第1721話 目標は音楽フェスティバル
少しずつ音痴がマシになってきた麻美。
☆麻美視点☆
「カラオケイクゾー!」
水曜日である。 最近は音痴がマシになってきたらしいので、試しにカラオケに行きたいと思うー!
「嫌よ」
「私も嫌や」
「何故ー?!」
お姉ちゃんと渚を誘ってみたらこれだー。 何故嫌なのかー。
「あんた勘違いしてない? たしかにマシにはなったし、まだ聴けるぐらいにはなったけどね」
「それでもまだ音痴なんは変わらへんのやで。 さすがにカラオケで聴きとうない」
「ぬぬー。 別に良いもんー! 亜美姉達誘うし!」
私は家を飛び出し、隣の家のインターホンを鳴らす。 すぐに中から「はいはいだよー♪」という歌が聞こえてきた。
ガチャッ
「ありゃ、麻美ちゃんどしたの?」
「亜美姉ー、カラオケ行こー」
「カラオケ? 奈々ちゃん達は?」
「私とは行かないってー……」
「ありゃ。 まあ、たしかにまだ音痴の域からは脱してないからねぇ……」
と、亜美姉も顎に手を置く。
「うん。 私は良いよ。 希望ちゃんと夕ちゃんにも声かけてみるよ」
「おー! さすが亜美姉ー!」
やっぱり亜美姉は優しいー。 更に希望姉と夕也兄ぃも同行してくれるとの事。
「他にも行く人いないかなぁ?」
「マリアちゃんとかは?」
「あの子はあんまりカラオケ行くイメージ無いぞ」
「無いねぇ」
一応西條先輩と蒼井先輩にも声を掛けてみるとー。
「別に良いですわよ。 麻美も頑張ってるみたいだし」
「おう。 私達も協力するぜ」
と、カラオケに同行してくれるようだ。 やったー!
◆◇◆◇◆◇
「ぼぇーのーよーにー♪」
カラオケにやって来た私は早速数曲程歌わせてもらった。
「かなりマシになりましたわね」
「2曲聴いても耳がおかしくならねーな!」
「はぅ。 感動だよぅ」
「でもまだまだ練習しないとねぇ」
「だなぁ」
皆、私の上達した歌を聴いて褒めてくれているー。
希望姉なんか、感動の涙を流しているー。
「今の裏声トレーニングも効果あるみたいだけど、他にも何かトレーニング法は無いんですの?」
「なははー。 ゆりりんに聞けば何かあるかもー?」
「なるほど。 では訊いてみますわね。 よいしょと」
西條先輩はスマホを取り出して、いきなりゆりりんに電話し始める。 アイドルゆりりんって忙しいと思うのだがー。
「ふむふむ。 発声練習? なるほど、伝えておきますわ。 ありがとう姫百合さん」
普通に繋がって普通に新しいトレーニング法を聞き出せたようだ。 トップアイドルって暇なのかー?
「腹式呼吸を用いた発声練習が良いらしいですわよ。 やり方はインターネットとかで調べると出てくるらしいですわ。 今度から取り入れてみては?」
「りょーかーい!」
帰ったら調べてみよー。
「とりあえず今はカラオケ楽しもう」
「おー! じゃあ亜美姉歌ってー」
「らじゃだよ」
私以外の皆もカラオケを楽しむ。 なはは! お姉ちゃんと渚も来れば良かったのにー。
「亜美姉はやっぱり歌も上手いー」
「それな」
「普段の声からは想像つかないようなハスキーボイスですわよね。 しかも高音でも低音でもしっかり声量が変わらないのよね」
「そんなところにも才能があるんだな」
「はぅ」
亜美姉は本当に何でも出来る人ー。 多分3000年ぐらい未来の人と同じぐらいスペックを持ってるー。
「亜美ちゃんばかりに良いところを取られるわけにはいきませんわ。 私も1曲歌いますわよー」
「よ! 十八番の洋楽だな!」
西條先輩は良く洋楽を歌うー。 結構有名な洋楽を流暢な英語で歌うのだ。 さすがは西條先輩ー。
その後は蒼井先輩や夕也兄ぃ、希望姉もそれぞれ得意なジャンルの歌を歌うのであったー。
私もまだまだ音痴の域を出られていないらしいし、早く皆に追いつくぞー!
