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第1802話 山荘での一時

山荘に着いた亜美達は、部屋割りを決める事に。

 ☆亜美視点☆


 さて、雲取山荘に到着した私達は、奈央ちゃんが予約してくれていた部屋8部屋をうまく振り分ける事に。


「男子は5人だからそれを2部屋にしてくださる?」

「あいよ」


 残る女子17人を6部屋かぁ。 3人部屋5つと2人部屋1つだねぇ。


「希望ちゃん、一緒の部屋にしようね」

「ぅん」


 一応もう1人入れるが、誰かいるかな?


「なはは! お姉ちゃんと渚一緒に寝るぞー」

「はいはい」

「まあ、しゃーないか」


 そこの3人はあっさりと決まったようだ。 更に前田さん、マリアちゃん、冴木さんが同室。宮下さん、新田、弥生ちゃんも同室に決まった。


「紗希どうするの?」

「私ー? 私は舞ちゃんと一緒で良いかなぁ? 舞ちゃん良い?」

「うん」

「じゃあ、私は遥とかしらね?」

「おうー」


 と、順番に決まるが、2人部屋は1つだけしか作れないのである。 私はミアさんを誘って3人部屋を作ったよ。


「ウチあまりもんカー?」

「きゃは。 キャミィは私んとこに来なさいな」

「オー! サキとマイのへやいくデ!」


 これで部屋割りは決まりである。 私達はさすがに疲れているので、とりあえず部屋へ入って休ませてもらうよ。



 ◆◇◆◇◆◇



 部屋に入って見ると、どうやらそこは眠る為だけの部屋のようだった。 布団が数枚、隅に畳んで重ねられている他は、部屋の中央にある炬燵のみ。


「こたつでス」

「うん」

「はぅ。 暖かいよぅ」


 5月とはいえここは標高2000mを越す山の上。 日が落ちると気温はかなり低くなる。 炬燵が無いと寒くて大変だ。


「ぬくぬくだねぇ」


 炬燵に入り、しばし身体を温める。 ここまで登ってきた疲労と炬燵から与えられる温もりにより、眠気がやってくる。 希望ちゃんなんかは既に寝てしまったようで、いつものように「すぴー」と寝息を立てている。 ミアさんは炬燵に入るのは初めてなのだとか。 今住んでいる家も、エアコンと床暖房で過ごしているらしい。 意外とお金持ちなようだ。


「夕飯は18時だそうだよ」

「あと30分でス」


 希望ちゃんはすぐに起こさないといけなさそうだ。


 さて、当然だけど、こんな場所に娯楽なんて物は何も無い。 スマホも圏外である。 暇を潰す手段は無いのである。 麻美ちゃん辺りは退屈で暴れているのではないだろうか?


「疲れて遊ぶ元気はないでス」

「それもそうだね」


 麻美ちゃんと言えど、疲れて部屋で伸びているだろう。 もしこれで元気に「なははー! 亜美姉暇だから外に出よー!」とでも言いに来たら化け物だよ。


「なははー! 亜美姉暇だから外に出よー!」

「化け物だよ!」

「ほへ?」



 ◆◇◆◇◆◇



 18時になったので食堂へとやって来たよ。 皆と合流して席に着く。 私達意外の登山客さんもたくさんいて賑やかである。 夕食はどうやらハンバーグのようです。 うん、美味しそうだ。


「うめー!」

「だな!」

 

 いつもの2人がいつものやつをやっている。 あれだけ険しい山道を登り、途中でポテチを頬張っていたのにまだ食べられるんだねぇ。 井口さんと青砥さんなんか、疲れ過ぎて箸があまり進まないようだ。


