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第1707話 練習試合を申し込もう

土曜日。 今日は月ノ木ウイングスの練習におじゃまする予定。

 ☆遥視点☆


 今日は土曜日だ。 今日の予定として、小学生のバレーボールクラブチーム、月ノ木ウイングスの見学とコーチング、そしてさゆりちゃん達と練習試合をしてほしいと打診するというのがある。 果たして、個人で遊んでいるような小学生達との練習試合を受けてくれるだろうか?


「皆で行っても仕方ないから、私、亜美ちゃん、遥の3人で行きますわよ」

(リベロ)は行かなくていいのぅ?」

「小学生バレーボールには(リベロ)は適用されてないんだよ」

「あ、そぅなんだ」

「それにフリーポジションとなっていて、ポジションの概念やローテーションが無く、全員が自由にプレー出来るんですのよ」

「だいぶ違うんですね」

「ただ、チームによっては将来を見据えて、あえてポジションを決めてローテーションをする練習をしてるとこもあるぜ。 ウイングスもそうだった」


 今も変わってないとは思うが。


「では、行ってまいりますわよ。 西小学校の体育館ですわ」

「らじゃだよ」

「おう」


 てなわけで出発だ。



 ◆◇◆◇◆◇



「ここですわね」

「懐かしいなぁ」

「昔からここでやってるの?」

「おう」

「とにかく入って監督さんに挨拶しますわよー」


 奈央に続いて体育館へ入って行く。 中では小学生達が楽しそうにバレーボールの練習をしている姿が見られる。


「凄いねぇ」

「だなー」

「監督さん、今日は無理を聞いて下さりありがとうございます」

「いえいえ! 日本代表の方々が来てくれると聞いては」

「監督、お久しぶりです」

「蒼井か? 大きくなったなぁ。 まさか日本代表とは」

「ははは」

「神崎は今日は来てないのかい?」

「紗希は今、京都の大学に通ってるんで」

「そうかそうか。 それにしても良く来てくれた。 ウチのチビ達に色々と教えてやってくれ」

「はい」

「男子と女子で分かれるんですね」

「はい。 男子16名女子20名おります」

「ふむ。 では早速コーチングをば始めていきましょう」

「一度集めます」

「お願いします」


 監督が度子供達を集める。 皆テキパキ動いていて好印象だ。


「今日はこの人達もコーチしてくれる。 自己紹介をお願いします」

「こほん。 バレーボール全日本女子代表セッターの西條奈央です」

「小さーい!」

「うぐっ」


 奈央は何とか堪えている。 我慢だぜ奈央よ。 相手は小学生なんだからな。


「同じく代表の清水亜美です」

「高く跳ぶ人ー!」

「あはは」

「同じく代表の蒼井遥だ。 私も小学生の頃はこの月ノ木ウイングスにいたんだ。 つまり皆の先輩だな」

「大きいー!」


 何て言うか素直な子達だな。 月ノ木ウイングスは現在、監督1名に各ポジション1名ずつのコーチが居るようだ。 大人4名か、大変そうだな。


「では、ポジション別に分かれて練習始め! 皆さんもポジション毎に分かれてコーチをお願いします」

「はい」


 てなわけで私はMB(ミドルブロッカー)の子達を教えに行く。 男子4人に女子6人もいるのか。


「こんにちは。 さっきも自己紹介したけど、日本代表の蒼井です。 ポジションはMB(ミドルブロッカー)なんで、今日はMB(ミドルブロッカー)の臨時コーチをしたいと思います。 よろしく」

「よろしくお願いしますー!」

「元気だね。 皆、いつもはどんな風に練習してるか見せてくれないか?」

「はい!」

「コーチ、お願いします」

「よし、順番に並んで」


 コーチに言われて、ネット前に並ぶ子供達。 ネットを挟んだ向こうには、台に乗ったコーチがボールを持って立っている。 なるほど、あそこからスパイクを打ってブロックさせる練習か。


「吉岡から順番に」

「はい!」


 一番前にいる吉岡という子がネットの前に立ち、合図を待っている。


「行くぞ」

「はい!」


 コーチの合図と共に跳び上がる吉岡という子。 両手を伸ばして、一生懸命ボールを止めようとしている。


 パァンッ!


「ナイスブロックー!」

「よし次!」


 という感じで、1人1人順番にブロックの練習を見せてくれる。 ふむ、なるほどなぁ。 皆、まだブロックの基礎が出来てない感じか。 教え甲斐あるな。


「ありがとう。 大体わかったよ。 じゃあ、お姉さんが1人1人アドバイスしていくぞ。 まず吉岡さん」

「は、はい!」

「まずは立ったままで良いから、ブロックの姿勢を取ってみよう」

「はい!」


 良い返事だ。 私の言う通り、その場に立ったままブロックの姿勢を作る。

 

 やっぱりな。 基本が出来てないんだ。


「ちょいと失礼」


 と、一言断ってから吉岡さんの身体に触って体勢を変えていく。


「この形がブロックの正しい姿勢だ。 両手は少し斜め前に出して、手のひらは目一杯開く。 手のひらの形はバレーボールを掴むような形だ。 親指と小指に力を入れる感じな」

「はい!」

「身体は少し『く』の字に曲げる」

「なるほどー!」

「これを意識して練習してみて」


 と、こんな風に気になったところを指摘しつつ、アドバイスを与えていく。 小学生の時から基礎をしっかりする事はとても大事なのだ。 まだまだいくらでも修正が出来る時期だからな。


 アドバイスの後は、皆見違える程に良くなっていた。 やっぱり小学生くらいの子供は凄い吸収力だなぁ。



 ◆◇◆◇◆◇



 一通り練習が終わった後、私達は今日の本題を監督さんに話す事にした。


「監督さん、お話よろしいでしょうか?」

「はい?」


 奈央が話を切り出す。


「実は、今私達が個人的に教えている小学生の女の子達がいるのですが、その子達に試合をさせてあげたいと思っていて」

「ふむ」

「出来ればここの子達と練習試合が出来れば良いなぁと、思うんですが……難しいでしょうか?」

「ふぅむ。 その子達はバレーボール歴はどのくらいで?」


 さゆりちゃん達がバレーボールの練習を始めたのは数ヶ月前からだ。 正直言ってまだまだ初級者の域ではある。 それを伝えてみると……。


「4年生中心のチームなら良い試合出来るでしょうかね?」

「そ、そうですね。 結構成長の早い子ではあるのですが、何せ試合経験が無いので何とも」

「ふむ。 わかりました。 では来週の日曜日に4年生中心のチームとそちらの子達で練習試合をしてみましょう」

「い、良いんですか?」

「もちろんです。 日本代表の方達が直接教えている子達との試合。 ウチの子にとっても良い経験になるはずです」

「あ、ありがとうございます! 来週の日曜日にお願いします!」


 何と、練習試合OKをしてもらえた。 さゆりちゃん達の初めての試合が決まったぞ。 明日の練習の時にさゆりちゃん達に伝える事になるな。 あの子達、喜ぶだろうな。


「それでは来週の日曜日、14時から練習試合という事でお願いします」

「はい」


 こりゃ明日の練習は皆気合い入るだろうな。 私も明日は気合いを入れて鍛えてやらないと。


「今日は臨時コーチありがとうございました!」

「皆、バレーボール頑張ってね!」

「また機会があればコーチに来ますわ」

「じゃあな!」


 今日はかなり収穫があった。 色々とやってみるもんだな。

練習試合も決まり一安心。


「遥だ。 監督も老けたなぁ」

「そりゃ10年経つもの。 ハゲもするわよん」

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