◆◇◆◇◆◇
「ただいまー」
「おかえり麻美」
「どやった? 皆に何か言われへんかった?」
「皆褒めてくれたー。 マシになってるってー」
「へぇ」
「楽しかったぞー。 2人も来たら良かったのにー」
「それはまた今度でええわ」
「そっかー。 あ、今日から新しいトレーニング取り入れてみるからー」
「新しいトレーニング?」
「ゆりりんが教えてくれたー。 腹式呼吸での発声練習ー」
「ゆりりん? 姫百合さんも来てたの?」
「んにゃー? 途中で西條先輩が電話で訊いてくれたー」
「あの人、本当にトップアイドルなんか?」
「なはは。 日曜日に横アリで単独ライブやるらしいー」
「ああ、宏太と弥生が行くって言ってたわ」
「なはは」
「お姉ちゃん、ほんま好きやなぁ」
「で、その発声練習がどうしたの?」
「ちょっと大きな声出す事になるから先に謝っておくー」
「なるほど。 やるなら『皆の家』の方が良いんじゃないの? あそこなら防音室もあるわよ。 希望に頼んでピアノを使えば、ピアノの音に合わせて発声練習も出来るわ」
「お姉ちゃん天才かー!?」
「いや、別に誰でも思いつくでしょ」
「じゃあ、発声練習は『皆の家』でするー」
後で希望姉に、ピアノの使用許可貰わねばー。
「でも、本当に頑張るわよね、あんた」
「うむ。 本当の美声を手に入れるのだ」
「今までのアホみたいな歌声で美声とか言うてたん、ほんま傑作やな」
「我ながら恥ずかしいー」
あんな歌を皆に聴かせていたとはー。 夕也兄ぃは優しかったんだなー。
「ちなみに、歌が上手くなったらギターの弾き語りやるわけ?」
「機会があればー」
「せっかくやし、ミルフィーユで何かイベントとかにも参加したいですよね?」
「そうねー。 春には市内で音楽フェスやってたりするし、それに参加してみたいわよね」
「それまでには完璧に弾けるようになりたいー」
「ええ目標やね」
頑張るぞー!
夜ー。 オンラインゲームで夕也兄ぃ、亜美姉、希望姉、美智香姉と遊ぶー。
「5月の音楽フェスティバルにミルフィーユで参加したい?」
「うむー。 私達はそれに向けて練習頑張るー」
「ちょうど4ヶ月ぐらいだな」
「4ヶ月でイベントに参加出来るぐらいになれるもんなの?」
「どうだろう? 麻美ちゃんは多分大丈夫だけど、奈々ちゃんと渚ちゃんがどうだろう?」
「やれるわよ」
「頑張ります。 麻美に出来て、私に出来ひんわけないで」
「うわわ。 2人とも麻美ちゃんの部屋にいるんだね」
「なはは」
何故か私の部屋でギターの練習をしているお姉ちゃんと渚が、亜美姉の言葉に反応した。 音楽フェスティバルまでにギターをマスターすると言って頑張っている。 私も負けられないー!
「美智香姉はギターとかしないのー?」
「私、楽器は無理かなー。 音楽の成績も悪かったし!」
「なははは!」
「悪かったんだね」
「何か解釈一致だな」
「宮下さん、何の成績なら良かったのぅ?」
「保健体育!」
「やっぱり……」
美智香姉はやはり美智香姉であったー。 どうやって名門私立の都姫女子を卒業したのか、謎過ぎるー。
とにかく私達の目標は5月の音楽フェスティバル参加と定めたー。 頑張るぞー!
ミルフィーユ最初の目標が決まった。
「遥だ。 そんなイベントもあるのか」
「あるんだよ」




