第1726話 アルテミスジュニアVS月ノ木ウイングススタメン
今日はアルテミスジュニアの練習試合。 相手は強敵、月ノ木ウイングスのスタメン。
☆亜美視点☆
翌日曜日のお昼。 私達は月ノ木西小学校の体育館にお邪魔している。 今日はさゆりちゃん達アルテミスジュニアチームと、クラブチーム月ノ木ウイングスのスタメンチームの練習試合が組まれている。
2週間前には、同じクラブチームの4年生選抜チームと練習試合して勝っているよ。 だが、今回は相手もスタメンだ。 簡単には勝てないよ。
「こんにちは!」
「はい、こんにちは」
体育館に入り、ウイングスの監督さんに元気良く挨拶するさゆりちゃん達。 元気だねぇ。
「さ、着替えて準備運動だよ」
「はい!」
パタパタ……
「良い子達ですな」
「はい。 素直で優しくて良い子達ですわ」
さゆりちゃん達はすぐに着替え終えて、準備運動に取り掛かる。 遥ちゃんが近くで指示を出してくれているよ。
「今日はスタメンで相手させていただきますよ」
「はい。 お願いします」
「先週の大会、偵察に来てらっしゃいましたよね?」
「あはは……」
「どうでした?」
「凄いチームですね。 まさかあんなに強いとは思ってませんでしたわ」
「ははは。 今の5年生、6年生はかなりの逸材が揃ってまして」
「特に背番号1の子と7の子は小学生レベルではないよ」
「背番号1は6年生の鷹見アリサですね。 うちのエースです」
鷹見アリサちゃんか。 やはりエースなんだね。 あれだけ上手いんだから当然か。
「7番は湊ひかり。 中学に上がったらSをやりたいと言っておるので、うちではその方向で育成しております」
「なるほど。 どちらも月ノ木中学へ進むんですかね?」
「そう聞いとります」
つまり、4月からはさゆりちゃん達のチームメイトになるという事か。 これは心強い味方になりそうだけど、ポジション争いが激化しそうでもある。
「でも、うちの子達もこの間の練習試合の時のままではありませんわ。 あの日から数段レベルアップしました。 それに……」
「うん。 今日の試合中にもどんどん強くなるよ」
「なるほど。 良い試合になりそうですな」
「ええ。 ところで……そっちのお面集団は一体?」
「な、なはは……」
「わ、私達の友人達ですわ。 ちょっとした有名人なんで顔出しはちょっと」
ブルーウィングスだと知れたら騒ぎになりかねないからね。
さて、そろそろ試合開始だよ。 果たしてどんな試合を見せてくれるだろうか。
◆◇◆◇◆◇
整列して挨拶を交わす両チーム。 さてさて、どうなるやら。 サーブは月ノ木ウイングスさんからだ。 7番の湊ひかりちゃんのサーブからだ。 この間の大会で見た感じだと、サーブはそこまで脅威ではない選手だ。 昨日の光希ちゃんのサーブに対応出来ていた皆なら……。
パァンッ!
「私!」
真由美ちゃんが声を出して構える。 この辺りの基本はもう完璧だ。 真由美ちゃんはMB志望なのだけど、しっかり基礎は固めてある。 レシーブもしっかりしてこなすよ。
「はいっ!」
パァンッ!
「ナイスだよ真由美ちゃん!」
やはり、昨日の光希ちゃんのサーブに慣れたおかげで、ある程度のサーブなら対応出来るようだ。
「樹里ちゃんがトスに行きましたわよ」
「アタッカー陣も準備出来てるわよ」
「練習通り出来てるね」
樹里ちゃんは誰にトスを上げるだろうか。 相手ブロック陣はしっかりとパンチブロックの位置取りだ。 中央に3人が固まったブロックポジションで、色々なスパイクに対応しやすい形だ。 それを見て取った樹里ちゃんは、Dクイックを選択。 ガラ空きのライトに速攻を叩き込む作戦だ。 助走に入った優里ちゃんを見た月ノ木ウイングスの5番の子が、ブロックにやって来る。 1枚ブロックだ。
「えいっ」
ちょんっ……
優里ちゃんは冷静にフェイントでブロックの頭上を抜きにかかる。
「上手い!」
「ディフェンスのいないスペースにドンピシャ!」
ピッ!
