第168話 フラワーパーク
25日の土曜日は3人でお出かけすることに。
希望のリクエストで東京まで出るようだ。
☆亜美視点☆
本日は4月25日土曜日。
そう! 久し振りに私、希望ちゃん、夕ちゃんの3人で遊びに行く日だよ。
今日は希望ちゃんが、東京に出たいというリクエストをしたので、朝早くから出発している。
いつも行く市内や隣町だと、新鮮味に欠けるし良いチョイスだと思う。
「で、東京着いたらまずどうするんだ?」
「亜美ちゃん、プランは?」
希望ちゃんのリクエストなのに、何故かプランは私頼み。
そして、色々と考えてみたプランが──。
「まずはフラワーパークへ行くよ」
フラワーパーク──要するには植物園だ。
まずはそこで、綺麗な花を見て楽しもうという趣向である。
「さすが亜美ちゃん! ナイスだね!」
サムズアップで私を称える希望ちゃん。
少しは知恵を貸してほしかったものである。
「あれ? 夕ちゃんは無反応?」
「そんな事は無いぞ? さすがだなーと感心していたんだ」
「本当かなぁ?」
「おう」
んーまあ、信じよう。
「その後は、お昼を食べてからマジカルランドで遊び倒すよ!」
マジカルランド──テーマパークである。
去年のクリスマスに、夕ちゃんとデートした場所だ。
希望ちゃんとも一緒に行きたかったので、良い機会だからプランに入れてみた。
「マジカルランド! 行きたかったんだー。 ありがとう亜美ちゃん!」
「ふふふー、感謝したまへ」
「ははーっ!」
そんなやりとりを「何してるんだ、お前達は」みたいな冷めた目で、夕ちゃんに見られるのだった。
少しすると、電車がやって来たのでそれに乗り込む。
「2人は、去年マジカルランド行ったんでしょ?」
「そうだな。 クリスマスだったよな」
「そうだね。 夕ちゃんに酷く誤解されて、落ち込んでた時期だね」
「ちゃんと仲直りしただろうが」
「夕也くん、ヤキモチ焼きだからね」
希望ちゃんに言われて「そ、そんな事は無い」と、必死に否定する夕ちゃんが可笑しくて、笑ってしまった。
「でも、仲直り出来て良かったよね」
希望ちゃんがそんな事を言った。
それは確かにそうなんだけど。
「あの時、私が夕ちゃんと仲直りしてなかったら、今でも希望ちゃんと夕ちゃんは恋人同士だったかもしれないよ?」
「はぅっ!? 確かに!」
「ははは」
まあ、仲直り出来なかった世界線なんて、想像したくないけどね。
希望ちゃんも、そんな私達は見たくなかったらしく「それでも、仲直り出来た事は良い事だよ」と、言った。
電車を乗り継ぎ、私達は東京へやってきた。
いつ来ても、私達の住んでいる所と違い、都会だなぁと思う。
今日は土曜日だと言うのに、スーツを着たサラリーマン風の大人達が、忙しなく行き交う。
「で、ここから最初の目的地のフラワーパークとやらは、どうやって行くんだ?」
「うんと、バスで行けるから、そこのバス停で待機だよ」
近くのバスターミナルを指す。
私達はバス停へ向かい、時刻表と時計を確認する。
「あと3分くらいだね」
「ギリギリだな」
私達は、列に並びバスを待つ。
「どんな花があるんだろうね?」
「なんだか、四季の花々はもちろん、熱帯地域の植物なんかもあるみたいだよ」
「ジャングルみたいな感じか」
「多分ね」
見た事も無い植物なんかが見れるらしい。
楽しみだよ。
「ジャングルの植物って、人を襲ってきたりしない?」
希望ちゃんが、心配そうに訊いてくる。
な、何を言ってるのこの子……。
映画やゲームじゃないんだから、そんなのあるわけないじゃん。
「ど、どうかなー? 毒のある植物はあるだろうけど、人を襲うようなのは無いんじゃないかなー?」
「はぅ、良かった」
「亜美、優しいな」
「まぁね」
「?」
希望ちゃんは不思議そうに首を傾げて、私と夕ちゃんを交互に見やる。
ちゃんと言ってあげた方が良かったのかな?
