第1808話 牡蠣を獲れ
こちら林の食料調達班……なのだが?
☆麻美視点☆
こちらは林組ー。 こっちの方も食料調達組なのだが、林の方では食料調達が出来ていない。 というのもー。
「お姉ちゃん、このキノコ食べられると思うー?」
「知らないわよ。 奈央はわかる?」
「わからないですわね。 変なキノコだと危ないからやめときましょ」
「りょーかーい」
と、こんな風に食べられる物かどうか確信が持てない物ばかりだからだー。
他にも草とか沢山生えてるけど、それが食べられる草かどうか誰も知らないー。
「やっぱりさっきの野うさぎを仕留められなかったのは痛いですわね」
「ああいうのはトラップとかに引っ掛けないと捕まえられないでしょうね」
「知識が無さ過ぎるー」
私達はサバイバルには向いてなさそうだ。 遭難したら生き残れないかもしれないー。
「林での調達は諦めて、私達も海組に合流しましょう」
「そうね」
「りょーかーい」
結局何の成果も得られなかったので、海組に合流して食料調達を手伝う事に。 人数が多いから、必要量も多くなる為、人海戦術で魚介類を集める方針に変更だ。
◆◇◆◇◆◇
海岸へとやって来ると、浅瀬で潮干狩りをしている組と、海岸で釣りをしている組に分かれていた。 美智香姉と月島先輩は別の場所で素潜りをしているとか何とかー。
「希望姉ー。 調子はどうー?」
「アサリが取れてるよぅ」
潮干狩り組には希望姉と青砥先輩がいるようだ。 希望姉の持っている草の蔓で編んだ籠には、大量のアサリが入っていた。
「シジミも獲れますし、先程牡蠣と思しき物も見つけたんですが、岩にくっついてて獲れなくて」
「牡蠣良いですわね! 何とか獲れないかしら?」
と、思案していると……。
「うわはは! 結構獲れましたなぁ」
「だはは! ウチ魚突きの才能あるんとちゃうか?」
素潜り組が爆笑しながら戻って来たようだ。 2人の手にはかなりの数の魚が入った網が握られている。 素潜り成功のようだ。
「おんや? 麻美っち達は林じゃなかった?」
「林の食料調達は上手くいかなかったので、こちらを手伝いに来たのよー」
「さよか」
「で、何を考え込んでるの?」
「実は先程あちらの岩場で牡蠣と思しき物を見つけたんですが」
「ほう。 牡蠣と思しき物」
「ご馳走やな」
「なんですが、岩にガッチリくっついていて……」
「なるほどなるほど。 とりあえず見に行ってみますか」
「ですわね」
という事で、青砥さんが牡蠣らしき物を見つけたという岩場へと移動してきました。 美智香姉曰く「牡蠣がいてもおかしくはない」とのことー。
「この辺なんですが」
「んん? 何や、ただの岩肌やないの?」
「いやいや青砥っち、中々やりますな」
「あ、青砥っち……」
「やるとは?」
「ここ。 これが岩牡蠣」
「へ? 岩やないの?」
「意識して見ないとわかんないけど、ちゃんと岩牡蠣よ」
「ほぇー」
「本当、よく見つけましたわね」
「えへへ」
「獲れへんの?」
と、月島先輩が手を伸ばす。
「ダメよ弥生っち! 素手で無理矢理引き剥がそうとしたら手を切るわよ」
「おおっと」
すぐに美智香姉に止められる。
「牡蠣は結構がっつり岩にくっついてるから、剥がそうとしても手が滑って、貝の部分で指を切っちゃうのよ」
「そ、そうなんか」
「美智香姉が物知りー!」
「ふふん」
「じゃあどうやって獲るんですの?」
「奈央っち、サバイバルナイフ持ってる?」
「な、奈央っち……」
さっきまで林を探索していた私達は、サバイバルナイフを持ち歩いていた。 それを美智香姉に渡すと、美智香姉は適当な大きさの岩を拾って来た。
「このサバイバルナイフの刃先を牡蠣と岩の隙間に差し込んで、ナイフの柄をハンマー代わりの岩で叩いて刃先を奥に差し込んでいって」
「なるほど。 後はてこの原理というわけですわね」
「そゆこと!」
美智香姉は簡単に牡蠣を獲ってしまった。 岩場にはまだ牡蠣がいるようなので、手分けして探す事に。
「弥生っち。 私達は海中を探しましょ。 浅瀬にこれだけいるなら海中の岩にもそれなりにくっついてるはず」
「よっしゃ。 今日はご馳走や」
素潜り組はまた潜るらしい。私達は浅瀬の岩場で牡蠣を獲るぞー!