「井口さん、食わないと明日の下りが辛いぜ」

「わ、わかってはいるんだけど」

「いらないならくれ」

「宏太! 我慢しなさい」

「うぐぁっ?!」


 井口さんからハンバーグを取ろうとする宏ちゃんだったが、奈々ちゃんに阻まれて叩かれている。 げ、元気だねぇ。


「さて。 では明日の予定を話しますわよ」


 少し落ち着いたところで奈央ちゃんから明日の予定を説明してもらうよ。


「明日は三峯神社ルートを下ります。 まあ、下りなので登るよりは楽なはずですわ。 山を下りたらバスが待っているので、そのバスに乗り込んで千葉まで帰りますわよ」

「はーい」

「西條先輩ー! 三峯神社には行かないんですかー?」

「ん? 神社? 参拝したいの?」

「御朱印頂けるかと思ってー」

「あー、なるほど。 麻美は御朱印集めしてるものね。 良いですわよ、行きましょう」

「やったー!」


 麻美ちゃんはそれを聞いて凄く喜ぶのであった。 明日の予定も決まり、夕食も食べ終えた私達。 それぞれのお部屋に戻って、あとはゆっくり過ごす事に。 希望ちゃんは部屋に戻るや布団を敷きだし、「おやすみなさい」と言って1秒後には寝息を立て始めた。 ミアさんはそんな希望ちゃんを見て「これはマネできないでス」と感心していた。

 さて、先程も言ったようにこの場には娯楽の類は一切無い。 ちなみにお風呂も無いのだ。 どうやって時間を潰すか……一番賢いのは希望ちゃんのようにさっさと寝てしまう事である。 他に読書なんかも良いんだけど、山登りには不要な荷物は持って来ない方が良いので、当然持って来てはいない。


「希望ちゃんのその特技、たまに羨ましくなるよ」

「ハハハ……」


 疲れてはいるのだが、時間はまだ19時前。 ちょっと寝るには早い時間だねぇ。


「きゃははは、今井君の部屋はこっちねー!」


 ドタドタ……


 今、部屋の前を凄い勢いで通り過ぎて行ったのは紗希ちゃんだねぇ? 性懲りも無く夕ちゃんを襲おうとしているようだ。


「はぁ……ちょっと行って止めてくるよ」

「いってらっしゃイ」


 まあ、多少は暇つぶしになるか。



 ◆◇◆◇◆◇



 夕ちゃん達の部屋にやって来ると、紗希ちゃんが扉の前で夕ちゃんと話込んでいた。


「紗希ちゃーん?」

「きゃはっ? 亜美ちゃんにもうバレた」

「そりゃあれだけ騒がしければねぇ」

「はぁ……で? 何の用だ?」

「あぁんっ! わかってるくせにー!」

「はぁ……」


 夕ちゃんは右手で目を覆い溜め息をついた。 私も同じく溜め息をつく。 紗希ちゃんは昔から変わらないねぇ。


「とま、冗談はこんくらいにして。 今さ、井口さんが私達の部屋に来てんのよ」

「ほん?」

「ふむ」

「という事で、井口さんと舞ちゃんを2人にしてあげよーと思ってさ」

「夕ちゃんの部屋に来なくても良いよねぇ?」

「きゃはっ。 まあ、そうなんだけどねん。 でも今なら登山疲れで抵抗する元気も無いかなぁとか思ったりして」

「紗希ちゃんは何処まで本気で何処まで冗談かわからないのが困りものだよ」


 多分、紗希ちゃん的には本気で夕ちゃんをどうこうしようという気は無いのだろう。 その気ならもっとバレにくい方法を使うはずだし。


「ま、これに関しては舞ちゃん達を2人にしてあげるってのが一番の理由で、今井君とこに来たのは暇つぶしよ。 亜美ちゃんの部屋の前で騒がしくすれば亜美ちゃんも出てくるし」

「うわわ」

「きゃは。 せっかくだしロビーでお茶でも飲みながら話でもしましょ」


 どうやら私は紗希ちゃんの誘導にまんまと引っかかってしまったようだ。 やるねぇ、紗希ちゃん。


「ま、私も何して時間潰そうか悩んでたからね。 お話賛成だよ」

「俺は?」

「きゃは。 どっちでもお好きなようにー」

「紗希ちゃんの目的は私を誘い出す事だったの?」

「そよ」


 普通に呼んでくれれば良いのに……。


 とりあえずはロビーに移動することにするよ。 一体どんな話をするのやら。

さて、紗希と亜美は何を話すのか?


「奈央ですわよ。 紗希は落ち着きの無い子ですわね」

「昔からよー」

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