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第1733話 宏太の子犬

宏太も犬が飼いたいと思っているようだが。

 ☆宏太視点☆


 この間、月島妹が実家から愛犬を連れて帰って来た。 ポメラニアンのメスでアテナというらしい。 8歳らしいが、ポメラニアンは15年近くは生きることもある。 まだまだ元気な盛りだろう。 今のうちに子犬を産ませたいとの事で、うちの店でお見合い登録をしたようだ。


「愛犬か……」


 実は俺も犬を飼いたいという願望がある。実家では中々飼うのが難しく諦めていたのだが、ふと思い出した。 そう、俺には今、「皆の家」という物がある事に。


「飼えるんだよな、あの場所でなら」


 俺が飼いたいと思っているのはゴールデンレトリバーだ。 大型犬に類する、ペット人気の高い犬種だ。 実は先日、うちの店にやって来たゴールデンレトリバーがめちゃくちゃ気になっているのだ。


「今日、俺が連れて帰ってくるか」



 ◆◇◆◇◆◇



 職場で店長や他のスタッフに話して了解を得て、俺が気になっているゴールデンレトリバーの子犬のケースに「家族が決まりました!」の札を貼り付けた。 


「これで今日からお前は俺の家族だぞ」

「佐々木さん、その子が入って来た時から凄く気に入ってましたもんね」

「ああ」


 俺がケースを覗いていると、前田さんが後ろから声を掛けてきた。


 先週この店にやってきたこの1匹のゴールデンレトリバー。 俺がよく世話をしているのだが、結構俺に懐いてくれている。 俺もこいつがお気に入りで、よく声を掛けたりして相手をしている。 他のスタッフに聞くと、俺が居ない時は俺を探しているような仕草をよくしているのだとか。 相思相愛なのだ。


