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第1788話 フランスとの練習試合

フランスとの練習試合当日。 スタメンはかなり捻っているようだ。

 ☆亜美視点☆


 今日は4月28日金曜日。 アルテミスドームで日本代表とフランス代表の練習試合が行われる。 フランス代表には、千葉西條アルテミスでプレーしているマリエルさんやクロエさんに加え、世界でも指折りの技巧派アタッカーであるアリスさんが在籍している。 ランキング的にも上位のチームだよ。


「皆集まっとるかー?」

「へーい」


 相変わらず緩い感じで集まっている日本代表チーム。 アルテミスドームのミーティングルームに集められた私達には、今日のスタメンおよび作戦が伝えられる。


「スタメンは神園、天堂、佐伯、冴木、新田、星野で行く。 んで、新田の交代要員に藍沢妹」

「はーい」

「なんやなんや。 えらい捻ったメンバーやないか?」


 と、黛姉さん。 たしかに面白いメンバーではある。 基本的にはアルテミスのメンバーで固めてあるようだけど。


「私の提案したメンバーです」

「マネが提案したんやったら文句無いで」

「ワシの存在価値は?」


 どうやら前田さんの采配らしい。 一体どんな意図があるのだろう?


「前田さん、説明してもらっても?」

「はい。 まずは世界戦の経験が無いメンバーを入れて、少しでも経験を積んでもらおうと思いました。 それと、フランスにはマリエルさんとクロエさんがいますから、アルテミスのメンバーについてはもう情報が漏れていると思います。 なのでアルテミスのメンバーを入れてみました」

「なるほど。 理解したよ」


 どうやら今日は出番が無さそうかな?


「ですが、3セット目以降はメンバーを替えていきます」

「おお」

「そのメンバーは?」

「宮下さん、清水さん、月島さん、西條さん、雪村さんに蒼井さん」

「うへー。 強っ」

「負けるつもりは無いので」

「アリスさんとまた勝負出来るわけね! 楽しみ!」

「宮下さんはアリスさんをライバル視してるねぇ」

「似たタイプのプレーヤーやからな」

「うむん」


 どちらも超絶テクニックに長けたプレーヤーだからねぇ。 宮下さんは世界一巧いアタッカーだと個人的には思うよ。


「とりあえずはさっき言ったメンバーでいくぞ。 他のメンバーもスポットで使うかもしれんから気を抜くなよ」

「はーい」

「では行きましょう」


 ミーティングルームから出て、ロッカールームで着替え、練習試合が行われるコートへ向かう。

 スタメンは新田さん以外は世界戦初という事で、少しばかり緊張しているようだ。



 ◆◇◆◇◆◇



 コートに出て、スタメンはアップを始めている。 動き自体は良さそうだ。


「前田さん的にはあのメンバーでフランス代表に通用すると思う?」

「どうでしょうね。 4:6ぐらいで厳しいとは思ってますが」

「そうなんか?」

「はい。 やはり世界戦の経験が不足しているメンバーなので」

「まあ、プレッシャーさえ跳ね除けられれば何とかなるさ」

「はい。 なのでこの練習試合は絶好の機会です」


 さすがは前田さん。 先の事まで考え抜かれた素晴らしい采配だ。 監督はそこまで考えられていたかどうか。


「そろそろ始まるみたいやで」

「アリスさんがどれくらい腕を上げて来たか注目ね」


 マリエルさん、クロエさんに関しては日本でプレーしているため、データは集まっている。 しかし、アリスさんに関してはオリンピック以降のデータがあまり無いのである。


「サーブはフランスね」

(セッター)のブリジットさんですね。 新しくフランス代表入りした新戦力です」

「フランスも新戦力を試しに来てるって事ね」


 パァンッ!


 そのブリジットさんのサーブで試合開始。 ここは新田さんが問題無く拾い冴木さんに繋ぐ。


「はい!」


 冴木さんはまず天堂さんにトスを上げる。 天堂さんのスパイクだが、すかさずマリエルさんがブロックに跳ぶ。 この2人はアルテミスでチームメイトなので、お互いの力を良く知っている者同士だ。 さて、どちらに軍配が上がるか。


 パァン!


 天堂さんのスパイクはマリエルさんにワンタッチを取られ、威力が減衰した。 それをきっちり拾うのは(リベロ)のクロエさん。 彼女もアルテミスでプレーする選手だ。 そこから(セッター)のブリジットさんへ繋がり、最後はエースのアリスさんが決めた。


 ピッ!


「おー、さすがフランス代表やな」

「高さでやられたねぇ」

「ですわね」

「マリエルさんは現在327cmの指高を誇るブロッカーですからね。 平均指高の低い日本チームでは中々抜けないです」


 佐伯和香さんや天堂さんや神園さんは300そこそこの高さだそうだし、マリエルさんのブロックには苦労しそうだ。


 パァンッ!


「また止められはったな」

「中々厳しいな」

「うわわ、またアリスさんに決められたよ」

「星野さんは310を超える高さなんですが、アリスさんも高いですし何より巧いですからね」

「星野さんは多分、あのレベルのOH(アウトサイドヒッター)との対戦経験がないんじゃないかな」

「世界の壁の高さを実感してるやろな」


 黛妹さんの言うように、この2プレーでコート内のメンバーは力の差を感じたかもしれない。 とはいえ、和香さん達も日本代表に選ばれた選手達だ。 決してフランス代表に劣っているなんて事はない。


「佐伯さんお願いします!」

「はいよ!」


 パァンッ!


 冴木さんから和香さんへのトスが上がり、マリエルさんのブロックを上手く躱すスパイクを決めた。


「よしっ!」

「ナイスです先輩!」


 1点を取り返してムードも良くなる日本コート。 それにしてもさすがは佐伯和香さん。 万年私達に負けていたとはいえ、千葉の四天王、全国10本指には入ると言われただけはある。 プロになってからは更に実力に磨きがかかったようだ。


「どんどんいったれー!」


 ベンチからの応援にも熱が入る。


 しかし、さすがに力の差がある様子。 天堂さんに神園さんもマリエルさんのブロックには苦戦しながら何とかスパイクを決めてはいるが、点差は開いていく。 8-4で最初のテクニカルタイムアウトに入ったよ。


「どうだ? 世界ランク5位の力は?」

「予想以上ですよ……」

「いやー、さすがに強いね」

「中々スパイクを決めさせてもらえません」

「まあまあ、少しずつ良くなってきていますなら、このまま頑張ってください」


 前田さんが言うように、コート内のメンバーの動きは最初に比べてかなり良くなってきている。 世界戦の雰囲気に慣れてきたのだろう。 前田さんの思惑通りだ。 2セット負けたとしても、この試合での経験は皆の更なるレベルアップの糧になるだろう。


「新田さんも中々苦戦してるね」

「アリスさんが中々曲者でして」

「ブロックアウトプレーで千沙っちに触らせないようにしてるわね。 腕を上げたなアリスさん」


 やはりというか、あちらもオリンピックの時のままではないらしい。 あれから数段レベルアップしているようだ。 今のスタメンがどれだけやれるか。


「よし、いってこい!」

「はい!」


 1セット目の中盤戦開始だ。

さすがに苦戦している日本代表新人メンバー。


「紗希よん。 高さで勝負するなら私と亜美ちゃんを出さないと」

「まあまあ。 新しいメンバーの経験をね」

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