第1841話 希望先生奮闘記
希望先生の仕事ぶりを拝見。
☆希望視点☆
6月16日金曜日です。 今日もお仕事だよぅ。
「おはよぅ」
「おはよう希望ちゃん。 朝ご飯出来てるよ」
「ありがとぅ。 いただきます。 あむっ」
基本的に朝ご飯は亜美ちゃんが準備してくれている。 というか、平日は亜美ちゃんが家事を頑張ってくれています。 私は夕方までお仕事だからね。
「幼稚園のお仕事どう? もう2ヶ月になるけど」
「子供達は容赦無いし、何するかわからないから大変だよぅ。 やり甲斐はあるし楽しいけど」
さゆりちゃんに出逢って幼稚園の先生になりたいと思い、大学も教育大学へ行き、今年度から晴れて幼稚園の先生になれた私。 たしかに大変ではあるけど、やっぱり幼稚園の先生になって良かったと思う。 園児の中にはやっぱり、昔の私のように他の子達に馴染めない子もいたりする。 私はそういう子の力になって上げられる先生を目指しているよぅ。
「んぐ。 ご馳走様! 行ってきます!」
「いってらっしゃいだよ。 気を付けてね」
朝食を終えたらすぐに家を出るよぅ。 職場の幼稚園までは歩いて行ける距離。 普段は自転車を使って楽々で行くんだけど、今日は夕方から雨予報なので歩いて行きます。
隣の藍沢家からは賑やかな声が聞こえてくる。 朝から元気だねっ。
◆◇◆◇◆◇
私が先生として働く桜ヶ池幼稚園は「皆の家」や駅前までは行かずに、途中の路地を曲がって進んだ先にあります。 国道に面した場所にあり、この時間は出勤ラッシュの自動車も結構走っている。 横断歩道を渡って来る園児もいる為、先生達は早くから信号の近くに立ち見守るのだ。
「はーい、赤信号だよぅ。 止まろうね」
「はーい」
と、このように。 幼稚園児達は特に周りを見ずに走り出したりする可能性があるから、しっかり見守る必要があるのだ。
「はい、青になったよぅ。 右手を上げながら渡ろうね!」
「はーい!」
今日も皆元気みたいだよぅ。 そろそろ信号が赤になりそうだ。
「はやくわたろー!」
スタタタタタ……
信号が点滅し赤に変わりそうなのを見て走り出す園児が2人。
「こら、勝利くん! 信号が変わりそうな時はちゃんと立ち止まるんだよぅ!」
横断歩道の前に立ち塞がり、走って横断しようとする2人を止める。 勝利くんはやんちゃな男の子で年長組さんの中でもリーダーシップを発揮している子だ。 後から追いついて来たのはその勝利くんのお隣さんに住んでいるらしい女の子。 名前を摩耶ちゃんという子だ。 こちらは対照的に大人しくて優しい女の子です。 2人はとても仲良しで、亜美ちゃんと夕也くんや、奈々美ちゃんと宏太くんを思い起こさせる。
「ちぇーっ。 のぞみせんせーがとめなかったらわたれたのに」
「こらっ、かつ君! あぶないでしょ! あと、先生おはようございます! かつ君もあいさつ!」
「おはよーございます」
「あはは。 はい、おはよう2人共。 今日も仲良しだね」
「べつにふつーだよ」
「かつ君はスナオじゃないんだよ」
「うんうん。 可愛いね」
「ち、ちげーし! あ、青になったしいくぞー」
「うん。 じゃあ先生またあとでー」
「うん」
信号が変わり、横断歩道を渡っていく2人を見送るのであった。
◆◇◆◇◆◇
さて。 園児も皆が登園したという事で、私も園内に戻り職員室で朝の準備を始める。
「今日は木村千佳ちゃんが風邪でおやすみだそぅです」
「風邪が流行ってるみたいなので、自由時間の後は手洗いとうがいをさせるように徹底して下さい。 また、体調が悪そうな子がいないか、しっかりと見ておいてください」