「名前はもう決めてるんですか?」

「名前はリンだ。 メスだからな」

「ああ……姫百合さんから取ったね?」

「おう。 帰りは西條に頼んで車を出してもらわないとな」

「荷物が多くなりますからね。 私も乗せてもらお」

「じゃあ、俺はケージとか見繕ってくるわ」

「はい」



 ◆◇◆◇◆◇



 仕事が終わり、いよいよリンをケースから出してやり、連れて帰る準備をする。


「アンアン!」

「おーよしよし。 今日からは俺と一緒だからな」


 めちゃくちゃ嬉しそうに尻尾を振っている。 子犬の為まだまだ小さいが、成犬になれば押し倒されそうだな。


「そういえば、この子は『皆の家』に置いとくんですよね? 佐々木さんも『皆の家』に住むんですか?」

「うむ。 そのつもりだ。 まあ、奈々美と結婚するまでだが世話になる」


 リンは実家には連れて帰れない為、「皆の家」で飼う事になる。 もちろんリンと一緒に俺も「皆の家」で過ごす事になる。


「廣瀬や前田さんには悪いが」

「いやいや。 私は大丈夫。 多分、マリアちゃんも文句は言わないと思います」

「まあ、そんな気はする」


 廣瀬はマイペースな奴だからなぁ。 何を考えてるのか未だによくわからない事がある。 それで特に困る事は無いが。


「よしよし、良い子だ」

「ハフハフ」


 リンは特に嫌がる様子もなくキャリーケースの中に入ってくれた。 これならキャリーケースに入れる訓練はいらないか。


「あ、西條さん来ました」

「おう。 あいつはまた無駄に目立つ車を寄越しやがったな」


 どう見ても不釣り合いな高級外車が店の駐車場に停まっている。


「迎えに来ましたわよ。 また急にどうしましたの?」

「ちょいと荷物が多くなるんでな」

「荷物……?」

「ワフ!」

「あら?」

「佐々木さん、この子を連れて帰るみたいで。 ケージだとか諸々を運ぶ必要が」

「なるほど……可愛いですわねー。 ゴールデンレトリバーかしら?」

「おう。 リンだ」

「……奈々美が妬きそうな名前ですわね」

「だ、大丈夫だろ」


 さすがにそんな事ぐらいで嫉妬しないだろ。 多分。



 ◆◇◆◇◆◇



 西條が出してくれた西條家の私有車に乗り「皆の家」へと帰ってきた俺は、早速自分の部屋にケージ等を設置。


「寝る時はここで寝るんだぞ」

「アン!」


 何かマロンみたいな奴だな。 まあ、俺の声に反応してるだけだろうが。


「よし、じゃあリビングへ行くか。 廣瀬やダイヤにも紹介しないとな」


 この「皆の家」に住んでいる廣瀬と飼い猫のダイヤ。 リンと仲良くしてもらわないとなぁ。 リクガメも飼ってはいるが、ケージから出す事は稀な為あまり一緒に遊ばせることもないだろう。 そもそもカメと犬が一緒に遊ぶのか疑問だが。


 さて、リビングにやって来ると、廣瀬、前田さん、西條の他にも、蒼井と冴木が座っていた。


「ワフ」

「お、そいつが奈央の言ってた新入りのワンコか」


 最初に反応したのは蒼井だ。 更に冴木が「おお、可愛いですね!」と微笑む。


「ふっ。 俺の愛犬のリンだ。 ゴールデンレトリバーのメスだぜ」

「フンフン」


 リビングに放してやると、周りの色んな物の匂いを嗅いで様子を窺い始める。 この場所が自分の安心出来る場所であるか確認しているのだろう。 皆はそんなリンをニコニコしながら眺めている。


「可愛いですね。 ダイヤ、新しいお友達ですよ。 仲良くしてあげてくださいね」

「みゃふ」


 廣瀬の愛猫ダイヤは、既に藍沢家の愛犬くぅとも仲良くしており、犬とは上手くやっていく事が出来るだろう。


 ドタドタ……


「何か騒がしい音が聞こえるが……」

「グループチャットで佐々木君が犬を連れて帰って来たって流しておきましたもの」

「それを聞きつけて騒がしいのが来たわけか……」


 ガチャ!


「宏太兄ぃの犬はどこだー!」

「きゃん?!」

「こらこら。 ビクっとしてるだろ。 もうちょっと静かにしてやってくれ」

「なはは……ごめんー。 その子が宏太兄ぃの?」

「あぁ」

「わふ」


 麻美が抱いていたミニチュアダックスのくぅが反応している。 麻美の後ろからは奈々美や月島妹、更には夕也、亜美ちゃん、希望までやって来ている。皆で来やがったか。


「宏ちゃんも遂に犬を飼うんだね」

「おう。 念願のゴールデンレトリバーだ」


 人や動物が一気にやって来た為、リンは警戒して俺の足下へとやって来て「うぅっ」と唸っている。 大丈夫だと言いながらゆっくり抱き上げて安心させてやる。


「もう宏太にべったりじゃない」

「店でも俺が世話してたからな」

「名前は?」

「リンだ」

「姫百合さんと同じ名前やないですか」

「そうだな」

「なはは!」

「へぇ……」


 何故か奈々美が少し不機嫌になったが、すぐに通常に戻り「リンちゃん、私は怖くないわよ」と、声を掛けながら目線を合わせる。 リンも危険が無いとわかったのか、奈々美の手のひらを舐め始める。 その後も、亜美ちゃんや麻美、月島妹も大丈夫だと理解したらしく、警戒を解いて部屋の探検を再会した。 マロンやその子供達、くぅ、アテナも、リンを追い回すような事はせずに見守っている。 こいつらやっぱり賢いな。


「私ももう少し落ち着いたらゴールデンレトリバー飼おうかな」


 と、前田さんが呟く。 たしか、前田さんも大型犬が欲しいって言ってたな。


「オスならリンと交配出来るな」

「たしかに」

「何かいやらしいわね」

「何でだよ……」


 とまあ、アテナに続き新たな仲間が増えたペット達。 仲良くしてやってほしいものだ。

宏太にも遂に愛犬が。


「亜美だよ。 ペット王国になりつつあるよ」

「何とかゴロウ王国ですわね」

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