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第1926話 カナダ戦のスタメンは

スパを楽しむ亜美達。

 ☆亜美視点☆


 空き日の今日。 試合の疲れを癒す為、シドニーにある西條グループのスパへとやって来た私達! あ、私はまだ1試合も出てないけどね。 しかし、先程前田さんに聞いたところ、次のカナダ戦でようやく出番が来る事がわかったよ。 尚、全力は出すなと忠告付きである。


「多分ですが、イタリアやアメリカが偵察に来ますからね。 わざわざパワーアップしたところを見せる必要は無いですよ」

「パワーアップしたのに見せられないんだね」

「イタリア戦には先言ったメンバーで行きますからね。 その時に全力を出して下さい」

「わかったわ」


 ちゃぽん……


「前田さん。 私の出番はまだですか?」

「うわわ?! マリアちゃんいつの間に?!」

「つい先程……」


 知らぬ間に後ろからマリアちゃんが現れてびっくり。 湯船の中で飛び上がりそうになったよ。 マリアちゃんはというと、前田さんの隣に移動して「私もまだ試合に出ていません」と、抗議の声を上げている。 グループ予選を佐伯さん達世界経験の少ないメンバーで戦ったからねぇ。 私達ベテラン勢は後回しになっているのである。


「マリアさんはカナダ戦で、雪村さんの交替要員で出てもらいます」

「雪村先輩の交替要員? MB(ミドルブロッカー)の蒼井先輩とか星野さんではなく?」


 よく(リベロ)との交替でコートに入るのはMB(ミドルブロッカー)である。 というのも、MB(ミドルブロッカー)(リベロ)は対角のポジションに置かれ、(リベロ)が前にローテーションするタイミングで、MB(ミドルブロッカー)が後ろにローテーションし、前衛にMB(ミドルブロッカー)がいなくなる為である。


「マリアさんは清水さんと同じでオールラウンダー。 MB(ミドルブロッカー)の仕事もこなせますし、スパイクも打てるしトスも上げられる。 交替要員として充分です」

「頑張ります」


 マリアちゃんは、普段なら私がやるような役割を担う事になりそうである。 オールラウンダーはその時々で役割が変わり、都度ベストな立ち回りが要求されるので難しい。 その分やり甲斐はあるけれど。


「くれぐれも全力を出さないように」

「はーい」



 ◆◇◆◇◆◇



 スパから戻って来ると、時刻は16時前。 お風呂にも入っちゃったし、何か食べるには中途半端な時間。 今やっているであろう試合を見に行ったとて、あまり収穫も無いだろう。


「帰ってくると暇だねぇ」

「ま、仕方ないわよ。 ここはシドニー。 勝手知ったる場所じゃないんだし。 希望を見習って寝たら?」


 帰ってくるやベッドで眠り始めた希望ちゃん。 退屈になったらすぐに寝られるという特技はある意味羨ましくもある。 呑気に鼻ちょうちんなんか膨らませちゃって。


「すぴー」

「なはは。 希望姉可愛いー」


 さて。 本当に夕飯までやる事が無いわけだけど、どうしたものかだよ。


 コンコン……


「亜美ちゃーん、希望ちゃーん、麻美ー。 いるー?」


 思案していると、奈央ちゃんの声がドアの外から聞こえてきた。 私と麻美ちゃんに用があるみたいだけど一体どうしたのだろう? 麻美ちゃんと顔を見合わせ、首を傾げる。 とりあえずドアを開けてみるとしよう。


 ガチャ……


「うわわ」

「なはは」


 ドアの向こうには、奈央ちゃんだけではなく紗希ちゃんや弥生ちゃん、マリアちゃんまで立っていた。 このメンバーは、明後日のカナダ戦を戦う予定のメンバーのようだけど?


「どうかしたの?」

「いえ。 カナダ戦に向けて時間差高速連携の練習でもどうかと」

「え、カナダ戦でやるの? 全力は出しちゃダメって話だけど」

「前田さんには許可を得てますわよ。 ただし、1回だけでと言われたけど」

「そ、そうなんだ」

「まあ、一回ぐらいは本番でやっとかないと、いざって時にぶっつけになっちゃうしねー」

「そういうわけで、どうかしら?」

「行くよ」

「暇してたー」

「私も暇だしついて行くわ」


 と、奈々ちゃんも一緒に来るつもりみたいだ。 希望ちゃんも呼ばれていたが、アタッカーではない希望ちゃんは練習の必要が無い為、そのまま寝かせておく事にしたよ。 マロン達ペットが希望ちゃんを見てくれているから大丈夫である。



 ◆◇◆◇◆◇



 奈央ちゃんについてやって来たのはホテルの中庭である。 西條グループのホテルだからね。 中庭にテニスコートやバレーボールコートぐらいは当然あるのである。


「なはは……」

「当然あるって言われてもね」

「本当、何でもありねー」


 ちなみに下はコンクリートなので、ダイビングレシーブとかはしない方が良さそうだ。 まあ、今日はスパイクを打つだけだからその心配は無いだろう。


「では早速やりますか。 奈々美、レシーブお願いしますわね」

「良いけど、後で私にもスパイク打たせてよね?」

「わかってますわよ」


 結局スパイクを打った人が次にトスを上げるという方向で決まった。 という事でまずは誰がどのテンポで動き出すかを決める。 バレーボールでは、トスに対して動き出すタイミングが早い順に、マイナス、ファースト、セカンド、サードというそれぞれ違うテンポがある。 マイナスは(セッター)がトスするより早く踏み切りまで完了している超速攻。 サードはトスが上がったのを見て助走を開始する、いわゆるオープン攻撃というやつだ。 ファーストは(セッター)のセットアップより早く助走し、セカンドはトスアップと同時に助走するテンポだよ。


MB(ミドルブロッカー)の麻美と、交替要員のマリアがマイナスで、オポジットの月島さんはファーストとセカンドの真ん中ぐらい……これはバックアタックでも共通で。 亜美ちゃんと紗希は前衛時はファースト、後衛のバックアタックの時さ宮下さんと同時ね」

「らじゃだよ」


 このように時間差高速連携というだけあり、全体的にテンポは早くなっている。 ただし、奈央ちゃんの指示次第では、誰か1人はサードテンポで動く事にもなる。 高速連携を読んできた相手に対しての後出し攻撃になるからね。


「では練習開始ー」


 という事で、夕飯までの間みっちりと練習し、タイミングを身体に沁み込ませるのであった。



 ◆◇◆◇◆◇



 翌日だよー。


 今日も私達は試合無し。 だが、アメリカ、フランス、ブラジルといった強豪チームが試合予定という事で、一日偵察する事になりそうだ。 ブロックが違うフランス代表は、別会場で試合がある為二手に分かれて偵察する事に。 私はアメリカ、ブラジルの偵察をするよ。 アメリカの対戦相手は中国。 ブラジルはドイツと対戦。 どちらも好カードだ。


「フランスの方には前田さんが行かなくて良かったの?」

「フランスの相手はかなり格下ですからね。 多分、あまり良いデータも取れないでしょう。 まだこちらの試合を偵察した方が得るものが多いと思います」


 たしかに。 現在発表されているアメリカ代表のスタメンは主力メンバーばかりだ。 相手も強いと見て手抜きはしない可能性もあるし、偵察し甲斐はありそうだね。

カナダ戦に向けて準備万端。


「亜美だよ。 ようやく出番が来たよ」

「でも本気は出しちゃダメだよぅ」

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