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第1704話 後継者

幾分静かになった「皆の家」。

 ☆亜美視点☆


 正月が終わり紗希ちゃんや弥生ちゃん達はまた帰ってしまった。 幾分静かになったとは言え、まだまだ賑やかな「皆の家」。


 ジャンジャンジャガジャン……


 麻美ちゃんは昨日買って来たギターを練習し続けている。 簡単なコードはもうある程度覚えたらしく、今は昨日教えたSunriseの飛行機雲という曲の練習を始めている。


「1日でここまで出来るようになるもんなんやな」


 と、渚ちゃんも感心しているが、これはかなり上達が早いと思う。 私でも始めて1日ではここまでは弾けなかったからね。


「凄いよ麻美ちゃん」

「ギターの才能はあるみたいね」

「なはは」

「歌もそれぐらい早く上達すれば文句無しですわね」

「が、頑張るー」


 麻美ちゃんが頑張り屋さんなのは私達皆が知っている。 だからすぐに歌も上手くなるはずだよ。


「そう言えば、皆は何か楽器出来るの?」

「私はピアノ、バイオリン、フルートぐらいなら出来ますわよ」

「私ゃリコーダーだけだなぁ」

「右に同じくね」


 と、奈央ちゃん意外は大体そんな感じで、希望ちゃんがピアノを弾けるぐらいかな?


「マリアちゃんは?」

「私ですか? お琴ですかね」

「おお……お琴やってたんだ?」

「小学生の頃に少々」


 中々珍しい習い事をしていたみたいである。 私もお琴はやった事がないよ。


「まあ、楽器なんか出来なくても困らないわよ」

「私はピアノが出来ないと困るから練習してるよぅ」

「幼稚園の先生になるなら弾けた方が良いですものね」

「たしかに、お歌の時間にピアノが弾けないとね」

「雪村先輩はピアノお上手ですから大丈夫ですよ」


 マリアちゃんからも高評価を受けている希望ちゃんのピアノ。 幼稚園のお歌の時間に弾くぐらいならもう十分なレベルに達している。


「でも、亜美ちゃんや奈央ちゃん、あと紗希ちゃんの方がピアノは上手だよぅ」

「まあ、その3人とは比べても仕方ないさ」

「ぅん」


 楽器の話は一区切りし、麻美ちゃんもギターの練習から歌のトレーニングに移行している。 本当によく頑張る子である。 しかし、常に裏声は辛くないのだろうか?


「なははー」

「裏声で笑うのやめーや」

「トレーニングだよー」


 姫百合さん曰く、喉頭の筋力が弱い事から来る音程コントロール難が、麻美ちゃんが上手く歌えない原因だろうという。 しかし、普段からあれだけ爆笑したり騒いだりしてる事の喉頭が筋力不足なんて事、あるんだろうか? まあ、私もそれ程詳しいわけじゃないし、プロの意見だから間違いではないとは思うけど。


「大体さー、どうしてお姉ちゃんはあんなに歌が上手いのさー? トレーニングだってした事無いよねー?」

「いちいち裏声で話しかけないでよ……。 まあ、とはいえたしかに、トレーニングなんかした事無いわね。 まあ、よく1人で歌ったりはしてたから、それがトレーニングになってたのかもしれないけど」

