第1852話 西條グループは恐ろしい?
七夕だが天気はよろしくないようだ。
☆奈央視点☆
今年も七夕がやってきましたわ。 が、残念ながら今日も生憎の天気。 これでは夜になっても星は見えませんわね。 ですが! ここ「皆の家」には隠し部屋がありまして、室内にいながらにして富士の頂から星空を眺める事が可能なんですのよ。 擬似没入型スクリーンルームと呼んでいますわ。
「金曜日だけど、夜には皆集まれるかな?」
「まあ、皆集まるでしょ」
平日ではあるけど、夜には一応集合するように声を掛けてある。 いつも通り、何かにかこつけて騒ぎたいだけの私達ですわね。 今回は七夕に集まってき騒ごうという魂胆よ。
「奈々ちゃん、麻美ちゃん、渚ちゃんにも夕飯の支度を手伝ってもらうよ」
「平日だと人手足りないものね。 良いわよ」
「任せろー」
台所係の紗希は仕事で居ないから、ここは臨時で手伝いを増やして夕飯の準備にかかる。 皆のペット達はリビングにいるマリアと冴木さんにお任せして、私達は早速夕飯を準備しますわよー。
「私は唐揚げを揚げますわよー」
「奈央も亜美みたいに説明しながら準備するの?」
「私ってそんな感じなの? あ、私はシチューを作るよ」
何故か食事の準備をする際には、解説をしながらというのが半ばお決まりになりつつある私達。 意味あるのかしら?
「さて。 朝から漬け込んであるこの最高級唐揚げ用鶏モモ肉。 衣を付けて揚げていきますわよ。 それ!」
ジューッ!
「良い音ですわね」
「だねぇ」
「亜美姉ー、お肉炒め始めたよー」
「どんどん野菜も切っていくから、炒めまくってね」
「りょーかーい」
とにかく人海戦術で進めていきますわよー。
◆◇◆◇◆◇
19時過ぎには仕事組も集まり、宴会が始まった。 東京組はさすがに居ないけど、それでもかなりの人数になっている。
「きゃはは。 擬似何ちゃらスクリーン楽しみだわ」
「紗希ちゃんと青砥さんは去年京都だったから見れてないもんねぇ」
「ですねー」
「あのとんでも技術の部屋、年1回しか使わないの勿体無くないか?」
「まあ、言われてみれば」
今井君に言われて気付いたけど、あの部屋は七夕にしか使ってなかったですわ。 というか、数ある隠し部屋のほとんどがそんな感じ。
「まあ、でも別に良いですわよ」
「何で作ったんだい……」
「隠し部屋は浪漫ですわ」
「意味わからん……」
何かあった方がカッコイイと思ったのよねー。 カラクリ屋敷みたいで。
「今年も富士山の山頂の映像なの?」
「この天気だと、天の川を綺麗に見られる場所がそこぐらいですのよ」
「それもそうかー」
雲を下に見る高さかつ空気が澄んでいる場所である富士山頂は、絶好の天の川スポット。
「西條グループの技術力恐るべしです……」
「マリアちゃん。 西條グループは宇宙侵略を目指してるんだよ。 これぐらいは当然だよ」
「し、侵略?」
「おほほ」
西條グループは地球規模で収まるグループではないわよ。 まずは火星を手中に収めますわ。
「なはは。 西條先輩の代で宇宙侵略出来ますかー?」
「ふふふ。 不可能ではないわよ。 既に火星に向けて開拓用ロボットを乗せたロケットを飛ばしてますし、超光速宇宙船の開発も大詰めまできてますわ」
「ち、超光速?」
「あ、ああいうのってSF世界の空想の物なんじゃないのん?」
「ふふ。 紗希、甘いですわよ。 この世に光より速い物が存在する可能性は否定されていませんわよ」
「だ、だけどさー」
「いずれわかりますわよ。 我が西條グループが超光速航行宇宙船タキオンを完成させれば」
