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第1817話 家を探そう

日曜日の今日。 裕樹とともに「皆の家」へ来た紗希。

 ☆紗希視点☆


 今日は日曜日! 裕樹も休みという事で、兼ねてより考えていた同棲に向けて、部屋探しを始める事にする。 その為には親友である奈央の力を借りよう……と、思ったんだけど。


「あれ? 奈央は来てないのね?」


 まあいるだろうと思って「皆の家」に来たのだけど、玄関に掛けられている奈央の名札は、不在を示す赤色になっていた。


「どうする紗希? 出直すかい?」

「んー。 まあ、待ってればその内来るっしょ。 上がって待ってましょ」

「わかった」


 大体いつも「皆の家」にやって来るんだし、今日も当然のようにやって来るに違いないわ。


「亜美ちゃんが来てるみたいだし、話を聞いてみましょ」


 奈央の秘書の亜美ちゃんなら、奈央の今日の予定も把握してるでしょう。

 てなわけでリビングへ。 リビングでは亜美ちゃんとマリアと遥と麻美が寛いでいた。 奈々美も来ているみたいだけど、リビングに姿は無い。


「きゃっほ」

「あ、やほほ紗希ちゃんに柏原君」

「こんにちは神崎先輩達ー」

「おっす」

「こんにちは」


 全員こちらを向いて挨拶を返してきた後は、またのんびりと寛ぎ始めた。


「ねね、亜美ちゃん。 奈央って今日来るかわかる?」

「んん? 奈央ちゃん? ちょっと待ってねぇ」


 と、タブレットを取り出して何やら確認を始めている。 多分、奈央の今日の予定を確認してるのね。 亜美ちゃんは「ふむふむ」と頷きながら……。


「今日は夕方までは来なさそうだねぇ」

「え、そうなの? そりゃ困ったわね」

「紗希、今週は諦める?」

「そうねぇー」

「西條先輩に何かご用なんですかー?」

「うん。 実はさ、近い内に私と裕樹で同棲しようと思うんだけどね。 それで物件探しするから西條グループを頼ろうかなぁってさ」

「むふふ。 なるほどなるほど。 そういう事ならばこの私にお任せだよ」


 何故か亜美ちゃんが胸を叩いて立ち上がった。 お任せってどういう意味なのかしら?


「不動産屋に行くんだよね?」

「え、ええ」

「ちょっと待っててねぇ」


 そう言うと亜美ちゃんはスマホを取り出して、何処かに電話をかけ始めた。


「あ、もしもしお疲れ様です。 西條奈央の第一秘書の清水亜美です。 これから2名、そちらでご相談があるとの事で連れて行きますが、VIPルームの予約に空きはありますでしょうか? はい。 はい。 では30分後に伺います。 では」


 電話を切った亜美ちゃんはサムズアップをこちらに向けてくる。


「VIPルームの予約を取り付けたから今から不動産屋に向かうよ」

「え? 大丈夫なの? 亜美ちゃんってそこまで権限与えられてたりすんの?」

「むふふ。 そうだよ。 この西條グループプラチナカードを見よだよ! このカードを持つ物は、西條グループトップである奈央ちゃんや総帥には及ばないまでも、それに近い権限を持てるんだねぇ!」

「い、いつの間にそんな権限を……」


 亜美ちゃんも奈央並の超大物になったってね……。


「むふふ。 じゃあ行こうか。 車出すよ」

「なは! 私もついてくー」


 何で麻美がついて来るのかはわからないけど、まあいっか。



 ◆◇◆◇◆◇



 ブロロロ……


 亜美ちゃんが運転する車に乗るのは2回目かしら。 相変わらずの超安全運転で笑うんだけど。


「やっぱり法定速度きっちりで走るのね」

「そうだよ」

「信号黄色で止まるんですね」

「そうだよ」

「亜美姉の運転は教科書通りー」

「教習所で模範生に選ばれたからね!」


 亜美ちゃんらしいっちゃ亜美ちゃんらしいわね。

 約30分後には西條グループの経営する不動産屋に到着。


「駐車も完璧だよ」

「きゃはは」

「清水さんってきっちりしてるんだなぁ」

「なはは」


 亜美ちゃんを先頭に中に入って行くわ。 亜美ちゃんは入り口の受付で例の西條グループプラチナカードを出して、ちょっと優越感に浸っているわ。 亜美ちゃん曰く「使ってみたかったんだよねぇ。 気持ち良いねぇ。 奈央ちゃんの気持ちがわかるよ」と、ちょっとはしゃいでいた。



