第1699話 顔面墨まみれ
新春羽根突き大会中の亜美達だが。
☆亜美視点☆
突如勃発した新春羽根突き大会。 5チームに分かれてのトーナメント戦を進めているよ。
1試合目は奈央ちゃん紗希ちゃんペア対奈々ちゃん宏ちゃんペアである。 得点が入る度に顔に墨入れしている為、既に4人とも顔が墨まみれだ。 これ、勝ち上がった方がリスキーなのでは?
「おりゃあ」
「のわっ?!」
「ゲームアンドマッチ! ウォンバイ奈央ちゃん、紗希ちゃんペア!」
1試合目の決着である。 惜しくも奈々ちゃんと宏ちゃんペアは敗退。 最後にも顔に落書きされてしまうのだった。
「きゃはは!」
「ぷふふっ」
「な、何よ」
「顔にブスって書かれてるよ」
「紗希ね?!」
「きゃはは!」
ちなみに紗希ちゃんの顔には痴女って書かれているよ。 奈々ちゃんが書いたみたいだ。 お互い好き放題やってるねぇ。
「よっしゃ! 次や次! 亜美ちゃん! 勝負や!」
「しょうぶヤ!」
はぁ……私は弥生ちゃんとキャミィさんのペアと対戦だよ。 私は羽根突き経験者だけど、夕ちゃんは多分やった事ないよねぇ。
「夕ちゃん。 点を取られたら顔に落書きされるから、出来るだけ点を取られないように頑張るよ」
「おう」
と、私も夕ちゃんも気合いを入れてはみたものの。
「おりゃ!」
コンッ!
「ぬあっ?!」
弥生ちゃんのスマッシュに夕ちゃんがついていけず、早速失点するのであった。
「だはははは! 亜美ちゃん、大人しいしとりやぁ」
「ユウちゃんカクゴー」
「うぅっ……夕ちゃんのせいだよ」
「いや、あれは無理だっつーの」
「無理じゃないよ。 頑張って拾うんだよ」
「よっしゃ。 最初はこれで勘弁したる」
「カンベンしたるー」
「夕ちゃん。 反撃だよ」
「任せろ!」
弥生ちゃんのサーブで試合再開だよ。
コンッ!
「こうか!」
コンッ!
夕ちゃんが何とか拾ってくれたので、私がスマッシュを打つよ。
「てやややや!」
コンッ!
「ウギャ」
私のスマッシュが決まり1ー1になった。 もちろん、弥生ちゃん達の顔に隅で落書きするよ。
「書き書き」
「悪いなキャミィさん」
「ワハハ。 キにせんでエエ」
よしよし。 おでこに肉って書いたよ。 定番だよ。
「よし亜美このままいくぞ」
「うん。 出来るだけ点を取られないようにするよ!」
これ以上落書きされては堪ったものじゃないからね。
◆◇◆◇◆◇
「てやや!」
コンッ!
「くっ?!」
スマッシュを何とか決めて試合終了。 7-4で何とか勝ったよ。 4点も取られたよ。 つまり、4回も落書きされたんだよ。
「負けてもうた」
「ワハハ。 まけター」
「まあ、それなりに楽しめたしええか」
「ショウガツのアソビおもろいナ!」
ここまで来ると、正月に遊ぶ羽根突きとは違うような気もするよ。 楽しいといえば楽しいけど。
「じゃあ、そのまま亜美と夕也ペアと、シード枠のマリアとミアペアの試合しましょ」
「らじゃだよ」
「連戦か」
次はマリアちゃんとミアさんか。 これまた打倒私を掲げる人達との試合だよ。 しかしマリアちゃんもミアちゃんも、私への憧れや尊敬の念も持っている。 純粋に私に勝つ事しか考えていない弥生ちゃんや奈央ちゃん、奈々ちゃんとはまた別だ。
「やりまス」
「先輩、覚悟」
「あはは……」
「俺ってただ巻き込まれてるだけなんじゃないか?」
「あはは。 もうちょっと付き合ってねぇ」
というわけで2回戦もやっていくよ。 ミアさんは当然初めての羽根突きだし、マリアちゃんもやった事は無いらしい。 今はやっぱりこういった遊びをやる子供は少ないのだろう。
「なはは、試合開始ぃぃー!」
「いきまス」
まずはミアさんのサーブから。 構えがバドミントンのサーブのような構えだ。 羽根突きは初めてだけどバドミントンならって感じなんだろうか?
