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第161話 賑やかな食事

希望との買い物から帰ってくると、何故か家の中からは賑やかな声が聞こえてくる。

 ☆夕也視点☆


 希望と2人で、亜美の誕生日プレゼントを買って帰ってくると、何故か我が家から賑やかな声が聞こえてきた。


「……人の家をたかり場にしやがって」

「ま、まあまあ……」


 希望が苦笑いしながらも、俺を宥める。

 声のするリビングの方へ向かうと、5人も客がいた。 賑やかなはずだ。


「あ、夕ちゃんおかえり」

「おじゃましてます」


 そう言ってきたのは、たしか弥生ちゃんの妹さん……渚ちゃんだったか?


「お、おう」

「おかえり。 急に亜美から夕飯に誘われてね」

「あー、そうか」


 一体何を考えているんだか。

 麻美ちゃんと宏太まで来てるし。


「で、今日の晩飯は何にするんだ?」

「んー、大勢で食べるなら、すき焼きかなと」

「すき焼き!」


 麻美ちゃんが目を輝かせている。

 美味いもんな、すき焼き。


「なあ、すき焼きの具材なんだが……」

「心配ご無用だよ。 途中で買い出しも済ませてきたから」


 本当に抜け目ないというか。

 まあ、そういうことならあとは亜美に任せるか。

 俺は一旦自室に戻り、部屋着に着替えてリビングへ戻る。

 リビングでは、皆でテレビを視ながらあーでもないこーでもないと談笑していた。

 最近俺の家を、集会所か何かと勘違いしてるんじゃないかと思う。


「次のニュースです。 バレーボール女子日本ユースが、先日強化合宿を行い、大学生と練習試合を行いました」


 ほう……。

 画面には、亜美達ユースメンバーが映し出されている。


「はぅ……」

「凄いなぁ、お姉ちゃん達」

「……」


 んー? 渚ちゃんの目に闘志が篭ってるな。

 弥生ちゃんへのライバル心でも燃やしてるんだろうか?

 姉妹だし、色々あるんだろうな。


「ユースの小林監督は『歴代最強のメンバーです。 期待してて下さい』と、自信満々に語ったという事です」

「あはは、本当に言ったんだねぇ」

「あの監督、どんどんハードル上げくれるわね」

「そだね」


 それだけ期待されているという事なのだろう。

 こいつらなら、本当に世界を取ってしまうんじゃないかと思わせてくれる。


「私達の先輩、本当に凄いんだなぁ」

「そやね」

「あはは……」


 9月が本番だったか? 俺も楽しみになってきた。

 バレーボールのニュースが終わると、亜美が「んしょっ」と、おばさんみたいな掛け声とともにゆっくりと立ち上がる。


「希望ちゃん、すき焼きの準備始めよ?」

「あ、はいー」


 希望はそれを聞いて立ち上がり、2人でキッチンの方へ向かっていった。

 それを見て、渚ちゃんが気にするように訊いてきた。


「あの私、手伝わんでいいんでしょうか?」

「いいのいいの。 ここはあの2人任せておけば」


 奈々美は、もう当たり前のようにテレビのチャンネルを回しながらそう答えた。

 渚ちゃんは苦笑いしながら、少し申し訳なさそうに座るのだった。

 この辺はお姉さんの弥生ちゃんと違って、奥ゆかしいとこがあるみたいだ。

 お姉さんは、初対面でも遠慮無しだったからなぁ。


「夕也兄ぃ!」

「んあ?」


 急に麻美ちゃんから声を掛けられて、変な反応をしてしまう。

 宏太はバカにしたように笑い転げている。


「夕也兄ぃの部屋見たいな!」

「ん? 俺の部屋なんて、見るもんないぞ?」

「久し振りに来たんだし良いじゃーん!」


 全く、この子は強引だな。

 元気で昔からよく振り回されたりもした。

 小さい頃は「夕也兄ぃのお嫁さんになってあげる」みたいなことも言ってたっけか?

