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第1814話 初仕事

今日も元気に出勤している紗希。

 ☆紗希視点☆


 5月12日は金曜日。 今日もお仕事よーん。

 とはいえ、研修が終わってからも自分に振られた仕事といえば、お隣のデスクでお仕事をしている真昼さんのアシスタントぐらい。 中々私1人に仕事を振ってはくれないみたいね。


「おはようございますー」

「おー、神崎ちゃんおはよー」


 隣のデスクの真昼さんが元気良く挨拶してくる。 元気は良いけど、どうやら昨晩は会社に泊まり込んだみたいね。 今受けている仕事の締切が近いらしい。

 たしかゲームのキャラデザ22体だったかしら。 あとどんくらい残ってんのかしらね? 泊まり込みでやるぐらいだから切羽詰まってるんだと思うけど。


「アシの紗希ちゃんが手伝える事があれば何でも言ってちょ!」

「ありがてー。 なんだけど、アシスタントはクビ!」

「えっ!? ア、アシスタントクビ?!」


 な、な、な、何で? 私なんかヘマやらかしちゃったのかしら?! ど、ど、どうしましょ!?


「ははは。 そんな狼狽えなさんなってー。 別に神崎ちゃんが使えないとかってわけじゃないからさー」

「じ、じゃあ何故?」

「それは社長から話があるんじゃないかな? ねー、社長ー?」

「そ、そうなんですか?」

「騒がしいわね……。 紗希ちゃんこっち来て」

「は、はい」


 一体何かしら? まさか部署異動?! 早くもお払い箱?!


「紗希ちゃん? 何冷や汗かいてるの?」

「わ、私はキャラデザがしたいんです! 部署異動は嫌です!」

「部署異動? 誰かそんな話したの?」

「してないしてない」

「というか神崎さんは即戦力だし、社長が手放すわけないよ」

「……で、ではお話というのは?」

「もちろんお仕事の話。 紗希ちゃんにちょうど良い感じの仕事の依頼が来たからやってもらおうと思うの」

「お、お仕事? 私に?」

「はい。 紗希ちゃんにお任せしようと思います」

「や、やっ……やった! きゃはは! 初仕事きたー!」

「お、落ち着いて……」

「きゃ、きゃはは。 それで、どんな仕事内容なんですか?」

「そうね。 その話をするわ。 クライアントは株式会社プリンセスステージ」

「プ、プリンセスステージ?」


 知らない企業ね。 名前からして可愛らしい商品を扱う会社なのかしら?


「会社名よりスタガの方が有名かしら」

「ス、スタガって、あのVドルグループのスターガールズですか?」

「そう」


 VドルとはVirtual Idolバーチャルアイドルの略であり、いわゆるインターネット内で仮想の身体であるバーチャルボディーで活躍するネットアイドル的なものだ。 昨今人気が上昇しているジャンルよ。 可愛い女の子やカッコイイ男の子の3Dモデルのキャラクターが歌って踊ったりする。 スターガールズはその中でもかなり大手のグループだったはずだけど。


「8月にプリンセスステージから3人の新人Vドルがデビューするみたいなの。 紗希ちゃんにはその内の1人、花風風花(はなかぜふうか)という子のデザインをやってほしいの」

「ブ、Vドルのデザインが初仕事……しかも大手グループの」

「紗希ちゃんならやれると思って受けた仕事よ。 私からも紗希ちゃんを激推ししといたわ」

「ひ、ひぇっ」


 何かハードル上がってるわよん?!


「どう? やれる?」

「や、やります! やらせてください!」

「オッケー。 じゃあ紗希ちゃんのパソコンに資料とクライアントの連絡先送るわね。 頑張って!」

「はい!」


 というわけで、遂に私にも回ってきた依頼。 ファラノプシスに入社して初仕事だわ。 必ず成功させて、神崎紗希の名を世に知らしめてやるわよん!


 早速デスクに座り、クライアントが送ってきた設定資料やちょっとした要望を確認する。


「ふむふむ。 締切は6月20日までね。 まだちょっと余裕あるわ」

「神崎ちゃーん。 締切まで余裕あるとか言ってると痛い目見ちゃうぞー。 クライアントが一発OKするとは限らないからね。 最悪リテイクの嵐でギリギリになるとかザラだし」

「うっ。 は、早めにラフ仕上げちゃいます」

「そうしなー」


 先輩の忠告はしっかり聞いとかないとね。 さて。 他の資料はと。


「花の国から来た花の精霊。 人間の国を花で一杯にする為にやって来た女の子。 見た目年齢は大体17歳ぐらい……」

「ファンタジーな設定みたいね。 そういうものデザインした経験は?」

「あんまないかも」

「ゲームとかアニメとかの趣味は? ああいうのが結構参考になるけど」

「アニメは結構好きですよん。 趣味コスプレだし。 きゃはは」

「じゃあ案外インスピレーション湧くかもね」

「かも。 まずはラフ上げてクライアントと話を詰めたいね」

「わかってんねー。 さすが経験豊富」

「きゃはは」


 てなわけで、今日はいくつかラフを描き上げて、クライアントに投げるわよん。 どりゃー!



 ◆◇◆◇◆◇



「お疲れ様でしたー」

「お疲れー」


 定時になったので仕事を終えて退勤するわ。 結局ラフ画を3体描いてみてクライアントにメールで投げてみたわ。 返事は来週確認するとしましょ。


「真昼さんはまた泊まり込み?」

「後5キャラのリテイクを2日でやらないとダメなんだわ」

「うっ……お手伝い出来れば良いんだけど」

「いいよいいよ。 神崎ちゃんは自分の初仕事に集中してて」

「す、すいません」


 真昼さんは「気にしない気にしない」と笑いながら手を振った。 私もいつかはあんな風に泊まり込んで仕事とかやるようになるのかしらね。



 ◆◇◆◇◆◇



 仕事場から「皆の家」へと戻って来た私。 仕事を家に持ち帰る事はしたくないから、職場を出たら仕事の事はパッと忘れて切り替える。


「ただいまーっ」

「あ、神崎先輩おかえりなさいー」

「おりょ。 麻美も来てんのね」

「なはは。 くぅの散歩がてらー」

「なるほど。 今日はトレーニングも無いしねーん」

「うむん。 神崎先輩は今日は実家に帰るんですかー?」

「うーん……明日は土曜日で休みだし、こっちに泊まるのもありね」

「亜美姉は小説書き始めたから泊まるってー。 私も泊まるー」

「きゃはは。 今日は賑やかになりそね」

「なはは。 亜美姉は執筆モードだから部屋から出て来ないかもー」

「亜美ちゃんは仕事の鬼ね。 あ、そうだ。 麻美はスタガってわかる?」

「スタガってスターガールですかー?」

「お、さすが麻美ね。 そういうのにも明るいんだ」

「まあ、それなりにー。 スタガがどうかしたんですかー?」

「実は、私の初仕事がそのスタガの新人さんのキャラデザになったのよん」

「すごー! スタガといえば今や大人気のVドルグループー。 デビュー配信から登録者数30万人は行く、超人気の箱ー」

「そ、そんな凄いの?」


 私もそこまで詳しいわけじゃなかったけど、それ程までとは。 これは失敗出来ないわね。


 ちなみに麻美曰く、キャラデザを担当したデザイナーは〇〇ママや○○パパと呼ばれたりするらしい。 私も花風風花ちゃんから紗希ママとか呼ばれたりするのかしら?

いよいよ自分に仕事が任された紗希。 やる気もみなぎる。


「奈央ですわ。 Vドルなんてのもあるんですのね(ニヤリ)」

「うわわ……」

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