表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1907/2237

第1903話 ユースチームと壮行試合

監督に呼び出された一同。

 ☆亜美視点☆


 15日の練習を終えてホテルへ戻って来た私達。 なんだけど、監督さんから呼び出されたよ。 何やら明日の練習内容の通達のようだ。


「何やおっさんー。 こちとら練習終わって疲れてるんやで? 風呂入って汗も流したいんやけど?」


 と、早速黛姉が文句を言っている。 それに関しては他の選手達も概ね同意見らしく「用件は早く済ませろー」とブーイングが起こっている。 小林監督の威厳の無い事。


「ワシ、監督辞めよかな……」

「か、監督。 自信失くさないで下さいよ」


 と、マネージャーの前田さんがフォローを入れる。 大変だねぇ、前田さん。


「あー、明日の練習だが、壮行試合をすることになっているんだ」

「壮行試合?」

「相手はどこなんや?」

「日本の20歳以下の育成選手を集めたチーム。 全日本ユースチームだ。 海咲、大空、浜波といった、若者達が中心のチームだ。 ユース大会で優勝もしとるし、中々に強敵だぞ」

「ほぉ」

「中々面白そうですわね」

「やな」

「天堂さん、神園さん、星野さんもこっちのメンバーなんですか?」

「そうだ」


 たしか、3人はユースメンバーだった筈だが、今は日本代表チームの一員なので私達の味方となるよう

だ。 しかし、その3人が抜けたとはいえ日本ユースは強いと思われるよ。 メンバーに選ばれたら気を引き締めていかないと。


「ほんで? その明日の壮行試合のメンバーはどないするん?」

「前田君。 どうなっとる?」


 あ、やっぱり前田さんが決めるんだ。 監督は「頼むぞい」とか言って腕を組んでいる。


「えー、明日の壮行試合は日本最強と思われるメンバーでいきます。 ユースチームにとっても良い経験になる筈なので。 では発表します。 宮下さん、清水さん、月島弥生さん、藍沢麻美さん、西條奈央さん、雪村さん、蒼井さんは雪村さんの入れ替え要員です」

「よっしゃ! やったるで!」

「気を引き締めていくよ」

「はぅ。 頑張るよぅ」

「なはは。 ちょいさーしてやるー」


 前田さんの中ではこれ日本最強の布陣という事のようだ。 私より紗希ちゃんや奈々ちゃんの方がアタッカーとしては優秀な気もするけど、ここはオールラウンダーとしての役割を期待してという事だろう。


「ふふふ。 時間差高速連携の被害者第一号は日本ユースの子達ですわね」


 あれを見せるつもりなんだねぇ。 可哀想に日本ユースチーム。



 ◆◇◆◇◆◇



 翌16日は木曜日。 日本ユースをアルテミスドームに迎えての壮行試合だ。 普通に観客も動員しての試合である。


「うわわ。 凄い観客」

「そんだけ期待されてるって事ですわ」

「ユースチームのメンバーも中々強そうだねぇ」

「やな」

「あちらのスタメン表です。 月ノ木学園3年海咲さん、京都立華3年大空さん、都姫女子3年浜波さんがOH(アウトサイドヒッター)。 MB(ミドルブロッカー)に神奈川清秀3年の向日さん、(セッター)は京都立華3年笠松さん、(リベロ)に大阪銀光3年の高槻さんです」

「どの子も春高で活躍してた子達だねぇ」

「ですね。 世代トップクラスの面々です」

「楽しめそうやな」


 よぉし、頑張るよぉ。



 ◆◇◆◇◆◇



 試合開始時間になったのでコート内に入って相手チームと挨拶を交わす。


「今日はよろしくお願いします!」

「大先輩方と試合が出来るなんて光栄です!」

「おほほほ。 こちらは手加減出来るメンバーじゃないですからね」

「覚悟しときや」


 あ、奈央ちゃんと弥生ちゃんは本気で潰しにいくつもりのようだ。 


「私達も勝つつもりでいかせてもらいます!」

「うわはは! きたまへ!」

「なははは!」

「はぅ……」


 こちらサイドは何とも緩い感じである。 まあ、これが平常運転なんだけど。


「5セットマッチの3セット先取。 その他、国際大会のルールに則って行います。 サーブは日本ユースサイドから。 では、始めてください」


 という事で日本ユースサーブで試合が始まるよ。 サーバーOH(アウトサイドヒッター)の浜波さんから。 ちょっと変則かな?