「はい!」
ミアさんのサーブは大きく弧を描き、ネットを越えてくる。 これなら私がワンタッチで返せる。
「てやや」
山なりに飛んできた羽根を下から打ち上げるように返す。
「狙い通りです」
「うわわ、読まれてる?!」
私が返した甘い攻撃にマリアちゃんは飛びつく。 完全に狙われていたようだ。
「はっ!」
コンッ!
「夕ちゃん!」
「いや、無理だが?」
マリアちゃんのスマッシュに夕ちゃんは当然棒立ち。 さ、さすがに無理かぁ。
「よし、やりました」
「ナイスでス!」
あちらのコートではマリアちゃんとミアさんがハイタッチを交わしている。 むぅ。
「さあ、落書きです」
「でス」
何だか2人とも楽しそうだよ。 マリアちゃんが私の前で筆を持ってちょっとニヤリとしている。 マ、マリアちゃんのこんな顔初めて見るよ。
「失礼します」
と、謝りながらも落書きする筆さばきには遠慮が無いようだ。
「出来ました」
「ま、満足そうだね……」
「まだまだです。 この後ももっと落書きさせてもらいます」
「む、むぅ」
「できましタ」
「お、おう」
ミアさんも夕ちゃんへの落書きが終わったみたいだ。 右頬に星マークが増えている。 控え目である。
「夕ちゃん、頑張ろう」
「うむ」
にしても、夕ちゃんの顔もかなり墨まみれになってるね。 私もあんな感じなんだろうか?
「いきますよ」
今度はマリアちゃんのサーブ。 やはりバドミントンサーブの構えだ。 マリアちゃんもバドミントン出来るっぽいね。
コンッ!
「夕ちゃん」
「よっ」
夕ちゃんはあえてワンタッチで返さず私にトスでもするように高く羽根を打ち上げる。
「ナイスだよ! てややー!」
高く跳び上がりスマッシュを打つ。 さすがのマリアちゃんとミアさんも反応は出来ずに私達の得点になる。
「ふっふっふ。 マリアちゃんの綺麗な顔に墨で落書きするよ」
「くっ……」
とはいえ、私は優しいので右頬に×マークを書くだけにするよ。 まあ、まだ1回目だしね。
「ミアさんすまんな」
「仕方ないでス」
夕ちゃんもミアさんの目の周りに○を書いて終わりにしている。 夕ちゃんも優しいね。
「さて、続けるよ」
「サーブいくぜ」
◆◇◆◇◆◇
「ゲームアンドマッチ! ウォンバイ亜美姉夕也兄ぃペア!」
「か、勝ったけど6点取られたよ。 おかげで顔はもう真っ黒だよ」
「なははは!」
「まだまだ書けますわよー」
「そよ。 ちょっと休憩したら決勝やるわよん」
「だねぇ」
結局決勝まで残ってしまったよ。 しかも私達が一番沢山試合してるから、一番落書きされてしまったよ。 一番損してるよ。
「亜美姉の顔酷いことになってるー」
「本当、弥生の恨みが特に凄いわ」
「……そうなの?」
一体何を書かれているのだろうか。 気になるよ。
さて。 しばらく休憩という事で座って休む事に。
「みゃみゃっ?!」
「ん? マロンどしたの?」
「みゃみゃみゃ」
どうやら顔面墨だらけの私を見てびっくりしているみたいだ。 早く終わらせて顔を洗わないとねぇ。
ここまでで顔面は墨まみれに。
「奈央ですわ。 まあこれはこれで楽しいですわよ」
「そだねぇ」




