第1734話 可憐ちゃんも成長
何故かやって来た三山夫妻。
☆亜美視点☆
「うわはは」
今日は宮下さんと三山君、そして可憐ちゃんが遊びに来ている。 先程まで、東京の西條ブライダルで式の打ち合わせをしていたのだが、帰って家事するのが面倒だという理由から、「皆の家」に一泊するという。 何ともまあ、らしい理由である。 私達としても可愛い可愛い可憐ちゃんと一緒に過ごせるので喜ばしい事だ。
「可憐ちゃん、奈央お姉ちゃんでちゅわよー」
「西條さん別人みたいになってるし」
「いやいや。 可憐ちゃんを前にしたら皆こうなるよ」
「皆、自分の子が産まれたらどうなるんだよ」
と、三山君が呆れたような顔で言う。
「どうなるでしょうね……」
可憐ちゃん以上に溺愛しちゃうだろうねぇ。
「はふはふ」
「ハフハフ」
「ところでさ。 何か犬っころ増えてない?」
リビングには現在、猫達に加えて、ハムスターズ、そして犬達が勢揃いしている。 宏ちゃんの愛犬となったリンちゃんも、リビングで遊んでいる。 子犬の間はたまに職場に連れて行ったりするつもりだそうだけど、今日は「皆の家」に置いて行ったようだ。 朝の内は、ご主人様を探して歩き回っていたらしいけど、今はリビングで友達と遊んでいるみたいだよ。
「こいつはアテナ。 私の実家で飼ってた子をこの間連れて帰ってきたんですよ」
「で、こっちがリン。 宏太が昨日飼い始めた子よ」
「渚っちと宏ちゃん君のペットかー。 よちよち」
「はふ」
「ハフ」
新入りの犬達も、宮下さんに撫でられて嬉しそうである。
「ところで、可憐ちゃんってそろそろ4ヶ月よね? どう?」
「首が座るようになった! あと、色々な物に興味を持ち始めたみたい」
「おお」
「順調に育ってるって事だね」
まだベッドからは出したりしていないみたいだけど、首が座った事でおんぶしたり出来るようになり、両手が空くようになったとの事。
「ハイハイとかってまだなのー?」
「まだ見たいよー? たしか7ヶ月とか8ヶ月ぐらいからって聞いたわ。 立ち歩きが12ヶ月とか」
「成長を見守るのが楽しみだねぇ」
「だなぁ」
「皆も早く作りなよー」
「いやいや。 そんなホイホイ作るものじゃないよ……」
「なはは」
「私達だってホイホイ作るつもりはなかったわよー。 ねぇ?」
「だなぁ。 まさかデキるとは」
「ちゃんとしないからだよ……こんどーさんは切らしちゃダメなんだよ」
「清水さんからそういうの聞くと不思議な感じね……」
「言わなそうだもんな」
「亜美は結構こんな感じよ?」
「普通だよ」
計画はしっかり立てなきゃいけないんだよ。 大事だよ、家族計画は。 私も奈々ちゃんとしっかり話し合って決めるよ。 え? 夕ちゃんとは話し合わないのかって? 夕ちゃんの意見は基本的に聞かないよ。 奈々ちゃんと同じ年に子供を産むのが大事だからね。
「三山夫妻は2人目とか考えてたり?」
「うーん。 少なくとも現役選手の間は可憐1人に全てを捧げようと思う」
「だな。 美智香もバレーボールで忙しいだろうし、2人はちょっとな」
「可憐ちゃんの事はどのくらい考えてるの? 宮下さんはもう来シーズンにはバレーボール復帰でしょ? 三山君ももうすぐ社会人だし」
「まあ基本的には私の両親が見てくれる事になってる。 私もオフシーズンの練習は昼までの育児タイムでやらせてもらえるし、遠征にもついて行かなくて大丈夫だって言われてる」
「へぇ。 割とちゃんとした制度があるのね」
「大きな会社が運営してるチームだからね。 選手も多いしそういうのはしっかりしてるっぽいわ」
