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第1827話 音フェス終幕

二曲目に入る「ミルフィーユ」

 ☆奈々美視点☆


 音フェスに参加中の私達ギター四重奏「ミルフィーユ」。 出番が回ってきてまずは一曲目の飛行機雲を演奏。 これで観客の心を完全に掴んだ私達。 引き続き二曲目のBlue Skyに移行する。 連日の練習の成果か、皆の演奏と歌のクオリティが格段に上がっている。 特に麻美は難易度の高い演奏を完璧に弾きこなしているし、歌もあの怪音波と呼ばれていた面影は無くなっている。 もちろん上手いとは言えないけど、人並みぐらいの歌唱力にはなったと言える。


「私のー心の色はー♪」


 ジャーンジャーン


 このBlue Skyは曲のテンポはゆっくりなので、演奏難易度はそこまで高くはない。 麻美も難易度の高い演奏を求められているが、この曲は特に苦戦している様子は無かったわ。 今も問題無く演奏を続けている。

 私と亜美が歌で皆を引っ張り、演奏は渚がしっかり引っ張ってくれている。 バランスが取れた良いパフォーマンスだわ。


「遥なこの空へ〜♪」


 二曲目も終わり、拍手で会場が沸いている。 完全に会場の観客を、虜にしたわね。 最後の曲で仕上げといきますか!


「では最後の曲。 これも姫百合凛さんでAmi d'enfanceです!」


 この曲もどちらかというとテンポはゆっくり。 演奏難易度はそんなに高くはない。 私と渚のパートは特に簡単よ。


「物心ついた時には〜いつも一緒だったね♪」


 亜美が私と一緒に月ノ木祭で歌う為に作ったオリジナルソング。 後に姫百合さんにお願いされて、カバーされたこの曲は、今や姫百合さんの代表曲の1つになっている。 元々は亜美が私達との仲を歌にした曲なのよ。


「時には〜喧嘩もしたけど〜心では繋がってるの〜♪」

「物心ついた頃から今まで〜一緒に育ってきたね〜」

「何年経ってもずっとAmi d'enfance……これから〜も〜一緒だよ〜♪」


 パチパチパチパチ!


「はぁはぁ」

「ふぅ……」

「ありがとうございました!」


 パチパチパチパチ!


 三曲やり切った私達を盛大な拍手で送ってくれる観客達。 気持ち良いわね、やっぱ。 そんな拍手を受け、手を振りながらステージ袖から出て行くのだった。



 ◆◇◆◇◆◇



 観客席に戻って来た私達は、再び他のグループのパフォーマンスを見て楽しむ。 周りの観客さんからは「ギター四重奏と歌、良かったです!」と声を掛けられたりもした。 ちょっと有名になっちゃったかしら? 私達、ただでさえちょっとした有名人なのに。


「さて、次のグループはとっても可愛い子供達! ゆめしま幼稚園の園児達による合唱です! どうぞー」


 ブルーウィングスの紹介でステージに上がったのは、小さな子供達。 20人近くいるわね。


「はぅんっ! 可愛いよぅ!」

「きゃはー! 可愛いー!」

「あないな子供達も参加しとるんやな」


 幼稚園の園児の参加。 多分、先生辺りがエントリーしたんでしょうね。


「多分一杯練習したんだろうねぇ。 先生の言う事を聞いて大人しくしてるよ」

「希望ちゃんが見てる子達は大人しい?」

「いやいや。 皆ヤンチャだよぅ」


 小さな子供達って、皆自由気ままに動き回ったり泣き出したり、中々言うことを聞かないものだけど。


「始まるみたいですわよ」


 選曲は幼稚園児らしくチューリップやちょうちょと言った童謡。 これがまた可愛らしく、観客の心を鷲掴みにしている。 


「あまりにも可愛すぎます」


 マリアもあれを見て可愛いと思える感情があるみたいね。 私も園児の可愛らしくて元気な歌声に癒されるのであった。



 ◆◇◆◇◆◇



 その後のグループもそれぞれが色々なパフォーマンスを見せた音フェス。 トリを飾るのは、ここまで司会進行をしてくれていたブルーウィングスよ。


「きゃはー! 岬ー! 朱理ー! 光希ー! 翠ー! 桃華ー!」


 紗希がとにかく限界化しているわ。 ブルーウィングスの大ファンだって話だから仕方ないわね。


「今日は皆凄かったねー!」

「小さな子供からお爺ちゃんお婆ちゃんまで!」

「歌にダンスに吹奏楽!」

「とても楽しいイベントでした!」

「最後は私達、ブルーウィングスのパフォーマンスを楽しんで下さい!」


 パチパチパチパチ!