「うわぁ、マジくさいから怖いわ」
「マジですもの」
「SFじみてきたな、西條グループ」
「おほほほ。 西條グループの研究機関は最強ですわよー」
優秀な人材はいくらいても構わないですわよー。
◆◇◆◇◆◇
宴会も終わり、今年も擬似没入スクリーンのある部屋へと皆をご招待。 中には初めて入るという人も。
「はわわわ」
「青砥さん落ち着いて。 びっくりするのはわからないでもないけど」
「きゃはは。 舞ちゃんは純真無垢で良いわね。 私なんて何見ても『あー、こんな感じか』ぐらいの感覚にしかなんないわよ」
「紗希はもうガキの頃から西條グループにどっぷりだもんな」
「そゆことー」
というわけで、部屋全面に張り巡らされた特殊なスクリーンに映し出された、富士山頂の景色と星空。 室内に居ながらにしてこの光景を見られる場所は、日本全国で見てもこの屋敷だけですわ。
「外は雨が降ってるのにねぇ」
「この部屋で見る空には雲一つ無いですわ」
「本当、とんでも技術よね」
「なはは。 どんな特殊なカメラを使ってるのやらー」
まあ、これもいずれは宇宙開発に使われるであろう技術なんだけど。 この技術をもっと拡大すれば、地球から火星の映像を見ながら開拓作業をする事だって不可能な話ではないもの。
「こんな天の川、見た事ないなぁ」
「青砥さんは去年いなかったもんねぇ。 私達も去年はこの部屋に初めて入ってびっくりしたもんだよ」
まだこの屋敷には色々とカラクリがあったりするけどね。 まだまだ皆を驚かせるわよー。
◆◇◆◇◆◇
天の川を堪能した私達は、リビングへ戻りのんびり過ごす。 明日は土曜日という事で、お仕事があるのは佐々木君と前田さんのペットショップ組と遥だけ。 となれば皆は基本的にこの屋敷に泊まる事にするのだ。
「お風呂沸いたよ。 ささ、順番に入ろうね。
「りょ! 舞ちゃん、いこ」
「うん」
人数が人数だけに、順番に手際良く入浴を済ませていきますわよ。 男子組はいつも最後になるけど。
「奈央も行くわよ」
「わかったから引っ張らないでー」
紗希に腕を引かれながら浴室へ向かうのでした。
◆◇◆◇◆◇
カポーン……
「ふぅ。 良いお湯だわ」
「奈々ちゃん年寄り臭いよ」
「なはは。 またやってるー」
「よく飽きませんわね?」
「2人の中ではもうお決まりなんでしょ?」
「そうなんですか?」
「そうなんだよ。 これやらないとお風呂に入ってる気がしないんだよ」
「そんなのあんただけよ……私は別にそんな事ないし」
「うわわ」
2人の間には認識の齟齬があるみたいね。 まあ、亜美ちゃんがちょっと変わってるだけでしょうけど。
「七夕ももう終わりですわね。 次のイベントはラスベガスへの旅行かしら?」
「もう計画とか立ててるの?」
紗希に訊かれて首を横に振る。 まだ詳しい内容までは何も考えていないもの。
「これから亜美ちゃんと一緒に考えていきますわよ」
「なるほどね」
「ま、カジノで遊ぶのは決定してるけど」
ラスベガスまで行って本場のカジノで遊ばない手は無いですものね。 絶対に計画に入れますわよ。
「麻美ちゃんと希望ちゃんがバカ勝ちする未来が見えるよ」
「なはは!」
「ありそう……」
ただ麻美曰く、金銭が絡むとそこまで運は強くないとの事。 とはいえ、以前競馬でも勝ってたし侮れないですわね。 今から楽しみですわ。
西條グループにかかれば宇宙も近い。
「奈央ですわよ。 火星に西條キャッスルを築城してやりますわよー」
「まずそれからなんだね」