「はい!」
「それでは、今日も一日よろしくお願いします」
「よろしくお願いします」
教諭間ミーティングも終わり、私と先輩教諭の日和先生と一緒に年長組の部屋へ向かう。 部屋に入ると、園児達は自由気ままに遊んでいた。
「はいはい! 皆、朝の挨拶するよ! 座って座って!」
「はーい!」
パタパタ……
日和先生が声を掛けると、園児達はしっかり言う事を聞いて席に着き始める。 皆、何だかんだ言って素直で賢い子達だよぅ。
「はい。 おはようございます。 皆、今日も元気ですかー?」
「はーい!」
「今日は千佳ちゃんが風邪でお休みです。 皆は風邪を引かないように、外で遊んで帰ってきたら手洗いうがいをちゃんとしてね」
「はい!」
「はい。 じゃあ、次は希望先生の挨拶お願いします」
「皆、おはようございます! 今日も一日元気に遊びましょう!」
「はーい!」
うんうん。 今日も皆元気だよぅ。
◆◇◆◇◆◇
さて、室内お遊戯の時間です。 要するには室内での自由時間だ。 基本的には何をして遊んでも良い時間だけど、外には出ない事が条件です。 大人しい子達は折り紙したり絵本を読んだり、活発な子達はヒーローごっことかをして遊ぶ。 女の子達の中には、私にピアノを弾いてほしいとお願いに来たりもするので、私はそれの対応をしたりするよぅ。
「のぞみ先生! ピアノ!」
「良いよぅ。 今日は何を弾く?」
「んと! ブルーウィングスのはっぴー☆ばーすでー」
「はっぴー☆ばーすでーだね。 楽譜検索してーっと」
タブレットでピアノ演奏用の楽譜を検索して表示させる。 最近は便利になったものです。
そういえばこの曲、亜美ちゃん達もギターで練習してたなぁ。
◆◇◆◇◆◇
お昼の時間が終わって、今度はお外で遊ぶ時間です。 この時間はもう活発男児達の天下です。
「わいわい!」
「かつとし! 木登りしようぜ!」
「いいぜ!」
「木登りは危ないよぅ! 落ちたらケガするよぅ!」
「へーきへーき!」
と、まあこんな感じです。 ケガしたら大変だから、ちゃんと止めないと。
「ダメですぅ!」
「のぞみせんせー、お母さんみたいだー」
「先生は皆のパパママから君達を預かってるんだよぅ。 ケガとかさせちゃったら大変だからね」
「しかたないなー。 じゃあボールあそびだ。 のぞみせんせーもやろー!」
「それなら良いよぅ」
と、危ない事をしようとしている子がいないか、目を光らせる必要があるのです。
◆◇◆◇◆◇
お昼寝の時間です。 桜ヶ池幼稚園にはお昼寝の時間が設けられています。 この時間は先生達の安寧の時間です。
「希望先生は人気もあるし、子供も言う事聞いてるし。 天職ですね」
「いやいや。 どうですかね? まだ2か月だし」
「東園長も希望先生は凄く良い先生になるって言ってるし」
「はぅ。 そんな事ないですよぅ。 それにバレーボールもやりながらですし」
「それも凄いですよね。 日本代表ですもんね」
「あはは……はい。 来週は練習があるので、木金と休ませていただきます。 ご迷惑をおかけします」
「大丈夫ですよ。 その代わり月曜日から水曜日は頑張ってもらうけど」
「は、はい。 それはもう頑張ります」
「ふふ。 さて、そろそろお昼寝も終わりですね」
「はい。 あともうちょっと頑張りますっ!」
こんな感じで私は頑張っています。
大変な事もあるが、楽しく仕事出来ているようだ。
「奈々美よ。 子供って目を離すと何するかわからなくて怖いわよね」
「私達は常に目を光らせてないといけないんだよぅ」