 今でも懐いているけど、お兄ちゃん感覚なのかもしれないな。


「こら麻美、夕也が困ってるでしょ」

「いや、いいよ。 ちょっとぐらいなら」

「やった!」

「はぁ、あんたは本当に甘いんだから……麻美の事襲っちゃだめよー?」

「襲うわけないだろうが」


 ったく、何を言ってるんだこいつは。

 俺と麻美ちゃんだぞ。


「じゃあ行くか」

「うんうん! レッツゴー!」


 俺は、元気な麻美ちゃんを引き連れて自分の部屋へ向かった。


 ガチャッ


「ほれ、ここが俺の部屋……って、昔はよく入ってたよな」

「うんうん。 あんまり変わってないなー」


 多少模様替えなどはしてある、というか希望が勝手にやってたりするのだが。

 麻美ちゃんは、俺の後ろから部屋に入って来て、あちこち物色を始める。


「おお? この写真何? 亜美姉がウェディングドレス着てるけど!?」


 それは、俺と亜美のウェディング体験の時の写真である。

 奈々美から聞いたりしてないんだろうか?


「うわー、綺麗だね亜美姉。 それにすごく幸せそう」

「だよな」


 この写真の亜美の表情は、今まで見てきたあいつの表情の中で一番幸せそうだ。

 本人も、人生で一番幸せな1日だったと言っているほどだ。


「で、これは何? 結婚式でも挙げたの?」

「ウェディング体験ってやつだ」

「へぇ! 憧れるなぁ! 夕也兄ぃの隣でこんなドレス着てみたいなー」


 何か言っている麻美ちゃんを見てみると、既に妄想の世界へと入り込んでしまったようで「うぇひひ」と、気味の悪い声を出していた。


「麻美ちゃん。 帰って来い」

「はっ、子供4人目」


 どこまで妄想してるんだよ……てか4人も産んでるのか妄想世界の麻美ちゃん。

 一通り部屋を見終えて、リビングへ戻ると丁度すき焼きの準備が出来たところのようだった。

 ダイニングでは人数分の椅子が無いので、今日はリビングで食事だ。


「あ、戻って来たわね」

「もうちょっとで呼びに行くところだったよ」

「亜美姉のウエディングドレス姿見せてもらったよ!」

「ん? あーあれか。 恥ずかしいなぁ」

「ウエディングドレス? 清水先輩結婚してはるんですか?」


 ここにきてというか、渚ちゃんもだいぶ慣れてきたのか、話し方が幾分フランクになってきたようだ。


「してないよぉ?!」

「ウェディング体験したんだって」

「あー、なるほど」


 亜美は、そう答えがら

 まずはすき焼き用の肉を鍋に入れていく。

 すき焼きの割り下を少し加えながら、まずは肉だけで頂く。


「うむうむ。 美味い」

「安物の肉だよ? 割り下は自作だけど」

「んん、じゃあ割り下が美味しいのよ」


 亜美は「そうかなー?」と言いながら。もぐもぐとお肉を頬張る。

 鍋の肉が無くなると、本格的にすき焼きを開始。

 肉を入れて、他の具材も順番に投入していく。


「清水先輩って料理上手なんですね。 私は苦手ですねん」

「私も苦手!」


 1年生コンビは、どうやら料理が苦手らしい。


「麻美ちゃんは奈々美に教えてもらえばよくないか?」


 宏太のその言葉に、麻美ちゃんが首を横に振りながら──。


「いやー、お姉ちゃん料理は上手だけど教えるのが下手なの」

「うっさいわねー」


 多分、一度教えてもらった事でもあるのだろう。


「ねえ、亜美姉今度教えてー!」

「うーん、いいよー。 いつでもおいでー」

「やた!」

「私もええですか?」

「どぞどぞ」

「わ、私も」


 何故か希望も手を上げる。

 希望も中学生に上がった頃に、亜美から教えてもらった経緯がある。

 十分上手いと思うのだが、まだ精進し足りないという事なのだろうか。


「ええい、まとめて面倒見てあげよう!」


 亜美は、胸をポンと叩いてそう言った。

 そして、とんでもないことを言い出すのだった。


「じゃあ、明日から放課後は麻美ちゃんも渚ちゃんも、ここに集合ね! 一緒に夕飯作りながら教えるよぉ!」

「おー!」


 俺はすき焼きを突きながら、明日から食卓がにぎやかになりそうだと思うのだった。

賑やかな食卓を囲む夕也達。

これからはちょくちょく、料理を教わりに後輩達が来るようだ。


「紗希だよー。 料理はやってなんぼだよねー。 私もお母さんに教えてもらったりしたわ。 神崎家秘伝のだし巻き玉子は絶品よ!」

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