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第1801話 目指せ山頂

休憩を終えた夕也達。 登山再開。

 ☆夕也視点☆


 七ツ石小屋の休憩所を出発し、七ツ石山山頂を目指す俺達。 登山を再開した俺達だが、先程までと隊列を変えている。 先頭は奈央ちゃん固定だが、その直後に井口さんと青砥さんを配している。 更にその後ろに遥ちゃん、宏太と続く。 俺は隊列の真ん中で、前には紗希ちゃん、後ろには麻美ちゃんがいる。

 体力の無い青砥さん井口さんを前方に置き、そのペースに合わせて登っていく。 また、直後に体力自慢の遥ちゃんを置いて、いざという時のバックアップ体制を敷いている。 特にこの先は急坂も出てくるとかの事なので、何があっても不思議では無い。


「道幅狭いですわよー! 足下に気を付けてください」

「はい!」


 休憩で回復した体力を瞬時に奪ってくる狭い登り坂。 早くも井口さんの足取りは重くなっている。 彼女の青砥さんの方が、まだ登れているといったところだ。 途中で遥ちゃんが井口さんの荷物も受け持つ事になり、幾分か足取りが軽くなった井口さん。 遥ちゃんに負担がかかるが、本人は「良いトレーニングだ」と中々のタフっぷりを見せる。


「うわわ……凄い道と登りだよ」

「うへー」


 途中の分岐で、七ツ石山方面へ向かう方向へ進み出すと、これまたえげつない道が姿を現す。 道なのか何なのかわからない起伏が続いている登りだ。 木を避けながら右へ左へと移動しながら少しずつ登っていく。


「はぁ……はぁ……」

「秀君、大丈夫?」


 息が上がってきた井口さんを心配する青砥さん。 たしかにこの登りは辛そうだが。


「もう少し頑張ってください。 この登りを越えたら石尾根に出ます。 広くなっているので、そこで一息つきましょう」

「は、はい」


 奈央ちゃんから檄が飛び、もう一踏ん張りする井口さん。 体力は無いがガッツはそれなりにあるようだ。

 そうして急坂を登り終えた俺達は、開けた場所に出た。


「はぁ……」

「少し息を整えますわよ」

「はい」

「おう」

「ポテチ食う時間あるかー?」

「無いですわよ。 山荘まで我慢して」

「うっす」


 宏太と遥ちゃんはまだ余裕なようだ。 さすがだぜ。 井口さんと青砥さんは座り込んでしまっている。 それを紗希ちゃんが心配そうにしながら「2人共だいじょぶ?」と訊いている。

 東京組や冴木さん辺りはさすがにアスリートだけあり、まだまだ体力が残っていそうだ。 意外なのが前田さんだな。 あんまり運動とかしてないイメージだが、普段から少しは体力作りはしているようだ。


「三山はどうだ?」

「ふ、ふん。 ま、まあまあな山だな」

「ちょっとやられてんじゃねぇか」

「うっせ」

「うわはは! 頑張って大君!」


 他の皆も軒並み大丈夫そうだな。 やはり井口さん青砥さんがちょっと辛そうなぐらいか。


「さて。 ここから10分ぐらいで七ツ石山山地に着くよ。 そこからは広い尾根を下りながら歩く事になるから、しばらくは楽になるはずだよ」


 ガイド片手に亜美がルート説明を行う。 井口さん達も息が整ったらしいので登山再開だ。 とりあえず目標は10分程先にある七ツ石山山頂だ。



 ◆◇◆◇◆◇



「到着だよ! 七ツ石山山頂!」

「ほー。 あっちもこっちも山やなぁ」

「あっちから登って来たのね。 わかりやすいわ」


 来た道を振り返ると、山がずっと続いている。 ちなみに進む先にも山が見えている。 その中の1つを亜美が指差した。


「あそこが今日の目的地、雲取山山頂だよ」

「け、結構あるな」

「頑張るんだよ」

「なはは!」

「さっきも言ったように、ここからしばらくは下りになりますわ。 とはいえ、最後は山頂に向けた急坂が連続してるし、気を引き締めて行きましょう」

「はい!」


 とりあえず立ち止まっていても仕方ないので歩みを進める事に。 少しごちゃごちゃして歩きにくい下りを歩いて行くと、少し視界が開けて歩きやすい道が出てきた。 これなら井口さんも何とかなるだろう。