 ◆◇◆◇◆◇



 VIPルームに通してもらい、ふっかふかのソファーに座り、早速相談を始める。


「えっと、こちらの2人が今日のお客様です。 後はよろしくお願いします」


 亜美ちゃんは、担当者さんに私達を紹介した後は後ろの椅子に座って本を読み始めた。 麻美はというと、ニコニコしながら私達の様子を見ている。 何がそんなに楽しいのかしら?


「ではお話を伺いましょう」

「……」

「……」

「こら裕樹。 あんたが話しなさいよ」

「えっ? 僕?」

「当然でしょ」


 まったくこいつは……。 一家の大黒柱になろうって人が情けないわねー。


「えーと。 家を探してまして」

「はぁ……もういいわ。 あの、月ノ木駅近辺で2人暮らしできる物件を探してまして。 一戸建ての2LDKくらいの賃貸で探してます」


 結局私が話を進める事になったわよ。 本当に頼りが無いわねー。 大体の家賃やら初期費用なんかも条件に盛り込み探してもらう。


「なるほど……そういう事でしたら。 こちらの3軒が候補となります」


 と、プリンターで印刷した用紙をこちらに見えるように差し出して来る。 間取りや家賃等、必要な情報は一応揃ってるわね。


「この住所ってどの辺かしら」

「駅から西側。 『皆の家』のある方から少し奥に入って行った住宅地だねぇ」


 いつの間にか後ろから覗き込んでいた亜美ちゃんが応える。 「皆の家」の更に奥か。 立地としては悪くはないわねー。


「内見出来たりしますか?」

「出来ますよ。 今から行きますか?」

「はい、お願いします」


 気になった物件を早速内見させてもらう事に。 やっぱり実際自分達の目で見ないとわからないわよね。



 ◆◇◆◇◆◇



 さて、内見に来たわよん。 たしかに「皆の家」を過ぎて更に奥まった場所だったわ。 日当たりも良さそうだし、駅もまあまあ近い。 「皆の家」もすぐそこだし立地は最高ね。 問題は中身よ中身。


「どうぞ。 まずこちらが玄関になります。 下駄箱もあります」

「うんうん」

「そこそこ広いですね」

「中に入って行きますと、まずこちらが洗面室兼脱衣室、更に浴室です」

「綺麗なお風呂だねぇ」

「入りたいー」


 ふむ。 浴室周りも悪くないわね。 お手洗いは別にあるのか。


「こちらがお手洗いです。 奥に向かうと階段がありまして、2階は和室と洋室の2部屋になります。 階段を通り過ぎてこの扉を開けた先がリビングダイニングキッチンです」

「まあ、2人で住むなら十分ね」

「だね」


 立地も良いし中身もまあまあ合格点。 裕樹は特に意見も無いみたいだし、ここに決めちゃうのもありかしら?


「とりあえず戻りましょうか」

「ですね」


 一旦不動産屋へ戻って話を進める事にしましょう。 裕樹もここで大丈夫って言ってるし。

 亜美ちゃんと麻美はまた行ったり来たりするのは面倒だと言う事で、このまま別れて「皆の家」に戻るらしい。


 私達はこの後、内見した物件を契約。 引っ越しの段取りとかを決めていかないといけないわね。

良い物件を見つけた紗希と裕樹。 引っ越しはいつになるやら?


「亜美だよ。 西條グループプラチナカード……むふふ、むふふふ」

「亜美ちゃん怖いよぅ」

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