「三山が専業主夫になるってのは考えなかったわけ?」
と、奈々ちゃんが鋭い質問を投げかける。
「一応候補には挙がったぞ」
「たださ、私が引退した後を考えるとじゃん? バレーボール選手として活躍出来る期間って、そんなに長くないわけでしょ? 私が引退してから大君の仕事を探すとか大変だしさ。 私だって引退した後に仕事あるかわかんないし」
と、この夫婦は意外と将来の事を考えて色々と話し合っているようだ。 こういう話は、私達にも将来的に役に立つだろう。 私達に道を作ってくれる三山夫妻は、とてもありがたい存在である。
「ふむ。 そういう選手達のケアとかを考えた制度は早急に作らないといけませんわね」
「そうだね」
「早速明日色々と決めなくては」
た、大変だねぇ、チームのオーナーは。 私もその秘書なんだけどね……。 アルテミスは西條ホールディングスという会社が運営、スポンサーをしているチームである。 一応オーナー兼取締役は奈央ちゃんが就いているが、まあ名前だけである。
「亜美ちゃんも協力よろしく」
「ら、らじゃだよ」
やっぱりそうなるんだね。 まあ、いずれは私も利用する事になる制度だし、今の内にちゃんとしたものを作っておかないとだね。
◆◇◆◇◆◇
夕方。 可憐ちゃんをベビーカーに乗せて散歩に行くというので、私とマロン、メロンに麻美ちゃんとくぅ君、渚ちゃんとアテナちゃんも一緒に散歩について行くよ。
「はふはふ」
「あーいー」
「なはは。 赤ちゃんが言葉を喋り出すのっていつぐらいからだろー?」
「うんとね。 たしか、言葉っぽいものを喋り始めるのは6ヶ月ぐらいかららしいわよ。 ちゃんと意味のある言葉を喋り始めるのは10ヶ月ぐらいだって」
「最初にどんな言葉を話すか楽しみですね」
「ママーだったら嬉しいなー」
「あみちゃんだよ」
「どして?!」
今の内に耳元で「あみちゃん」って一杯囁いておくよ。
「清水さん、悪そうな顔してるけど」
「してないよしてない」
とりあえず念を送っておくよ。
「にしても、結構大きくなったよね?」
「そうね。 定期検診では標準的だって。 この辺からは成長が緩やかになってくるみたい」
「そなんだね」
中々私の知らない事ばかりで、私の知識欲が満たされていくよ。 後学の為に色々と聞いておこう。
「ミルクとかはどうなの?」
「何かこのくらいの時期になってくると赤ちゃんも満腹感みたいなのを感じるようになるんだって。 だから、今までより量は減ってる」
「ふむふむ」
「赤ちゃんもそういうんあるんやなぁ」
「うん。 ちょっとずつ色々な機能が備わってくるみたいよ」
「なるほどー」
「為になるねぇ」
「清水先輩は近い内に経験しはるやろからなぁ」
「あはは。 まあ、そだね」
「まだまだこれから大変だってママ友から聞いてるし、私も気を引き締めていかないと」
「ママ友とかもいるんだ?」
「うん。 産婦人科に入院してた時に一緒だった人とかね」
「なるほど」
ママ友さんかぁ。 そういう大変さとかを共有出来る人がいるのは心強いだろうね。 私の場合は奈々ちゃんとか宮下さんがそうなるんだろう。
「宮下さん。 私が子供を産んだ時は、先輩として頼らせてもらうよ」
「うわはは! どんと頼ってくれたまへ!」
「美智香姉が頼もしく見えるとはー」
「うわはは!」
本当に頼りにしてるよ宮下さん。
可憐ちゃんも、少しずつ成長している。
「希望です。 また可愛くなってるよぅ」
「うんうん。 天使だよ」