 

 15分程歩いたところで、何やら看板が立っていた。


「ブナ坂?」

「ええ。 この辺りはブナ坂と呼ぶらしいですわ。 なだらかに登ってますが、そこまできつい傾斜ではありませんね」

「途中でダンシングツリーっていう面白い木が見られるみたいだよ」

「ダンシングツリー?」

「木が踊ってんの?」


 何かちょっと気になるな。 どんな木なんだろうか?


「さあ、頑張って歩く歩く」

「お、おー」


 道がなたらかになり多少は余裕が出て来たのか、足取りが軽くなった井口さんと青砥さん。 良いペースで進んで行く。


 しばらく進んで行くと、奈央ちゃんが足を止めて一本の木を指差した。


「これがダンシングツリーみたいですわね」

「な、なるほどダンシングねぇ……」


 そこにはS字にクネッと湾曲した、まるで踊っている人のように見える木が立っていた。 周りに木が残っていない事から、この木以外は伐採されてしまったのだろうか?


「ささ! 皆、並んで写真を撮るよ!」 


 亜美がデジカメをセットして木の前に走って行く。 俺達も慌てて木の前へ移動し。


「3、2、1、クネッ!」


 皆でダンシングツリーと同じポーズを撮り撮影するのだった。



 ◆◇◆◇◆◇



 ダンシングツリーから20分程歩いただろうか? 一箇所急な坂があったが、それを越えて少ししたところで、広く開けた場所に出てきた。


「ヘリポートだよ」

「ヘリポート?」

「まあ、今はもう使われていないみたいですけど。 一応緊急ヘリ用のヘリポートがあったみたいですわ」

「なはは! 本当だー! Hマークの名残があるー!」

「広くなってるし、少し休みましょ」

「だね」


 奈央ちゃん曰く、ヘリポートで取る休憩が最後の休憩となるようだ。 この先、奥多摩山荘跡というポイントを越えると、最後の急坂連発が待ち構えているのだとか。 そこを乗り越えれば山頂はすぐそこだそうだ。 いよいよ雲取山登山も最終局面を迎える。



 ◆◇◆◇◆◇



 ヘリポートを出発し、いよいよ本日のラストスパートをかける。 奥多摩山荘跡を越えるとすぐに急な傾斜が目に飛び込んできた。


「ごくっ……」

「が、頑張ろう秀君」

「うん」

「さ、行きますわよ!」


 奈央ちゃんを先頭にゆっくりと坂を登っていく。 足場も悪ければ道も狭い。 更に急坂と、こちらの体力をガンガン奪っていく。 最後の難所に相応しい。


 最初の急坂をなんとか乗り越えたのも束の間、体力を消耗した俺達に本日のラスボスである最後の急坂が襲いかかる。 まさか行く先を見上げなければならないほどの坂とはなぁ。


「これが正真正銘最後の急坂ですわよっ! 踏ん張りましょう!」

「おう!」


 一歩一歩確実に歩を進めていく俺達。 見上げれば坂の終わりは見えるのに、一向に近くならない程の牛歩。 立ち止まり、また歩き出しと、少しずつ少しずつ坂を登る。


「お、終わりーっ!」

「ぷはーっ!」


 奈央ちゃん、井口さんに続いて順番に坂を登り切る。 少し歩き小雲取山、そしてそこを越えて遂に辿り着いた。


「山頂だー!」


 雲取山山頂と書かれた碑に触り、本日の目標を達成。 時刻は17時20分。 山を登り始めてから6時間近く経過していた。


 余談だが、山頂から宿泊予定の山荘まではまだ30分歩くらしい。


ようやく雲取山山頂に到着。


「奈央ですわよ。 さ、山荘でゆっくり休みますわよー」

「疲れたねぇ」

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