「なはは。 牡蠣っぽいのみーつけた!」
サバイバルナイフを牡蠣と岩の間に差し込み、ハンマー代わりの岩でナイフの柄を……
「叩くべし!」
カンカンカン!
「んで、てこの原理で剥がすー」
パキパキ……
上手く岩から牡蠣を剥がす事に成功。 なはは、私も役に立てたぞー。
◆◇◆◇◆◇
お昼ー。
「うめー!」
「だな!」
お昼ご飯の時間。 美智香姉や宏太兄ぃ達が獲ってきた魚や希望姉達が獲ってきた貝やウニが並ぶー。 牡蠣は夕食の楽しみに取っておこうという話になったので、昼食の席には並んでいない。
「にしても大漁だな」
「ですわね。 これなら午後からは食料調達に出なくて良さそうですわ」
「遊べるー」
明日の朝食分までの食料も確保出来たから、午後はお休みー。
「遊ぶ言うても何もあらへんけどな」
「たしかにー」
海水浴場のように海岸が整備されているわけでもないし、そもそも泳ぐにはまだちょっと時期が早い。 遊べる道具も持って来ていないので、遊ぶのは難しいかー。
「ま、ウチは趣味で釣りやるけどな」
「食料調達で散々やったのに、まだ釣りやるわけ?」
「当たり前やん」
「よく言った月島」
「私もお供します」
釣りバカ3人はこの後も釣りをするらしいー。
「美智香姉はー?」
「うーん。 さすがに可憐のお守りかな」
「さすがにな」
「亜美姉は?」
「私は火の番なんだよ。 ずっとここで火に薪を焚べる作業なんだよ……何処にも行けないんだよ……」
「亜美っち。 火の番も私がやるから散歩でもしてきなー」
「宮下さん! ありがとう!」
亜美姉も午後からは動けるらしい。 浜辺を散歩しに行くらしいので、私もついて行く事にした。
「ところで宮下さんって遭難でもした事あるんですか?」
そんな話を切り出したのは青砥先輩。 たしかに知識が豊富だし、ちょっと気にはなる。
「いやいや。 田舎が海と山しかないようなとこでさー。 昔から爺ちゃんに色々と教えてもらったりしたのよ。 そのおかげでね」
「へー」
「そういえば親の実家がど田舎って話、以前に聞いたわね」
「奈々ちゃんの菜園で、初めて作物を収穫した時だね。 宮下さんがやたら詳しくスイカの栽培法を教えてくれたよね」
「そやったな」
「なはは。 じゃあ美智香姉、食べられるキノコとか野草もわかるのー?」
「ちょっとだけなら」
「ふむ。 林の食料調達には宮下さんを入れるべきでしたわね」
「ま、今更っしょ」
既に食料を調達する必要はないからねー。 午後からは皆でのんびり過ごす事になりそうだ。
ちなみに本当に遭難したら、今回持ってきた最低限のアイテムなんかも当然無いわけだけど、そんな時はどうするんだろー? 今度美智香姉に聞いてみよー。
青砥さんと宮下のおかげで牡蠣が手に入った。
「奈央ですわよ。 夕飯が楽しみね。 フライに出来ないのが惜しいですわ」
「塩焼きと塩茹でになりそうだね」




