第1800話 結構キツイ
山登りを続ける皆。 普段から身体を動かさない人達は大丈夫だろうか?
☆麻美視点☆
やーまのぼーりー!
現在私達は、ゴールデンウィークを利用して雲取山という山の山頂を目指して登山中でありますー!
私の前を歩くのは亜美姉で、私の後ろは蒼井先輩だ。 蒼井先輩はポテチを食べながら山登りしている。 凄いー。
さて、私達の登山ペースはそこまで速くはない。 というのも、登山慣れしていないメンバーが数人いるからですー。 青砥先輩の彼氏さんや冴木さんだねー。 トレーニング期間も作れなかったので仕方ない。 特に青砥さんの彼氏さんはスポーツもしないので、体力もあまり無さそうである。
「井口さんだっけ? 大丈夫かい?」
「な、何とかまだ大丈夫です」
「運動はちゃんとしなきゃダメだよ?」
青砥さんに言われて「わ、わかってるけど」と言いながら、少し息が上がっている。 やはり普段運動しない人はこのレベルの登山は厳しそうだー。
「亜美姉ー。 次の休憩ポイントは2時間先ー?」
「だねぇ。 ちゃんと休憩出来るポイントは2時間先だよ」
やはり、どんなにきつくてもあと2時間はこの足場の悪い山道を歩かねばならないらしい。 青砥先輩の彼氏さん頑張れー。
◆◇◆◇◆◇
本格的な登山道に入ってから約1時間ー。 堂所と書かれた看板の前にやって来た。 しかし、道幅が広くなったりしているわけでもなければ何か見る物がある訳でも無いらしく、足を止めずに素通りしていく。
青砥先輩の彼氏さん、井口先輩だったかな? 結構辛そうにしているー。
「休憩ポイントまで後1時間ちょっとだよ。 頑張ろうね!」
「はい」
しかししかしー! 更に歩いて行くと今までより道幅が狭くて、足下も悪くなって来た。 その過酷な山道が私達の体力をも奪っていく。 私達でも少し疲れているのだ、井口先輩は大丈夫だろうか?
度々大丈夫かの確認をしつつ歩いて行くと、遂に難所と思われる場所へと差し掛かる。
「皆さん! ここからしばらくはこの細い道をゆっくり歩く事になりますわ。 左に足を踏み外すと滑落の危険がありますから、ゆっくり進みますわよ」
「は、はーい」
さっきまではまだ「道」と呼べたけど、今目の前にあるのは、斜面に作られた狭い足場とでも言うべきものであるー。
「はぅっ。 怖いよぅ」
「希望、出来るだけ右側を歩きなさい」
「ぅん」
どうやら山が本気を出してきたようだ。 やはり山はナメてはいけないー! 狭く足場の悪い道を、ゆっくりと進んでいく。 そして、思ったより長く感じる狭い道の終点には、看板が立っていた。
「富士見ターン。 小袖登山口から5キロ、雲取山山頂まで5.8キロだって」
「もう少しで半分ですわよ」
「は、半分? まだ半分なんですか?」
井口先輩、どうやらかなり辛いらしい。 ここまでの道のりでまだ今日の目標の半分と聞いたら、さすがに精神的なダメージがあるかー。
「もう少しで休憩所ですわ。 そこでゆっくり休みましょう」
「だね」
「その前に……何故この場所が『富士見ターン』なんて呼ばれているか。 わかる?」
「クイッと折り返してるからじゃないの?」
「それだとターンだよ。 富士見ってついてるのは」
亜美姉が開けた方へと指を伸ばしてこう続けた。
「ここから富士山が見えるからだよ!」
亜美姉の指差す先には、遠くの方で白む富士山が聳え立っていた。
「天気が良くて良かったよ」
「ですわね」
「何や、やる気湧いてくるな」
「あの山に登れたんだもの。 都内最高ぐらい余裕よ!」
