第1716話 ギター四重奏
ギターの練習を始めた奈々美と渚。
☆奈々美視点☆
平日は大学へ行ったりしてまあ、それなりにはやるこはあるんだけど……。
「ふぅ……なんとか一通り覚えたわ」
「わ、私もです」
「なはは! 2人とも早いー」
何の話かっていうと、ギターの話。 私と渚もギターを買って始めたのだけど、ようやくコードってのを覚えたわ。
「にしても問題はここからよね」
「そやねんなぁ。 この色んなコードを素早く切り替えて演奏せなあかんねんな」
「うむ。 コードチェンジは更に難しいー」
麻美は既にそれもマスターして、初心者向けの曲なら弾けるぐらいにはなっている。 今は亜美に言われてストロークを勉強しているのだとか。
「3人共ハマってますわねー……」
練習するのにわざわざ「皆の家」に来ている私達。 リビングで練習しているものだから、皆から注目を受けている。
「まあ、今はまだ何も弾けないから楽しさっていうのはわからないけどね」
「簡単な曲でも弾けるようになると楽しいぞー!」
「麻美はええなぁ」
「2人もすぐ弾けるようになるよー!」
麻美、亜美がたまに教えてくれたりするから、普通よりは上達も早いとは思うけど。 麻美程の早さで弾けるようになるかは疑問ね。
「ところで貴女達。 同じアコースティックギター4人でバンドやる気?」
「それね。 亜美も頭抱えてるわ」
バンドの基本的な編成はギター、ベース、ドラムと言われている。 そこにボーカルやキーボードと言ったものが加わる事もある。 アコギ4人ではバンドとは呼べない。
「私、ドラムやったらなんとかやれますよ」
「不器用な渚がー?」
「やかましいわ! ドラムは何や中学生の時に練習してたことあるんや」
「へー。 意外ね」
「じゃあ、お姉ちゃんがボーカルやれば後はベースかー」
「亜美ちゃんならすぐにベースもマスターするでしょ」
「それだと、奈々美と渚のギターが無駄にならない?」
「私はギター引きながら歌えるけど、渚はたしかに……」
「たがらバンドじゃなくてギターカルテットみたいな形にすれば良いのよ」
「ギターカルテット?」
「四重奏ですね」
と、今まで黙って聞いていたマリアが話に入ってくる。 なるほど、四重奏ね。
「4人がそれぞれ別のパートを担当して重奏するのよ。 4人ともなれば結構重厚な音楽になるんじゃないですの?」
「今度亜美姉と2人でやるやつの4人バージョンってことかー」
「そういう事ね」
それならアコギ4人で組めるわね。 奈央ナイスアイデアだわ。
「その為には私らもちゃんと弾けるようにならんと」
「そうね」
「私ももっと頑張るー!」
目標は4人で重奏という事になった。 亜美が知らないところでだけど。
◆◇◆◇◆◇
「なるほど。 バンドじゃなくてギターのカルテットか。 良いねぇ。 危うく安いベースかドラムセットを買うところだったよ」
自宅へ帰ってきた私達は、すぐさま亜美にその話を伝える。
「皆のギターも無駄にならないし、最善の選択肢だね。 奈々ちゃんナイスアイデア!」
「西條先輩の案だぞー」
「奈央ちゃんなんだね」
「清水先輩が新しい楽器に手を出す前で良かったで」
「本当だよ」
まあ、亜美の場合はそれでもすぐマスターしちゃうんでしょうけど。
「そだ。 麻美ちゃん、どれくらい弾けるようになった?」
「おー! 聴いて聴いてー」
と、麻美は自分の部屋からギターとアンプを持って来て、練習中の曲を亜美に聴いてもらっている。
ジャガジャンジャガジャ
「おー。 ストロークも良くなってるね! よし、今から重奏してみよう!」
「やったー!」
どうやら亜美から合格点が出たみたいね。 いよいよ亜美と麻美が重奏するようよ。
亜美がギターを持って来て、早速準備に入る。
「ちょっと楽しみね」
「ですね。 麻美、足引っ張ったらあかんで」
「頑張るー」
「あはは。 大丈夫大丈夫。 まだ始めたばかりでここまで弾けるだけでも凄いんだから。 よし、準備出来たよ。 私はこっちのパートを演奏するから、麻美ちゃんはメインパートをお願い」
「りょーかーい!」
「じゃあいくよ」
亜美が演奏開始の合図をする。
ジャーン……
亜美の奏でるパートは低音パートのようね。 麻美の弾いているメインパートを下から支えるような力強い演奏だわ。
「重奏になったら随分とちゃう感じに聞こえるんやな……」
「そうね」
まだまだ拙い感じの麻美の演奏を、亜美が上手くフォローしながら演奏が続く。 そうして、一曲を2人で演奏しきり、麻美も亜美も満足そうな笑みを浮かべた。
「かっこよかったで麻美」
「本当、やるじゃないの」
「なはは! 我天才也!」
「すぐ、調子に乗って……」
「これが四重奏になったら、もっとかっこいい感じになるよ」
「ですね。 私も頑張って弾けるようにならんと」
「そうね」
まだコードを覚えたばかりで全く曲なんて弾けないけど、良い目標が出来たわ。 まずはこの曲を弾けるようになるところからね。
「えーと、最初はと……」
「奈々ちゃん。 そんな事より夕飯は?」
「……あ、支度しなきゃ」
「なはは! 集中し過ぎて忘れてたー」
「ほんまや。 くぅ、散歩に行くで!」
「わふーん」
ギターの練習に夢中になって、すっかり家の事を忘れていたわ。 練習する時間もしっかり決めておかないと大変な事になるわね……。
「あはは。 程々にね」
気を付けないとね……。
◆◇◆◇◆◇
風呂から上がって今日のところ家事も一段落。 私はというと、部屋でギターの動画を見ながら練習中よ。 こういうのは実際に見てやる方が私には向いてるのよ。
「なるほど……出来るだけ素早く、動きは最小限にね。 次のコードの指の形を先に作っておいて、さっと移動……」
難しいわね。 やっぱり慣れがいるわねこりゃ。 とはいえ、コツさえ掴めればそんなに難しい事じゃないかも。
「にしてもギターって意外と奥が深いのね。 色々な演奏テクニックもあるみたいだし……」
亜美は一体どれくらい弾けるのかしら? あの感じだとかなりの腕前だと思うんだけど……。
「本当、あの子は何やらせてもすぐプロ並みになるんだから……」
と、久々に愚痴を溢しながらギターの練習を続けるのだった。
◆◇◆◇◆◇
「はあ? 私達のギター四重奏チームの名前?」
「そうだよ。 やっぱりミルフィーユが良いよ」
「相変わらずスイーツな名前ー」
亜美が急に「私達のグループ名を考えたよ」と言ってきたのは翌日の事。 亜美のネーミングセンスだとこれが限界みたいね。 まあ、重ねるっていうのでミルフィーユは悪くないか。
「まあ、良いんじゃないの?」
「え? 良いの?」
「他に浮かばないー」
「そやな。 可愛らしいてええんやないですか?」
と、私達のグループ名はあっさりとミルフィーユに決まった。 亜美は「もっと反対されると思ったよ」と、意外そうに言った。 今回は亜美が色々と教えてくれてるし、それに免じただけよ。
ギター4人組のミルフィーユ結成!
「希望です。 4人での演奏楽しみだよぅ」
「まだ時間かかるわよ」




