第1759話 同期
何やら用事で大学へ来た麻美。
☆麻美視点☆
今日は用事で大学へ顔を出す。
「ぬぅーん。 来年度からはお姉ちゃんと夕也兄ぃいないのかー」
楽しさ半減だー。 渚と黒川さんだけになってしまうー。 もちろん2人と一緒は楽しいのだが、お姉ちゃんと夕也兄ぃが抜けるとなー。 焼きたてメロンパンを口に放り込む相手もいなくなるー。
「おー、あったあったー。 やはりロッカーに入れたまま忘れていたー」
携帯ゲーム機を置き忘れていたのを取りに来ただけであるー。 別に今度来た時でも良いと思ったー? ダメなのだー! 今日から新しいイベントがあるから、亜美姉や夕也兄ぃと一緒に遊ぶのだ。 だから今日何としても必要なのです。
「さて、帰るぞー」
用が済んだらサッと帰るのだー。 だって今は春休み中で講義は無いからね。 部活やサークルはやってるけどー。 バレー部には時々顔を出してはいるー。
◆◇◆◇◆◇
さてさて、帰り道をのんびり歩いていると、声を掛けられた。
「あ、麻美?」
「おー! おがおがー! 久しぶりー!」
「おがおがはやめてってば……」
おがおがとは、月学で私や渚の世代のキャプテンをしていた小川さんの事である。 懐かしいー。
「高校卒業して以来ではー?」
「そうね。 オリンピックでの麻美達の活躍は見てたけど」
「なはは! 今年のワールドカップも活躍するから見ておくが良いー!」
「代表は決まってるんだ?」
「うむ」
おがおがは「やっぱり凄いなぁ」と笑う。
「そういえば、おがおがと全然会わなかったけど、何処にいたのー?」
「私は大阪の大学行ってるから」
「おー、大阪ー」
そうだったのかー。 知らなかったぞー。
「春休みだし、4月まで実家でのんびりする為に帰って来てるの」
「なるほどー。 ところで、後ろに立っている男性は誰ー? まさか、おがおがの彼氏ー?」
「あー、そのまさかです。 実は大阪で知り合って。 今から私の両親に会ってもらおうかと」
「あ、あのカタブツおがおがに彼氏ー?! しかも、そこまで進んでるということはー?」
「まあ、そんなとこ。 麻美も早く良い人見つけなよー?」
「あー、私はいらないー」
「まだ今井先輩を追っかけてるの?」
「一生追っかけるー!」
「そ、それはまた……」
「なはは。 大丈夫大丈夫ー。 おがおがが心配するこないー」
「そう? まあ、麻美がそれで良いなら私は何も言わないけど。 渚とかはどうなの?」
「渚はよくわからないー」
「そか。 4月まではこっちにいるから、また集まって美味しい物でも食べに行きましょ」
「おー! 渚と黒川ちゃんにも言っとくー!」
「じゃあまたね」
「また!」
懐かしい人と会えてテンションも上がったー。
「おっと、早く帰らねばー!」
◆◇◆◇◆◇
急いで「皆の家」に帰ってくると、亜美姉も教習所から帰ってきたとこらしく、リビングで少し横になっていた。 他には渚に蒼井先輩、マリアに冴木さんも来ているようだ。
「亜美姉がだらしないー」
「あぅー。 路上教習が中々にハードだよぉ」
とは言うものの、教官からは「筋が良い」とか「既にベテランドライバーの域」とか言われているらしい。 さすが過ぎるー。
「あ、そうだ渚!」
「何やの……」
「何でそんな面倒臭そうに返事をするのかー!」
「面倒臭いからや」
「ぶーっ!」
何て失礼なー!