 パァンッ!


「拾うよぅ!」


 浜波さんの強烈なサーブにいち早く反応するのは希望ちゃん。 日本最強の(リベロ)は簡単には崩せない。


「はい!」

「ではいきますわよ。 同時!」

「うし!」

「了解や!」

「らじゃだよ!」


 奈央ちゃんの号令で同時に助走に入る私達。 ユースメンバーもこの連携自体は知っているはず。 だけど、実際に見るのもやられるのも初めてだろう。

 現に、相手コートの皆はどうすれば良いか戸惑っている。


「そいっ!」


 私達が同時に手を振ると、奈央ちゃんが1人を選んでドンピシャのトスを供給してくる。


 パァンッ!


「?!」


 ピッ!


 エース宮下さんに送られたトスは、一瞬で相手コートに突き刺さる。 ユースチームは一歩も動く事が出来なかったようだ。


「こ、これが」

「凄い……」

「どうやって防げば……」


 ユースチームのメンバーもさすがに困惑しているねぇ。 さて、そんなに狼狽えている暇はないよ。


「ではでは、こちらのサーブいかせてもらいますわよ」

「ありゃ、いきなりやるのね?」

「うわわ」


 奈央ちゃん、めちゃくちゃ助走距離を取ったよ。 という事はいきなりネオドライブサーブを見せる気だ。 後輩達に容赦の無い先輩である。


「はっ!」


 パァンッ!


 シュルルルル!


 と、風を切るような音ともに、強烈なドライブ回転が掛かったボールが弧を描くように飛んでいく。 一見アウトに見える軌道だが、ここから一気に軌道を変える。


 ギュイン!


「拾います!」


 反応した(リベロ)の高槻さんがレシーブの体勢を作るが……。


 パァンッ!


「なっ?!」


 構えた位置の遥か手前に着弾するボール。 奈央ちゃんのネオドライブの落差はとてつもないのである。


「すいません」

「いやいや、あれは初見じゃ無理や」

「だね」

「次は拾います」

「おほほ。 ではもう一発いきますわよ」


 パァンッ!


 もう一発ネオドライブサーブを放つ奈央ちゃん。 しかし、回転数が少し少なく見える。 わざと返せるように打ったね?


「拾います!」


 パァンッ!


「ナイスレシーブ!」


 やっぱり。 拾えるレベルの回転数に落として打ったんだねぇ。 最高回転数で放たれた奈央ちゃんのネオドライブは、レシーブしてもそのスピンの影響を受けて顔に向かって跳ねるからね。


「大空さん!」

「はいよ!」

「亜美姉ブロックー!」

「らじゃだよ」


 私と麻美ちゃんでブロックにつくよ。 現高校生トップクラスのアタッカーの実力拝見だ。


「ちょいさー!」

「てやや!」


 私も麻美ちゃんも全力ジャンプで迎え撃つ。


「た、高っ?!」


 パァンッ!


 麻美ちゃんのちょいさーブロックで完全にシャットアウト。


 ピッ!


「こ、これが世界最強の日本代表……」


 今のところは私達が圧倒する形で試合は進行中。 はてさてこの先どうなるやらだよ。

後輩達相手に実力を見せつけていく。


「奈央ですわよ。 まだまだいきますわよー!」

「ちょっと可哀想な気もするよ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