第1774話 パワーアップを目指せ
代表合宿3日目。 こちらはMBの練習場所。
☆麻美視点☆
代表強化合宿3日目。 今日はMBの練習へやって来た亜美姉とマリア。
「やほほ」
「なはは。 亜美姉、マリアいらっしゃいー」
「亜美ちゃん達は今日はブロックの練習かい?」
「うん」
「なはは! どんどんやっていけー」
私達MB組は、私に蒼井先輩、星野さんの他にはベテラン組3人がいる。 私以外は皆高身長だ。 しかーし! 指高では私が二番目に高ーい! 一番は蒼井先輩ー。 やはり蒼井先輩は凄いー。
「あれが噂の新兵器、スパイクマシーンサイジョースペシャルだねぇ?」
「名前からして危なそうですね」
「結構凄いんだぜ、あれ」
今回、私達が練習に使っているのは、スパイクマシーンサイジョースペシャルという機械。 名前の通り、自動でスパイクを打ってくれる機械だ。
「スパイクの強さや、打ち出す高さ、コースもランダムに打ち分けてくれる優れ物ってやつね」
「凄いですね」
「しかもあれを見ろー!」
「あれは?」
「自動ボール拾いマシンだそうです。 センサーでボールの位置を判別し、勝手に拾って来てはスパイクマシンに装填してくれるスーパーマシンだそうです」
星野さんの説明通り、とんでもないスーパーマシンなのだ。 わざわざボール拾いに行かなくで良いので効率アップだー。
「相変わらず西條グループは何でも作るねぇ。 奈央ちゃんの秘書の私でさえ把握し切れないよ」
「それより早速練習してみましょう」
「だねぇ」
というわけで、亜美姉とマリアもマシンを使った練習を開始。
「これがスイッチだね。 ポチッ」
ウィーン……
「ボール射出まで3、2、1」
「てや!」
「射出!」
パァンッ!
「うわわわっ?! 凄い威力のスパイクが飛んできたよ?!」
「設定どうなってるんですか?」
「なはは。 お姉ちゃん想定の威力になってるー」
「な、奈々ちゃん想定? 強いわけだよ……」
「私、やめて良いですか?」
「ダメだよ?! 私がやったんだからマリアちゃんもやるんだよ!? 道連れだよ!」
「み、道連れって……」
「まあまあ、奈々美ぐらいのパワーを持ってる選手は他の国にもいるんだ。 アメリカのキャミィやキューバのアシュリーとかな。 奈々美想定のスパイクに慣れるのは大事だぜ」
「わ、わかりました……」
「腕もげるかと思ったよ……」
「やっぱりやめて良いですか?」
「逃がさないよマリアちゃん」
マリアは亜美姉に拘束され、マシンの餌食になるのだった。 マリアもだいぶ私達に毒されてきたねー。
◆◇◆◇◆◇
1時間程ひたすらにブロック練習に励んだ私達ー。 亜美姉もマリアも、かなり慣れてきた様子。
「ずっと奈々ちゃん並のゴリラスパイクをブロックしてるから、手のひらがヒリヒリする……」
パァンッ!
