表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
184/2182

第181話 海辺の町観光

亜美と希望の部屋で騒ぐだけ騒いで解散した女子達。

希望はまだまだ諦めないようである。

 ☆亜美視点☆


 私の部屋に集まっていた皆は、騒ぐだけ騒いで自室へと戻っていった。

 本当に皆は騒ぐのが好きなんだから……。


「皆元気だねぇ」

「そうだね」


 希望ちゃんと2人になり、ようやく落ち着いた。

 希望ちゃんはフラれたというのにあっけらかんとしている。


「ね、希望ちゃんはその……大丈夫? 一度は通じ合っていたのに」

「大丈夫だけど、さすがにショックだよ。 でも、これは夕也くんが決めた事だし納得するしかないよ」

「……」

「もうっ! 夕也くんの恋人になれたんだからもっと喜んでよね? 負けた私が惨めじゃない」

「あぅ」


 希望ちゃんは強いなぁ。 私が負けてたら、きっとこんな風には振る舞えてなかったと思う。


「ありがとう……私、頑張るね」

「うんうん。 あ、でも油断してたら私だって黙ってないからね?」

「あはは、もう絶対に夕ちゃんは離さないもん」


 このままゴールまで一直線だもんね。


「さて、明日は観光があるし、もう寝ようよ」

「そだね」


 私と希望ちゃんは、電気を消してベッドに入る。

 今日はびっくりな1日だったなぁ。

 まさか、夕ちゃんに選んでもらえるなんて……。



 ◆◇◆◇◆◇



 翌朝、広間で集まって朝食を食べていると、話題はすぐさま私と夕ちゃんの事になる。


「でもさ、2人が付き合うって言われても、なんだかピンッと来ないわよね?」


 紗希ちゃんがそんな事を言い出した。

 どうしてだろう?


「だって、今までだって付き合ってるのと大差なかったじゃない? 『え? 今更?』みたいな感じ?」

「あー、わかる」


 奈央ちゃんまでそんな事を言う。

 今までは幼馴染だったんだけどなぁ。 皆から見たらそう言う風に見えてたのか。


「ねぇ夕也。 どうしてどっちか1人に絞ったの? 2人は別に両方でも良いって言ってたんでしょ?」

「あ、それは私も聞きたい。 どしてなの夕ちゃん?」


 ちょうど聞きたかったことを、奈々ちゃんが訊いてくれたので便乗する。

 夕ちゃんは朝食を頬張りながら答える。


「2人とも1番になりたいって言ってたからな」

「ふうん。 そうだったの」

「やっぱり1番になりたいって思うよね!」


 麻美ちゃんが大きな声でそう言う。

 渚ちゃんも「うんうん」と頷いている。

 渚ちゃんも、京都に好きな男の子でもいるんだろうか?


「しかし、雪村は良かったのか?」

「まあ、仕方ないかなって……。 夕也くんの1番にしてもらえなかったのは、私に足りないところがあったからだし。 でも諦めてはいないんだよ? 2人の側でいつでも起死回生の大逆転を……」

