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第1703話 麻美は努力する

ギターを買って帰って来た麻美。 

 ☆亜美視点☆


 先程、麻美ちゃんのギターやアンプを買って帰って来た私達。 麻美ちゃんにアンプの使い方を説明した後は、早速基本の練習から始めている。


「うむむむ」

「何だか思ったより難しそうなのね?」

「なんかコードっていうのを覚えないとー」

「色々なコードがあるからね」

「亜美姉こんなの出来るの凄いー」

「本当、器用よね」

「練習して慣れてくれば普通に出来るようになるよ」


 私も最初の頃は中々上手くコードチェンジ出来なかったりしたけど、練習してるうちにいつの間にか出来るようになっていた。


「麻美の場合は歌も練習せなあかんやろ」

「私、そんなに下手かー?」

「自分ではわからないだろうけど、まあ中々にアレよ?」


 紗希ちゃんは下手だとは言わない。 ちゃんと優しいのである。 奈々ちゃんはズバッと言っちゃうのが良くないよね。


「歌って、どうやって上手くなるのー?」

「藍沢妹の場合、リズム感はええんやけど音程がぐちゃぐちゃやねんな」

「音程?」

「カエルの合唱歌ってみなよ麻美っち」

「なはは! そんな簡単な歌楽勝ー! ぼぇぼぇぼぇー」


 これはまた盛大に音を外している。 弥生ちゃんが言う通り、リズム感はバッチリなんだけど音程がめちゃくちゃだよ。


「ぼぇぼぇぼぇぼぇぼぼぼぇー! どうだー!」

「0点」

「なぬー?!」


 麻美ちゃん自身はとても上手く歌えたと思っているんだろうけど、残念ながら何の歌か判別不可能な程に音痴である。


「これ聞いてみて」


 宮下さんがスマホを操作して動画を流し始める。 さっきの麻美ちゃんのカエルの合唱を歌っているシーンである。


「……何だこの下手くそな歌はー! 誰だー!?」

「麻美っちだけど……」

「今さっき歌ったやつや」

「私こんな下手くそなのかー?!」


 ついに自覚したらしい。 麻美ちゃん、またショックを受けたりしないだろうか?


「ま、まさかこんなのだったとはー。 ある意味趣きがあって良いのではー?」

「良くないですわよ……」

「なは」

「麻美ちゃんの場合は多分、音程を合わせるって言うのが苦手なんだと思うよ。 頭ではどんな音程かわかっていても、その音程を上手くコントロールして出せないんじゃないかな?」

「そういうもんなのか?」

「まあ、音痴にも色々とあると思うけど、麻美ちゃんは典型的な音程音痴だと思うよ」


 私もそこまで詳しい事は知らないんだけど。 こういう事は歌を本職にしている人にアドバイスを貰うのが一番だという事で、奈々ちゃんから姫百合さんに連絡を取ってもらう。


「はい。 姫百合です」

「藍沢ですけど、今大丈夫かしら?」

「大丈夫。 お正月はお休みもらってるから。 どうしたの?」

「実はね……」


 奈々ちゃんが事の次第を説明し、何か良いトレーニング法は無いかと訊ねる。 すると……。


「裏声を出すトレーニングが良いって聞いた事ありますよ」

「裏声?」

「うん。 音程コントロールが苦手な人って、喉頭の筋力が弱い人が多いらしいのね。 それを鍛える手段として、裏声を出すっていうのが良いんだって。 裏声を出すのが一番喉の運動量が多いって話です」

「なるほど、わかったわ。 ありがとう姫百合さん」

「いえいえ。 妹さん、歌が上手くなると良いね」

「なはは! 頑張るー」


 姫百合さんとの通話を終えた後、麻美ちゃんはギターのコード練習をしながら裏声で発声するトレーニングも始めた。 努力家な麻美ちゃんの事だから、ギターも歌も、きっとすぐに上手くなるに違いない。


