だよ」
「そやなぁ。 あれぐらいの相手やったらオリヴィアが何とかしよるやろからな」
パァンッ!
「おお、綺麗なソフトブロック」
「さすが世界トップクラスのブロッカーだな。 参考になるぜ」
パァンッ!
「おお、ミアさんもワザありのブロックアウトー!」
「あれ、私のマネじゃん」
「たしかに美智香姉っぽいー」
「ミアさんにはあれがあるからねぇ。 相手に有効なプレースタイルを模倣して有利に進める」
「今までかなりの選手のプレーを見てきましたからね。 どんな選手のマネでもお手のものでしょう」
「あれも厄介ですわよねー……」
「試合中に動き盗まれるからどうしようもないよねぇ」
「言ってもオリジナルの劣化版だけどね」
ミアさんの模倣は、たしかにオリジナルに比べるとちょっとばかり落ちるけど、それでもかなりの脅威である。 ゾーンに入ればオリジナルと変わらないレベルにまで引き上がるし、模倣から模倣というコンビネーションで、2人の人間の模倣を同時に繰り出してきたりする。 こちらは対応するのも大変なのだ。
「あぁ、中国の守備にアメリカ代表も対応してきたよ」
「地力に差があるさかいなぁ」
「それでもよく食らいついてるんじゃない?」
「うん。 中国チームの守備はやっぱり堅いよ。 あ、1本返した」
アメリカチームのアタッカーは、守備の堅い中国チームに対してブロックアウトを取りながら得点を重ねているが、中国チームもやられてばかりではない。 しっかりブロックアウトフォローにも入り、寸でのところで拾って繋いでいる。
「私達日本もあれぐらい粘り強くいきたいですね」
「希望ちゃんや新田さんがいれば大丈夫だよ」
「麻美と遥もいるしね?」
「任しとけ」
「なはは」
アメリカ対中国はアメリカが少し優勢で進む。 攻めのチームと守りのチームの対戦は見ていて面白いねぇ。
アメリカにも新戦力が。
「希望です。 どこのチームも凄い若手がいるよぅ」
「希望ちゃん。 私達もまだ若いんだよ」