「やった!」
「ナイス優里ちゃんー!」
「わいわい!」
まず1点を取ったアルテミスジュニア。 搦め手ではあるが、しっかりと点を取れる事がわかったのは大きい。
「さあ、どんどん行こう!」
「はい!」
サーブは樹里ちゃんだ。 アルテミスジュニアの皆は、サーブの練習もしっかりとやっている。 樹里ちゃんは特別得意なサーブがあるわけではないけど、奈央ちゃんがドライブサーブを教えている。 なので、基本的にはドライブサーブを打つよ。
「はい!」
パァンッ!
「ナイスサーブー!」
ドライブ回転が掛かったサーブが相手コートへ飛んでいく。 まだまだ回転数や球速がそこまで高くはない為、強力なサーブとは言えないけど、これからの練習で磨いていけば立派な武器になりそうだ。
「はい!」
さすがにこのレベルのチームの選手となると、あれぐらいのドライブサーブは拾ってくる。 しっかりと7番の湊ひかりちゃんがトスを上げ、エースの鷹見アリサちゃんが強烈なスパイクを打ってくる。 真由美ちゃんと美雪ちゃんが頑張ってブロックに跳ぶも、止められずに決められてしまった。
ピッ!
「凄いー!」
「止めらなかったー」
「朱理お姉ちゃんみたいなスパイクだったー」
決められてもあまり落ち込まない辺り、アルテミスジュニアは図太い。
「ドンマイだよ。 ブロックは追いついてるから大丈夫だよ」
「次止めようぜ」
「はい!」
まだまだ試合は始まったばかりである。 皆なら十分に止められるスパイクだ。
「にしても、あの鷹見って子凄くない?」
紗希ちゃんは「きゃはは。 私でも小学生の頃あんなにやれてたか怪しいわ」と笑いながら言った。
「小学生の頃の紗希ちゃんは見た事無いからわからないけど、中学で出会った頃の紗希ちゃんはあの子より凄かったよ」
「きゃはー」
実際に紗希ちゃんと遥ちゃんは相当に凄い選手だった。 ウイングスの監督さんも話を聞いていたらしく「お前達は見てきた子供達の中でもずば抜けていた」と語った。 だけど、鷹見アリサちゃんもそれに負けない逸材だとも語る。 それは私の目から見ても間違いない。
「うちのジュニア達も10年に1人の逸材が集まってますわよー」
「そだね」
さゆりちゃん達だって、素質では絶対に負けていない。 何せあの子達はバレーボールを本格的に始めたのが本当に数ヶ月前なのだから。
ピッ!
「ナイスさゆりちゃん!」
「やった!」
今度はさゆりちゃんのスパイクが見事に決まり1-2となっている。
「心なしか昨日のスパイクより良くなってません?」
と、お面集団の1人が口を開く。 えっと、ハムエモンのお面は確か桃華ちゃんかな?
「あの子のあのスパイク、光希のスパイクに似てたよね?」
「うん」
そういえば何処となく昨日の光希ちゃんのスパイクに似ていたようにも見える。 もしかして、真似したのかな? いやいや、自分のフォームを一朝一夕で変えるのは難しい。 しかも昨日ちょっと見ただけじゃ無理だよ。 ミアさんじゃあるまいし。
「ま、まさかねぇ?」
ミアさん並みの才能がある可能性が? だとしたら30年に1人の逸材だよ。
試合開始。 どちらもハイレベルなプレーを見せる。
「奈央ですわよ。 どの子も小学生とは思えませんわね」
「私達も他から見たらそうだったのかなぁ?」




