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第1915話 今こそ観光

予選も終わり束の間の休日。

 ☆奈央視点☆


 ワールドカップバレーinシドニーもグループ予選が終わり、決勝トーナメントが始まるまでの間日。 全てのチームはこの期間の試合予定は入っていない。 つまり、他チームを偵察する事も出来ないのです。

 完全な空き日となる本日は、絶好の観光日和となるわけですわね。



 ◆◇◆◇◆◇



 朝5時30分


「はいはい、皆様おはようございますですわよー」

「奈央、朝から元気ね……」

「おふぁよー……ふにゃ」


 とりあえず朝一番、皆に集まってもらう。 紗希はまだ寝ぼけてるわね。 まあ、顔を洗えばすぐ目を覚ますでしょう。 他の皆も少なからずまだ眠いらしく、目を擦ったり欠伸していらっしゃる方を見受けられる。 そんな中、普段と変わらない様子で目をキラキラさせているのは私の秘書でもある亜美ちゃんだ。 オーストラリアはシドニーにやって来てからもバレーボール漬けになっていた私達は、今日まで観光という観光を一切出来ていない。 観光を楽しみにしていたらしい亜美ちゃんは、今から楽しみで仕方ないのだろう。 清水亜美という子はそういう子なのだ。


「昨日の夜皆さんに連絡した通り、朝食後にシドニーの観光へ出掛けたいと思いますわ」

「いぇーい! って、あれ? 皆元気無いねぇ?」

「朝早くからそのテンションにはならないわよ……」


 亜美ちゃん以外の皆はまだ眠気の方が勝つようだ。 希望ちゃんなんかは、亜美ちゃんの肩にもたれかかりながら鼻ちょうちんを膨らませているわ。 集合時間、早過ぎたかしら?


「と、とりあえず朝食を食べましょ。 その内目が冴えてくるでしょう」


 パンッと手を叩き、一旦話を切り上げる。 皆はまるでゾンビ映画のゾンビよろしく、のそりと立ち上がり、フラフラと朝食の席に着く。 「ウボァー……」とでも聞こえてきそうな光景である。



 ◆◇◆◇◆◇



 朝6時30分。


 朝食を終えた皆は、ようやく目も冴えてきた様子。 いつも騒がしい紗希、麻美、宮下さんを中心に騒ぎ始めている。 こうなってくると、このテンションに慣れていないグループはあまりの騒がしさに圧倒され始めるのだ。 天堂さんや神園さん、佐伯さん辺りがそうね。 星野さんは「皆の家」に来る機会がそれなりにあった為、少しはこのテンションに耐性が出来ているようだ。


「さて、皆さん目は覚めたかしら?」

「なははー! バッチリだし目もパッチリー!」

「麻美っち上手い!」

「きゃはは。 やるわね麻美」


 何が面白いのかはわからないけど、あの騒がし娘達は謎に盛り上がっている。 他の皆も軒並み目を覚ましたようね。 そんな中、挙手する者が1人。 茶色がかった赤髪を左に流したサイドテールの女性。 髪とは逆に青みがかった瞳でこちらを見ているのは……。


「天堂さん、どうかしたかしら?」

「あ、はい。 観光ってどちらへ行くのでしょうか?」

「そう言えば説明してなかったですわね」

「うわはは! シドニーといえばやっぱりピサの斜塔っしょ!」

「美智香姉、それはイタリア……黙って聞いてて」

「うわはは」


 宮下さんの常識力、大丈夫かしら? 可憐ちゃんが少し心配になりますわね。


「シドニー言うたらサグラダファミリアやろが」


 今度は黛のお姉さんが自信満々に踏ん反り返りながら言った。 サグラダファミリアを知っているのは偉いけれども……。


「姉ちゃん。 それはスペインのバルセロナやで。 大阪以外は詳しないんやから黙っといた方がええで」

「しゃーなしやで」


 妹さんの方は比較的常識人なのよね。 頭も妹さんの方が良さそう。


「今日見に行くのは、シドニーといえばオペラハウス」

「あの独特な形をした建物ですね」


 天堂さんは「写真で見た事はありますが」と付け加える。 まあ、ここにいるメンバーは皆そうだろう。 ここでまた挙手する者が現れる。 黒髪を編み込んで後ろで纏めるように団子を作った独特な髪型、瞳も髪と同じく黒く、少し吊り目がちのキリッとした表情を見せる神園さん。 ちょっと紗希に似てるわねー。


「神園さんどうかしました?」

「オペラハウスというのはどういった建造物なんでしょうか? 私も写真で見た事しかないのですが」

「亜美ちゃん、出番ですわよ」

「はいはいだよ。 シドニーのオペラハウスは1973年に完成した歌劇場、コンサートホールだよ。 内部はオペラ等が行われる歌劇場、オーケストラ等が行われるコンサートホール、小規模な演劇や演奏会が行われるドラマシアターやプレイハウス、スタジオシアターなんかに分かれているんだよ」

「さすが亜美ね」

「えっへん」

「ありがとうございます、清水先輩」


 亜美ちゃんは役目を終えると満足そうな顔を見せる。 最近はアミペディアやアミゲーターと言った便利ツール扱いされても怒らなくなったわね。


「オペラハウスの他にも、シドニーといえば外せないのがハーバーブリッジですわね。 そこにも行きますわよ」

「何やハーバーブリッジて。 ひっかけ橋とどっちが有名やねん?」

「姉ちゃん。 さすがにハーバーブリッジの方が有名やしひっかけ橋かて正式名称やないで」


 黛姉妹の漫才も程々に話を進めていく。


「他にもタロンガ動物園やピットストリートモールにも足を伸ばしますわよ。 お楽しみに」


 と、本日の観光予定を説明したところで、ずっと静かに聞いていたおじさんがぽつりと呟く。


「お前達、バレーボールの時より楽しそうだなぁ」

「だはは。 おっさん、そないな事当たり前やん? バレーボールは何処でかて出来るけど、シドニー観光はシドニーでしか出来へんのやよ? そら楽しまなあかんよ」

「まあ、そんなんだが。 むぅ。 監督としては複雑だなぁ」

「嫌やったらついて来んでええで」

「黛梨乃はワシが嫌いなのか?」

「知らん」

「さ、そろそろ迎えのバスが来ますわよ。 準備して1階ロビーへ向かういますわ」

「ほーい!」


 日本代表メンバーに監督、それに無理矢理連れて来た今井君達男子組、あと、ロビーで合流した姫百合さんも巻き込んでのシドニー観光へレッツゴーですわよー。



 ◆◇◆◇◆◇



 ブロロロ……


「私までご一緒させてもらって良かったんですか?」

「もちろんや。 ゆりりんかてウチら日本代表の仲間やないの」


 姫百合さんにも先日、観光の日程の連絡はしてあった。 私達の友人であり仲間なのだから、当然一緒しても良いのよー。 姫百合さんは、日本では超絶有名人な為素顔を晒して歩くのは危険だが、ここシドニーでは変装する事なく伸び伸びと観光出来ると喜んでいる。


「アイドルも大変やな」

「本当に大変で大変で」

「その割に普段から自由奔放に動き回ってるわよね?」

「じっとしてるの好きじゃないので」


 いつもマネージャーさんを困らせたりしてるけど、本人はあまり気にしていないらしいですわ。 まあ、そういうところも彼女の魅力というやつなのかもしれませんわね。


 さて、私達を乗せたバスは、もうすぐでオペラハウスに到着しますわよ!

さあ、シドニー観光へ出発!


「希望です。 シドニーのオペラハウスって踏んだら足が痛くなりそうだよね」

「この子は何を言ってるんだろう?」

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