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第1708話 成長速度

今日もさゆりちゃん達にバレーボールを教える日。

 ☆亜美視点☆


 さて、日曜日だよ。 今日もさゆりちゃん達にバレーボールを教える日だよ。 来週に練習試合が出来る事になったので、それについても連絡しないとね。


「さゆりちゃん達、喜ぶかな?」

「試合したいって言ってたし、喜ぶでしょ」

「だよね」

「でも、相手はクラブチームなんですよね?」

「うん。 月ノ木ウイングスだよ」

「勝負になるでしょうか?」


 マリアちゃんは、さゆりちゃん達と月ノ木ウイングスの選手達の力量差を気にしているようだ。 相手は4年生チームで来るとはいえ、練習してきた時間や環境を考えると、とてもじゃないが試合にはならなそうであるが……。


「十分に良い勝負になると思いますわよ」


 すぐに奈央ちゃんが答える。 そして、私もそれには首を縦に振る。 昨日、月ノ木ウイングスの練習を見ながら、さゆりちゃん達と比較してみたところ、たしかに6年生達とでは厳しそうだったけど、4年生相手なら勝負になりそうだと思った。 まあ、下級生相手に良い勝負って言われたら、それはそれでプライドに傷が付くかもしれないけど……。


「まあ、今日から一週間でどれくらい成長するかにもよるよね?」

「だなぁ。 前回で基本はある程度教えたし、それが今日とあと一週間でどこまで伸びるかだと思う」


 遥ちゃんも同意見なようだ。 さゆりちゃん達は教える毎にどんどん上手くなっているからねぇ。 あと一週間あれば結構なレベルになるのではないだろうか?


「じゃあ、体育館へ行きますわよ」

「うん」


 

 ◆◇◆◇◆◇



 町内体育館には、さゆりちゃん達が全員集まっている。 今日は練習前に、練習試合が決まった事を皆に伝えるよ。 これで今日の練習のモチベーションもアップ間違いなしである。


「皆さんにお知らせがありますわよー」

「お知らせー?」

「何でしょうか?」

「来週の日曜日、月ノ木ウイングスの4年生選抜チームとの練習試合をする事になったよ!」

「練習試合!?」

「やった!」

「本当ですか?!」

「本当だ。 昨日、向こうの監督さんと話し合って決めてきたんだ。 下級生だからって油断すんなよー? クラブチームでずっと練習してきた子達だからな」

「自分達より上手いと思って臨むべしー」

「はい!」

「じゃあ、今日は練習試合に向けて、それぞれの試合中の役割や動き方を教えていきますわよ」

(リベロ)無しの6人制ルールだから、最初は百合香ちゃん以外の6人でスタートするよ。 サーブチェンジの時にローテーションして、前衛のライトの人…点今だと優里ちゃんと、待機中の百合香ちゃんが入れ替わり。 百合香ちゃんがサーバーになるよ」

「はい!」


 ローテ毎に人が入れ替わる事になるが、7人皆が試合に出るにはこれが一番良い方法だ。


「フリーポジションルールではありますが、ある程度は役割を決めておきましょう」

「はい!」

「まず、レシーブだけど、これは一番近い人がレシーブしに行くこと」

「トスは出来るだけ(セッター)の樹里ちゃんが上げるように。 ただし、ボールが遠くて届かない時は、ボールに近い人がトスをすること。 その時は『私がいきます』ってしっかり声を出してね」

「はい!」

「スパイクは基本的にアタッカーが打つ事」

「はい」

「以上ですわよー」

「じゃあ今言った事を意識して実際にやってみよぅ」

「私らが反対のコートからボールを飛ばすさかい、3タッチ以内に返してくる事」

「出来るだけ綺麗なスパイクで返すよーにー」

「はい!」

「じゃあ始め!」


 今日は何とも本格的な練習内容になっている。 実際の試合を意識した役割分担と動きを覚える練習である。 今まではポジション毎に個人で練習だったけど、今日はチームでの練習となる。


「私が拾うー!」


 美雪ちゃんの近くにボールが飛んでいったので、美雪ちゃんが声出しをしながらレシーブに向かう。 美雪ちゃんはブロッカーの指導を受けている子だけど、レシーブの腕前はどうかな?


 パァン!


「はい!」

「ナイスレシーブだ美雪ちゃん!」


 基礎練もしっかりとやっている証拠だね。 綺麗なレシーブが上がっている。 樹里ちゃんがトスする為に、ボールの落下点に入り構える。 樹里ちゃんは奈央ちゃん直々にトスを教え込んでいる。 奈央ちゃん曰く「センス抜群」なのだそうだ。


「さゆりちゃん!」

「はい!」


 トスはさゆりちゃんに上げられた。 樹里ちゃん、もう背中側へのトスが出来るんだねぇ! さゆりちゃんもタイミングよく助走に入り、教えた通りのフォームでボールに飛びつく。


 パァン!


 腕を振り抜き、完璧なスパイクを返してきた。 


「なはは!」

「や、やるわね、あの子達」

「この前よりまた上手くなってるよぅ」

「ほんま、恐ろしい成長速度や」


 私達の想像を遥かに上回るプレーを見せたさゆりちゃん達。 これは練習試合の方も期待が高まる。


「よーし、何回でもやってみよー!」

「はい!」



 ◆◇◆◇◆◇



「お疲れ様でした!」

「はい、お疲れ様ー」


 時間までみっちりと練習したさゆりちゃん達。 最後の方は更に動きも良くなっていた。 日に日にどころか、一時一時に成長を続けているよ。


「ありゃ4年生チームじゃ相手にならないかもなぁ」

「予想以上に成長していくねぇ、さゆりちゃん達」

「これは月ノ木ウイングスのスタメン引きずり出しちゃうんじゃないの?」

「そ、それはどぅかな?」

「まあ4年生チームで試合するって決まってるし、とりあえずはそれで良いよ。 試合結果を見てまたどうするかは、あちらさんと要相談だよ」

「ですわね」


 さゆりちゃん達にはとりあえず、試合というものを経験してもらうところからだ。 試合をすれば課題が見つかり、また一つ強くなる。 基礎はもう身についているから、後は経験を積んでいくのみである。


「帰ったら前田さんに、今日の動画を見てもらおう」

「ですわね。 前田さんのデータ分析力で、今の課題とかを洗い出してもらいましょう」

「うんうん」



 ◆◇◆◇◆◇



「これはまた……この間見た時より数段レベルアップしてますよ」

「だよねぇ」

「相当自分達だけでも練習してるんでしょうね」

「そうでないと、この上達速度は説明出来ません」


 と、マリアちゃん。 見るたびに上手くなってるもんね。 これは来週の練習試合の時は、今日よりもまた数段レベルアップしてる可能性があるよ。


「ウイングスの4年生チームというのが、どのくらいのレベルかはわかりませんが、平均的な小学生高学年のレベルと比較しても遜色は無いと思いますよ。 4年生チームならあっさり勝っちゃうかもしれませんね」

「やっぱりそーかー」


 前田さんのデータ分析でもそういう結論が出たようだ。 これはスタメンチームとの試合もお願いすることになるかもしれないねぇ。 


「ま、とりあえず来週の日曜日を楽しみにしておきましょう。 と言っても、頑張るのはあの子達で、私達は見てるだけなんですが」

「まあそうだね」


 一応監督として奈央ちゃんがベンチには座る予定だけど、特に指示を出したりする予定も無いとの事。 まずは初めての試合を楽しんでもらおう。

さゆりちゃん達の成長は止まる事を知らない。


「亜美だよ。 何だか凄い子達だねぇ」

「うかうかしてられないよぅ」

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