そうこうしていると、バスがやってきた。
私達はそれに乗り、座席に座る。
「ジャングルの植物……ジャングル……ゴリラさんとかいたりしない?!」
まだ変なこと言ってるよ希望ちゃん。
「動物園じゃないんだから……いないと思うよぉ」
「だ、だよね」
「希望、お前マジか?」
「え?」
希望ちゃんはマジだった。
たまにボケボケになるんだよねぇ、この子。
そこがまた可愛いんだけども。
「まあ、気にせず楽しもうよ」
「う、うん?」
「希望……」
夕ちゃんは、希望ちゃんの天然っぷりに頭を抱えていた。
バスの中で色々と希望ちゃんに教えていると、目的の停留所に到着した。
バスを下りて歩くと、すぐそこに目的のフラワーパークがある。
「おー、広いねぇ!」
「そうだな、かなり広そうだな」
「この中にジャングルがあるんだね」
ジャングルそのものは無いと思うんだけど、まぁいっか。
私達は入場料を払って、フラワーパークの中に入っていく。
入り口付近には、春の草花が所狭しと並んでいた。
「うわわ、これは想像してたより凄い!」
「本当、凄く綺麗だね」
「これは絶景だなぁ」
黄色い菜花や撫子、芝桜などよく見かける花達が、私達を出迎えてくれている。
「ねぇねぇ亜美ちゃんあれ桃かな?」
「桃の木だねぇ。 あっちはハナミズキかなぁ」
他にも、チューリップやアネモネなんかも見えている。
私達は、色とりどりの草花や樹木に目を向けながら、ゆっくりと歩を進める。
フリージアや鈴蘭なんかもあるね。
結構な種類が網羅されていそうだ。
歩いて行くと、夏のコーナーと書かれた扉がある。
扉は二重になっており。その扉をくぐると……。
「暑っ……」
その部屋は真夏のような暑さだった。
なるほど、こうやって区画ごとに環境を操作してるんだね。
「一足早く夏を体験って感じだな」
「ヒマワリがあるよ」
さっきまで春の草花を見ていたのに、今目の前にあるのはヒマワリやユリといった夏の草花である。
クチナシやナツツバキなんかも立っているよ。
「亜美って植物にも詳しいな」
「勉強熱心だよね、亜美ちゃん」
「何でも知りたいんだよねぇ」
私は知識欲が旺盛なのである。
知らない事を知りたいという気持ちから、色んなを事を調べたりして知識を得ているのだ。
「亜美ちゃんって凄いよね」
「あはは」
私達は夏エリアをゆっくり歩きながら、景色を楽しむ。
でも夏エリアは熱いからさくっと抜けたいところだね。
この次は秋エリア。
やはりというか、二重扉がある。
そして、間の部屋には防寒着が置いてあった。
なるほど、この先のエリアは寒くなっていくからってことだね。
私達は防寒着を手に取って、秋のエリアへと入っていった。
「うわわ」
「これはまた……」
「秋の景色だよぅ」
さっきの春夏の草花達はカラフルだったけど、秋はモミジやイチョウといった紅葉がメインのようだ。
しかしちゃんと、コスモスやホトトギス、クジャクソウといった秋の花々も咲いている。
春に紅葉が見れるなんて思っていなかったよ。
凄い技術だよこれは。
「綺麗だねぇ」
足下には落ち葉の絨毯が敷き詰められている。
鮮やかだ。
「さて、次は冬エリアだねぇ」
二重扉の間の部屋で防寒着を着用して、いざ冬のエリアへ。
「寒っ」
「はぅー……」
「結構寒いじゃねぇかチクショー」
室温計を見てみると3℃になっていた。
ふぇー。
「亜美ちゃーん、この花何ー?」
「んー、シクラメンだねぇ」
こんなに寒くても、冬の花は力強く咲いているのだ。
自然って凄いなーと思う。
クリスマスローズやパンジーなんかも咲いている。
「亜美ちゃんこれはー?」
「デンドロビウムだねぇ。 2月ぐらいの花かなー?」
「へぇ……どの季節の花も綺麗だよね」
「そうだね」
「この先は世界の草花だってよ」
「おおー、ジャングルだね」
この先は私も知らない植物とかが一杯あるに違いない。
とても楽しみだよ。
フラワーパークでは季節ごとの草花を楽しんだ3人。
次は世界の草花エリア。
「遥だよ。 フラワーパークもいいねぇ。 な、何? 私が花を愛でるのがおかしいか?! わ、私だって女の子だぞ……わ、私の女の子っぽいエピソードはまだ無いの?」