「もう渡さないもーん」

「がるるー」

「がおー」

「心配いらなさそうだな」

「たくましくなっちゃって」


 奈々ちゃんと宏ちゃんが、微笑ましそうに私達を眺めるのだった。


 朝食を食べた後は、皆で観光に繰り出す。

 海辺の町なだけあり、鮮魚などを売っている市場があるらしい。

 早速そこへ向かうことに。


「夕ちゃん、手繋ごう?」

「ん、おう」


 隣に移動して、夕ちゃんの手を握る。

 えへへー。


「早速イチャついてるよこの2人は。 あ、いや普段からこんなもんだっけ?」


 遥ちゃんが後ろからちょっかいを出してくる。

 その隣では希望ちゃんが羨ましそうに見つめていた。

 やっぱりまだまだ未練があるようだ。


「希望ちゃん、もう片方の手が空いてるよ?」

「え?」


 私がそう言うと、一瞬驚いたような声を上げる。

 私もまだまだ甘いね。


「えっと……」

「私は別にいいよ? 夕ちゃんは?」

「ん? 俺も別に良いぞ?」

「じゃ、じゃあ」


 希望ちゃんはいそいそと夕ちゃんの隣へやって来て、戸惑いながらもゆっくりと手を握った。


「……あの、ありがとう」

「ふふふ、希望ちゃんだって、私に色々と許してくれてたじゃん? おあいこだよ」

「本当、仲良いですね先輩方」


 渚ちゃんが私達を見て、率直に感想を述べた。

 何年もずっとこんな感じだからなぁ。


「こいつらはこれが普通だからな」

「みたいですね」


 そんな話をしながら、市場へと到着した。


「あー、魚の生臭い匂いが漂ってくる!」

「これ苦手な人は苦手よね」


 紗希ちゃんが言う通りで、麻美ちゃんはちょっとダメみたい。

 鼻と口を押えている。

 私達は、今朝獲れたであろうお魚さん達が並んでいる通りを歩いて行く。


「ねぇねぇ、あそこマグロの解体やるんだって。 見にいこ―?」


 紗希ちゃんが指差す方を見ると、大きなマグロを今から解体するらしい。

 貴重だよこれは。

 私達はぞろぞろと解体をしている場所まで移動した。

 見事な手際で、素早くマグロを解体していく。

 あんな風にやるんだね。

 次第に、私達が良くスーパーで見るような切り身の姿になっていく。

 1尾から大トロってあれだけしか取れないんだね……。


「す、凄いね」


 柏原君が感嘆の声を上げている。

 中々見られる物じゃないからねぇ。

 私だって、目の前でやってるのは初めて見たよ。


「良いもの見たわねぇ」

「あー、マグロ食べたくなってきたわ」

「ふっふっふー、そう言うと思ってましたわ」

「おお?」


 奈央ちゃんが、ちょっと高くなっている台に乗っかり、踏ん反り返って偉そうにしている。


「美味しいマグロ料理が食べられる店を、予約してあるわよ! お昼はそこで食べます!」

「さっすが奈央!」


 紗希ちゃんが大きな拍手で奈央ちゃんを称える。

 さらに奈央ちゃんが踏ん反り返るのだった。


 そんな鮮魚市場を後にして、私達は次の観光スポットへ。

 次なる目的地はサイクリングロード。

 レンタルで自転車を借りて、整備されたサイクリングロードを潮風を感じながら走る事が出来るらしい。


 自転車を借りられる場所へやって来た私達は、自転車を選ぶ。


「夕ちゃん、これかっこいいよ」

「そうだな。 クロスバイクか」

「そういう自転車なんだ?」


 よーし、私も乗るよぉ。


「んしょ。 うわわ、サドル狭い」

「ははは、確かにな」

「はぅーっ、乗りにくいー」

「すぐに慣れるよ」


 遥ちゃんはなんだか様になってるなぁ。

 あと、渚ちゃんも乗り慣れてるみたいだ。


「皆、乗れたー?」

「はーい」

「んじゃ行くわよー」


 奈央ちゃんが先頭になってゆっくりと走り出す。

 おお、普通の自転車に比べてなんか楽々だよ。


「うん、気持ちいいねぇこれ」


 潮風を感じながら走って行き、私達はサイクリングロードへと入った。

 自転車専用の道で、私たち以外にもかっこいい自転車に乗って走っている人がいる。

 は、速いよぉ。


「夕ちゃーん、海が綺麗だねー」

「そうだな。 潮干狩りしてた時は気付かなかったけどな」

「集中してたもんね」


 夕ちゃんと並んでゆっくりと走る。


「はぅ、はぅ」

「んん?」


 後ろから希望ちゃんの「はぅ」が聞こえるので振り返ってみると、乗り慣れない自転車に苦戦しているようだ。

 運動神経は良いんだから、すぐ慣れると思ったのに。


「希望ちゃん大丈夫?」

「う、うんなんとかぁ」


 ぺースを落として希望ちゃんに並走する。

 むむ……。


「希望ちゃん、ペダル重たくないそれ?」

「重いよぉ」


 あー、やっぱり。 変速してないんだこの子。


「希望ちゃん、その右のハンドルのボリュームを手前に回してみて」

「え? これ?」


 希望ちゃんは言われた通りに回すと、ガチャッッと音を鳴らしてペダルが軽くなるのが見えた。


「あ、ちょっと楽になったよ!」


 希望ちゃんはもう1段ギアを下げて「ちょうど良くなった」と言った。


「ありがとう亜美ちゃん」

「いやいや……」


 普段自転車とか乗らないもんね私達。

 学校も駅も歩いて行ける距離だし、自転車で行くようなところもそんなにないし。


「ささ、景色を楽しもう希望ちゃん」

「うん」


 私達一行のサイクリングはまだまだ続くよ。




2日目の観光、市場を後にした一行はサイクリングロードを颯爽と走る。


「遥だよ。 風が気持ち良いね。 クロスバイクは家にもあるから乗り慣れてるんだよ。 本島はロードが欲しいんだけど、安いやつでも手が出ないんだよなぁ。 奈央ー買ってくれよー」

「150万ぐらいので良い?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