「……よぉ?!」
「だーれのパワーがゴリラ並だって?」
「なはは……亜美姉大丈夫ー?」
亜美姉がお姉ちゃんの事をゴリラ呼ばわりした瞬間、お姉ちゃんが亜美姉めがけて強烈なスパイクを打ち込んだー。 至近距離から放たれたお姉ちゃんのスパイクは、亜美姉のお尻に直撃したのだー。 亜美姉はお尻を抑えながら「痛い! 痛いよ! お尻に火がついたみたいに熱くて痛いよ!」と、飛び跳ねている。 顔は涙目だ。
「奈々美。 さすがにそれはやり過ぎたんじゃないかい? マジで痛がってるぞ?」
「死ぬよ! お尻が痛くて死ぬよ!」
「意外と余裕あるみたいよ?」
「無いよ?!」
「な、なはは……」
とりあえずお姉ちゃんは亜美姉に謝って、亜美姉もお姉ちゃんに謝り一件落着。
「痛いよ! 座れないよ!?」
ではなさそーであったー。
◆◇◆◇◆◇
亜美姉は氷嚢の上に座りお尻を冷やしながら、私達の練習を眺めているー。
「星野さん、さすが世代No.1と言われるだけはあるねぇ。 素晴らしい安定感だよ」
「ありがとうございます! ですが、先輩方のブロックを見ているとまだまだだと実感します」
「まあ、潜ってきた修羅場の数が違うからなぁ。 私達はもう世界レベルの試合を経験してるしな」
「なはは。 星野さんも上のステージで戦えばレベルアップ出来るぞー」
「が、頑張ります」
うんうん。 これからは下の世代も一緒に盛り立てていってほしいねー。
「蒼井先輩。 私はどうでしょう?」
「何故私には聞かないのかー!?」
「藍沢先輩の言ってることはわからないので」
「なぬー?!」
「麻美ちゃんは超感覚派のプレーヤーだからねぇ。 理論派の人からすると本当に何を言ってるのかわからないんだよ。 ちなみに私も半分くらいわからないよ」
「あ、亜美姉にもわからないのかー……」
実は私って変人なんだろうかー?
「マリアはさすがだな。 オリンピックの時はまだまだ甘いところもあったけど、今は本職のブロッカーにも負けてないぞ」
「ありがとうございます!」
「遥ちゃん。 ちなみに私は?」
「亜美ちゃんは言う事無し!」
やはり亜美姉はどんなポジションをやっても超一流のスーパープレーヤーなのだ。 凄いなー。
「だが、やっぱりちょっと非力なところが弱点だね」
「うぅ。 パワーは奈々ちゃんに全部吸われてるんだよ」
「またお尻にぶつけられるぞ……」
「ひぃっ?!」
亜美姉はちょっとしたトラウマになってしまったようだー。
「亜美姉も私と一緒にパワーを鍛えよー!」
「そういえば麻美ちゃんは今回の課題パワーアップだったねぇ」
「うむ! 圧倒的なパワーを手に入れる!」
「圧倒的じゃなくても良いけど、私もパワーが課題だし、一緒にパワーアップを目指そう!」
「やったー!」
「という事で遥先生!」
「え? せ、先生? 私がかい?」
「バレーボールに必要な筋肉の鍛え方を教えてください!」
「くださいー!」
「お、おう! 任せな!」
筋肉の事なら蒼井先輩に任せておけば間違いないー!
◆◇◆◇◆◇
3日目の練習が終わり、ホテルへ戻ってきた私達は、早速蒼井先輩から筋トレのレクチャーを受ける事にー。
「亜美ちゃんの場合、足の筋肉は今のままで良いと思うんだよなぁ。 しなやかで柔らかい筋肉を持ってるし、下手に鍛えると逆に跳べなくなるかもしれない」
「じゃあ上半身だね?」
「だね。 背筋とか腹筋なんかを鍛えるのが良いかな」
「らじゃだよ!」
「麻美も足の方は今やってるのを継続で良さそうだな。 やっぱり背筋腹筋をメインに鍛えるべし」
「りょーかーい」
「自重トレーニングでも良いし、『皆の家』の器具を使うのも良い。 わからないことは何でも聞いとくれ」
「はい、先生! 腕は鍛えなくて良いでしょうか?」
「うーん。 腕は後回しで良いかな。 スパイク打ったりブロックしたりってのもさ、結局腕の力じゃなくて背筋と腹筋なんだよ」
「なるほどー! さすがせんせー!」
やはり筋肉の事なら蒼井先輩だ。 何をすれば良いかも明確になったし、パワーアップ目指して亜美姉と頑張っていくぞー!
「プロテインも忘れずにな!」
「あれ不味いんだよねぇ」
「なはは」
が、頑張っていくぞー!
課題のパワーアップを目指す亜美と麻美。
「希望です。 亜美ちゃんって昔から力が無いんだよ」
「うん。 荷物も出来るだけ軽くして出かけるんだよ」