「1人で歌うとか、寂しいですわね」

「いや、普通でしょ? お風呂とかで歌わない?」

「あんまり?」


 私もあんまりだねぇ。 まあ、鼻歌ぐらいならたまに出るけど。


「でも、歌うっていうのはやっぱり一番良いトレーニングになりそうですよね」

「裏声で歌えば効果アップかなー? ぼぇー」

「やめぃ」

「あんたはまだその域に達してないわよ……」

「ぶーっ!」


 まだまともに音程が取れない麻美ちゃんには、取り入れるには早いようだ。



 ◆◇◆◇◆◇



 夕方になると、またギターを触り始める麻美ちゃん。 昨日からずっとこの調子である。


「ギターの方は順調に上手くなっとるな」

「なはは。 わかってくると楽しいー」


 私もギターを買った頃はそうだったなぁ。 皆には内緒でこっそりとやってたんだけどね。 休みにはライブハウスに通い詰めてたっけ。


「麻美はまた何でギターやりたなったんや?」

「亜美姉が弾いてるのを見てかっこいいと思ったからー」

「私、かっこよかったのかな?」

「そりゃもう、かっこよかったさ」


 と、遥ちゃんもそう言ってくれる。 自分ではわからないけど、人からそう言われるのは嬉しい。 麻美ちゃんもその内、かっこよく弾語りとかするところを見せてくれるだろうか?


 ジャガジャン……


「ぼぇー」

「だから歌うなってのよ……」

「あ、あはは……」


 まだ時間はかかりそうである。



 ◆◇◆◇◆◇



「明日は小学生にまたバレーボール教えるんでしたっけ?」


 夕食の時間。 前田さんからそう訊ねられる。


「その予定ですわよ」

「そうなんですね。 私も明日は定休日だし、データを取りに見に行きます」

「小学生のデータも取るんですか?」

「取れるデータは何でも取りますよ? 小学生なんかは伸び盛りですから、常に新しいデータを取っていかないと」

「たしかに伸びるよなぁ、あの子達」

「最初の頃からは見違えましたよね」

「本当、子供とは末恐ろしいですわ」

「奈央は小学生の頃から伸びてねーもんなー」

「身長の話はしてないですわよ?!」

「なはは!」


 私達が教えている子達は、本当に向上心もあり練習熱心だ。 宿題を出すと、それ以上の事をやって来るぐらいである。


「練習試合とか組めたら良いんだけど」

「まだ始めたばかりだろ? 早いんじゃないのか?」


 と、夕ちゃんが言う事もごもっとも。 まだ基礎を教えただけに過ぎない子達には、まだ試合は早いかもしれない。


「まあ、もうちょっとレベルアップしてからですわね」

「そうだね。 良いレベルの相手を探すのも大変だし」

「そうねー。 小学生だとそもそもバレーボール未経験の子が大半だろうし、逆に経験者ってなるとクラブチームに入ってるような子だろうし」

「だなー。 私と紗希はクラブチームだったしな。 そんな子達が相手となると、さゆりちゃん達にはまだ厳しいと思う」

「うん」


 さゆりちゃん達に試合を経験させるのは、もう少し上手くなってからという結論に至ったよ。


「ちなみにクラブチームってこの辺だと何処になるんですか?」

「この辺だと私や紗希がいた、月ノ木ウイングスじゃないか?」

「ですわね」

「なるほど。 どれぐらいのレベルか見に行くのも良いんじゃないですか?」

「まあたしかに。 さゆりちゃん達とどれくらい差があるのか、さゆりちゃん達がどのレベルを目指せば良いのかの指標にはなりますわね」

「じゃあ今度偵察に行くかー? 練習は毎週土日にやってたはずだ」

「機会を見て行ってみましょ」


 何だか話がどんどん凄い方に進んでるような? 私達はさゆりちゃん達をどうしたいのだろうか?


「あの子達をどうしたいか?」

「決まってますわよ。 私達の月学最強伝説の後継者になってもらいますわよー」

「な、何だかなぁ」

「あの子達の意志に関係無く……」


 さすがに私達が勝手に盛り上がっているだけだよねぇ。 あの子達はただ、楽しくバレーボールを出来たらそれで良いと思っているかもしれないし。


「ま、バレーボールは続けて欲しいよな」

「それはまあ、そうね」


 その為には、バレーボールの楽しさを目一杯伝えていかないとね。 明日はどんな事を教えようかな?

さゆりちゃん達は亜美達の後継者に?


「希望です。 こ、後継者って」

「あはは……」

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