中には富士登山に参加していないメンバーもいるのだが、その人達も富士山を見て力を貰ったようだー。
「さ、七ツ石小屋までもう一踏ん張り行きますわよ」
「おー!」
気合いを入れ直して更に先へー! 相変わらず狭い道を一列になって歩いて行く。 なだらかな登りと悪い足下の中少し歩いて行くと、またもや看板が見えてきた。
「マムシ岩?」
「うん。 雲取山山頂までちょうど半分だよ」
「ガイドよればもう少し行けば七ツ石小屋ですわよ。 そこまで行けば休憩出来ますから頑張りましょ」
「おー!」
マムシ岩を通り過ぎて更に更に進む。 この辺りは坂がきつくなっており、更に体力を奪ってくるようだー。 私達はまだ、周りの風景を楽しむ余裕もあるけど、井口先輩や青砥先輩はあまり余裕が無さそうだー。
「もう少しよーん! 頑張ってー!」
「う、うん」
神崎先輩が後ろから青砥先輩を元気付けている。 そんなこんなでマムシ岩から10分程歩いただろうか? ようやく休憩ポイントである七ツ石小屋へと到着したー。
「ふ、ふぅ……な、何とか生きてここまで来れた……」
「み、皆さんタフですね……」
青砥先輩と井口先輩は、すぐに椅子に座って休憩を始めた。 私達も飲み物を買って水分補給ー。
「時間もあるから、ゆっくりと休んでから先へ進みましょう」
「だね。 まだ雲取山山頂までは5キロぐらいあるし」
「つ、つまりここまで来るのと同じぐらいあるという事ですか?」
「そうなりますわね」
「は、ははは」
「だ、大丈夫井口さん?」
「た、多分」
まだまだ先は長いようだ。 私もしっかり充電するぞー。
「では、せっかくなんでこの先の大まかなポイントを皆にも教えておきますわよ」
「だねぇ」
西條先輩と亜美姉は雲取山登山ガイドを片手にこの先のポイントを教えてくれる。
「まず、この小屋を出てすぐは急な坂が続きますわ。 しばらくは道も狭くて、体力が一気に削られると思います」
「うへぇ」
「そうして急坂を登り切ると、七ツ石山山頂に着くよ」
「な、七ツ石山?」
「今登ってるのって雲取山やないんか?」
「七ツ石山だよ。 その山頂から雲取山山頂を目指すんだよ」
「そ、そうなんか」
「七ツ石山山頂は少し広くなってるから、ちょっとくらいは休憩可能ですわよ。 そこからしばらくは下りとなだらかで広い道が続くので、休みながら進む事も出来ますわ」
「ほっ」
「ほっとした井口さん。 残念だけど、雲取山山頂付近には最後の急坂が待っていますわよ!」
「ひぃ……」
なはは。 反応が面白いー。
「でもそこをクリアすればもう山頂は目の前だよ。 山頂から少し下れば、本日宿泊予定の雲取山荘に到着。 明日は別ルートから山を下りて帰るよ」
「わかったわ」
まずは七ツ石山山頂を目指すという事だなー! 富士の頂に至った事もある私にとっては容易い事だー! なははは!
「ではあと25分程ここで休みましょ。 あちらにお手洗いもあるので皆さん済ませておいてくださいね」
「りょーかーい!」
◆◇◆◇◆◇
休憩に入り、行動食の羊羹を齧りながら亜美姉とお話タイムー。
「井口先輩頑張ってるー」
「青砥さんもかなり頑張ってるねぇ」
青砥先輩は京都にいる間、神崎先輩と山登りしていたらしいので、思ったより登れるようだー。 やはり問題は井口先輩だ。
「この先の登り、大丈夫かなー?」
「ガイドによると中々キツイ坂みたいだからねぇ……」
心配だけど、ここは頑張ってもらうしかあるまいー。
ようやく中間地点。 後半に向けて英気を養う。
「奈々美よ。 ここから後半って、結構長いわよね」
「うん。 しかも傾斜もキツくなるよ」