 長かった音フェスもこれで最後ね。 本物のアイドルグループ、ブルーウィングスのパフォーマンスを楽しむのであった。



 ◆◇◆◇◆◇



 イベントが終了したのは17時。 朝から参加したからさすがに疲れたわね。


「ブルーウィングスの皆が後から『皆の家』にお邪魔しますだってー」

「あら、そうなの? じゃあ私達は『皆の家』に戻って待ってれば良いですわね」

「そだねぇ」

「きゃは! きゃは!」

「紗希はちょっと落ち着け」

「無理ー」


 ちょっとはしゃぎ過ぎな気もするけど、弥生と宏太は「許してやれ」と苦笑いしているし、アイドルの追っかけってこんなもんなのかしらね?


「ほな、帰りますわよー」


 大盛り上がりだった音フェス会場。 まだまばらに人が残ってはいるものの、熱気は収まりつつあるのだった。


「また機会があったら、色々なイベントに参加したいものだねぇ」

「たしかにー」

「『ミルフィーユ』がこの1回だけいうのもなんや寂しいですからね」

「そうね。 まだまだギターも上達しそうだし、これで終わるのは勿体無いわよね」


 私達「ミルフィーユ」はこれで解散とはならず、活動を続ける方針に決まった。


「それなら、チャンネルを解説して動画配信とかで活動すれば良いんじゃないの?」


 と、宮下さんが提案した。


「おー! ネットで活動はありー!」

「動画配信とは何ぞやだよ」


 亜美は首を捻っている。 何でも知ってる癖にインターネットとかコンピューターについてはいまいちなのよね。


「生配信は知ってるよねー?」

「姫百合さんがやってるやつだよね?」

「うむ。 動画配信って言うのは生じゃなくて、動画を撮って編集とかした物を動画サイトにアップロードして配信するスタイルなんだよ」

「テレビ収録した物を後日放送するみたいな感じ?」

「そうそうー」


 亜美は「ふむ。 そういった活動方法もありだねぇ」と頷いている。 これはあとで話し合って検討する必要がありそうね。



 ◆◇◆◇◆◇



 というわけで「皆の家」に帰って来た私達。 さすがに夕飯の支度を準備する元気と時間は無いので、出前を取るわよ。 最高級寿司よ最高級寿司。


「ブルーウィングスさんもいらっしゃいだよ」

「あのイベントに皆さんの内の誰かが来ていてもおかしくないとは思ってましたが」

「まさかイベントにエントリーしてるとは」

「なはは」

「それに、凄いパフォーマンスでしたよ!」

「あはは。 それに関しては私達以外の参加者さんも皆凄かったよ」

「そうですね。 あの「ミルフィーユ」さんは今後どうなさるんですか?」

「解散せずに、一応続ける予定よ」

「動画配信しよかっちゅう話は出とるんよ」

「なるほど。 上手くいけば人気も出ますよ」

「ど、どうなかなぁ」

「いやいや。 今日のパフォーマンスを見ればわかります! 絶対人気出ますよ!」


 と、ブルーウィングスが太鼓判を押す。 自分達の演奏と歌がそんなに凄かったとは思わなかったけど……。


 しかし、SNSでは千葉の某市内で行われた音楽フェスティバルの話題がトレンド入りしている事を、私達はまだ知らなかったのである。

チャンネルを開設して動画配信を検討する「ミルフィーユ」。


「奈々美よ。 そういうのは詳しくないから麻美に任せるわ」

「そうだねぇ」

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