「で、何や?」
「さっき、大学から戻って来る途中でさ、おがおがに会ったぞー」
「おがおがて……友希かいな?」
「そう! ゆきゆき!」
「あんさん、その呼び方は止めてくれ言われてたやん。 いや、まあそらええわ。 友希、たしか大阪の大学行ったんちゃうっけ?」
「春休み中は帰ってきてるらしいー」
「小川さんかぁ。 懐かしいねぇ。 大阪の大学なんだね」
「それでさ! 何と! おがおがが彼氏を連れて歩いてたんだよー!」
「な、何やて?! あのカタブツに彼氏?!」
「しかも! 今から両親に会わせるって言ってたー!」
「ほんまかいな?!」
「うむー!」
「どういうテンションだよ……」
どんどんテンションが上がる私と渚を見て、冷静にツッコミを入れる蒼井先輩。
「先輩は友希のカタブツっぷり知らんから冷静でいられるんですよ。 男の事を嫌っとったはずやのに、何があったんや」
「春休み中に同期で集まって何か食べに行こーって言ってたし、その時には根掘るぞー!」
「そやな!」
「だから何だよ、そのテンション……」
◆◇◆◇◆◇
自宅へ帰ってきて、亜美姉や夕也兄ぃ、希望姉、それに東京の美智香姉とゲームを楽しんだ後、黒川ちゃんから連絡が入った。 おがおがから伝言と連絡先の交換の要請のようだ。 何故私はおがおがの連絡先を知らなかったのかー?!
「友希、帰ってきてるんだって?」
「うむー、今日会ったー。 彼氏連れてたー」
「えっ?! あの友希が?!」
「うむー」
やはり皆同じような反応をする。 それぐらい意外な事なのだ。
「あ、そうそう。 土曜日の夜、空いてるか聞いといてって言われてたんだった。 麻美と渚は大丈夫そ?」
「私は大丈夫だがー。 渚には聞いとくー。 他の皆はー?」
「薫と智恵には連絡取れてる。 2人は大丈夫だって」
「金城さんと鏡さんはー?」
「まだ返信無いかな。 2人とももう働いてるから、忙しいのかも」
「そかー」
バレーボール部の仲間だった皆がまた集まれるのは楽しみだー。 今度の土曜日の夜、早く来いー。
「おっと、渚にも聞いておかねば。 渚ー!」
と、名前を呼びながら渚の寝室へ向かう。
「渚ー!」
コンコンコンコン!
更に名前を呼びながらドアをノックすると。
「やかましわい! 普通に呼べへんのかいな!?」
「なはは。 寝てたら聞こえないかと思って」
「寝てたら明日にせぇ……んで?」
「さっき黒川ちゃんから連絡が来て、今度の土曜日に皆で集まろうって話になってるみたいー。 渚は大丈夫かー?」
「土曜日か? 大丈夫やで」
「おー。 後は金城さんと鏡さんだけだー」
「智恵と薫は来るんか?」
「来れるらしいー」
「ほぉ。 楽しみやな」
「多分話が弾むー」
「まあ、話のネタはやっぱアレやろ」
「おがおがの彼氏の話ー」
「やな」
あのカタブツだったおがおがが、どうして彼氏を作ったのかー。 馴れ初めから全部聞き出してやるぞー!
「んじゃ、渚も黒川ちゃんに連絡しといてねー」
「了解や」
ちなみにバレーボール部の私の同期自体はもっとたくさんいるのだが、今回集まるのは特に仲の良かったレギュラーメンバーだけのようだ。 金城さんと鏡さんはまだ返事がないらしい。 どんな仕事してるんだろー? あと、他のメンバーも今どんな感じなのか、色々と聞きたい事があるなー。
「楽しみだなー」
とりあえず土曜日まであと数日あるし、体調だけは崩さないように気を付けよー。 そうだー、お店決まってるのかなー? もしまだなら西條先輩に相談してみても良いかもー。
懐かしいメンバーで集まる約束。
「奈央ですわよ。 麻美達の学年は結構バラバラになってるのねー」
「私達とは違うんだねぇ」