「あまり無理して喉潰さないようにしなさいよ」

「りょーかーい」


 その返事も裏声なのであった。



 ◆◇◆◇◆◇



 夕食後の入浴時間だよ。 麻美ちゃんと奈々ちゃん、それに紗希ちゃん、遥ちゃんが一緒だ。


「麻美、お風呂でもコードを覚えようとしてんの?」

「うむー」

「熱心だなぁ。 まあ、そこが麻美の良いとこでもあるんだが」


 麻美ちゃんはギターを持っていなくても、左手の指を動かしながら、コードを覚えようとしている。 ちなみに裏声トレーニングは今日は終了したようだ。


「亜美姉ー。 初心者向けの曲って何かあるー?」

「んん。 そだねぇ、色々あるけど、コード進行がそこまで難しくないので言えば、Sunriseの飛行機雲かなぁ」

「おー! Sunriseの飛行機雲好きー! 弾けるようになりたいぞー」

「うんうん。 弾けるようになったら一緒に弾こうね」

「やったー! ぼぇーぼぇー」

「歌うな!」


 つい歌ってしまい、奈々ちゃんに怒られる麻美ちゃんであった。 手が出なかっただけマシだねぇ。



 ◆◇◆◇◆◇



 入浴を終えてリビングへ戻ると、麻美ちゃんはすぐさまギターを持って再び練習を始めた。


「根を詰め過ぎるんはあんさんの悪い癖やで、藍沢妹」


 そんな麻美ちゃんを見て、弥生ちゃんが一言。 たしかに麻美ちゃんは、一つの事に集中し始めると棍を詰めすぎる癖がある。 限界になるまで続けちゃうんだよね。


「なはは。 たしかにー。 今日はこれぐらいにするー」

「珍しく人の言う事素直に聞いたわね?」

「私だって人の言う事聞くー」


 ギターケースにギターを片付けて、大事そうに抱える麻美ちゃん。 何だかんだ、ギターを好きになってくれたようで良かったよ。 早く麻美ちゃんとセッションしたいものである。


「さて。 ウチらは明日の昼には東京戻るさかい、帰り支度しとこか」

「そねー」

「はい」


 東京組は明日の昼まで滞在予定。 次に会うのはゴールデンウィークになるのかなぁ? それとももしかしたら……。


「可憐ちゃんは置いていきなさいよ?」

「嫌だけど?! 愛娘もちゃんと連れて帰るに決まってるでしょ?!」

「当たり前だ」


 奈々ちゃんがめちゃくちゃな事を言ったもんだから、宮下さんと三山君も鋭くツッコミを入れている。 宮下さんは本当に、ちゃんとした母親になっているようだ。 子供が産まれる前は随分と心配したもんだよ。


「ほな、また明日」

「えー、宴会はー?」

「明日帰る言うたやろ?! っちゅうか、紗希達も明日京都戻るんやろ?」

「そよー。 まあ、支度は済んでるから問題無いわ」

「私も大丈夫です」


 紗希ちゃんと青砥さんは昼のうちに済ませたみたい。 皆が戻ってしまうと、また寂しくなるねぇ。


「武下君もまた来てね」

「都合が合えば是非」


 弥生ちゃんの彼氏さんとなった武下君との交流も始まり、ますます賑やかさを増す私達。 この先どうなっていくやらだよ。



 ◆◇◆◇◆◇



 翌日だよ。 


「ほな、また」

「次は花見かゴールデンウィークかしらね?」

「いえ。 多分私と春人君の結婚式になりますわよー」

「結婚式?!」

「ええ。 何かおかしな事でも? 3月下旬には籍も入ってもらって、式も挙げますわよ?」


 やはりだよ! 奈央ちゃんは入籍と挙式を同時にするつもりだよ! 奈央ちゃんならもしかしてと思ってたけど。


「4月とかじゃなくて?」

「4月とか6月も考えたけど、まあ早めに終わらせておこうかって話し合いで決めたのよ」

「そうですね」

「というわけで、近い内に招待状も出すからよろしく」


 奈央ちゃんと春くんの結婚式かぁ。 楽しみだねぇ。

練習を頑張る麻美。 ギターも歌も上手くなれ。


「奈々美よ。 麻美は本当、集中すると凄いわよ」

「うんうん。 きっとすぐ上達するよ」

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