第153話 ユースチームVS大学生
ユースメンバーに選ばれた亜美達はスタメンととして大学生チームと対戦。
☆亜美視点☆
強化合宿も最終日。
私達は、ユースのメンバーに選ばれて、今日は大学生チャンピオンとの試合にスタメン出場する。
軽くウォームアップを済ませると、大学生の人達も体育館へやってきて、ウォームアップを始めた。
「ふぅん……あれが大学生チャンピオンね」
「身長高い人ばかりですわね」
遠目に見てもわかるぐらい、長身の選手ばかりだ。
身長の高い方が有利なスポーツではあるけど、私はこの身長でも困った事は無い。
「でかけりゃええってもんやないで」
「そうそう」
弥生ちゃんと宮下さんの言う通りだ。
身長だけで勝てるならスポーツなら、私達月学は全国優勝なんか出来てないよ。
「それじゃあ、大学生チャンピオンを驚かせて差し上げましょう」
私達は円陣を組み、気合いを入れた。
◆◇◆◇◆◇
試合開始
ルールは1セットマッチの短期戦
その他は公式ルールを採用。
私達のフォーメーションは、レフト前衛に弥生ちゃん、後衛に奈々ちゃん、センター前衛に曽木さん、後衛に希望ちゃん、ライト前衛が私で後ろに奈央ちゃんでスタートだよ。
大学生チームのサーブ。
全く情報が無いから、どういうプレーヤーなのかわかんないよ。
ボールを上げて助走に入る。
そのままジャンプサーブを打ってきた。
「任せて!」
希望ちゃんが声を出して、ボールを拾う。
相変わらず綺麗なレシーブだ。
弥生ちゃんが助走に入ったのを見て、一瞬遅らせて私も助走に入る。
奈央ちゃんは、チラッとコート内を確認し、舌舐めずりした後ジャンプトスを上げる。
弥生ちゃんが跳び上がり、スパイクしようとするも、空振り。
でも、その後ろから奈々ちゃんが時間差で跳び上がり、バックアタックを放つ。
奈々ちゃんの攻撃は、相手のブロックを物ともせずに突き抜けて、ブロックアウトを取る。
「っし! まずは挨拶!」
「ナイス藍沢さん!」
最高のスタートである。
ローテーションして、私のサーブ。
私も、ちゃんと挨拶しないとね。
「ナイサー亜美ちゃん!」
助走に入り、ジャンプサーブをお返しする。
私の得意な、針の穴を通すコントロールのサーブで、相手コートのライン上を狙う。
「アウト!」
ピッ!
残念ながら、ラインズマンはインの判定。
しっかりライン上に接地している。
「相変わらずえげつないサーブやなそれ」
弥生ちゃんが、振り向いて私に言う。
「あはは……」
今度は、セッターを狙い打ったサーブを放つ。
目論見通りに、セッターに拾わせて攻撃のリズムを崩す。
ライトからレフトにトスが上がっている。
多分、レフト前衛にいる人がエースなのだろう。
「月島さん、タイミング合わせて」
「はいよ」
「せーの!」
弥生ちゃんと曽木先輩が、タイミングを合わせてブロックに跳ぶ。
しかし、大学生もさすがに冷静でフェイントを使ってブロックの上を通す。
「っしょ!」
それを冷静に見ていた希望ちゃんが、跳びついて拾う。
それを見て、助走に入る奈々ちゃんと弥生ちゃん。
レシーブしたボールはあまり高くは上がらず、オーバーハンドで上げるのは無理かと思ったが、奈央ちゃんはリンボーダンスをするかの様に、器用に体を反らしながら、オーバーハンドでトスを上げた。
「らぁっ!」
パァンッ!
弥生ちゃんの咆哮とともに、強烈なスパイクが相手コートに刺さる。
ピッ!
これで3ー0。
尚も、私のサーブが続く。
今度も同じく、セッター狙いのサーブ。
やはり先程と同じ様に、セッターがレシーブを上げる。
ここに来て、私のサーブが全て狙ってのものだと気付いたのか、大学生達の顔色が変わる。
上がったレシーブを、さっきの様にライトがトス──ではなく、ツーで返してきた。
これには反応出来ずに、ポイントを取られる。
「んー、冷静だね」
「そうね。 今のところ、搦手が多いけどそういうスタイルなのかしら?」
「どうやろな」
サーブは大学生チームへと移る。
長身の選手からは、ジャンプサーブが飛んできた。
ここは私が拾う。
「ナイスですわ」
上がったボールをみて、奈々ちゃん、弥生ちゃん、曽木さんがそれぞれワンテンポずつズレて、助走する。
「ここ!」
一番最初に走り出して跳んでいた奈々ちゃんに、奈央ちゃんからの速いトスをが届く。
クイックだ。
リードブロックは間に合わず、無人のネット際から奈々美ちゃんのスパイクが炸裂する。
ピッ!
「よしっ」
「藍沢さん、今日はキレッキレやな」
確かに、今日の奈々ちゃんは絶好調のようだ。
心なしか、普段よりジャンプも高い気がする。
ローテーションして、サーブチェンジ。
前衛に移動する希望ちゃんは、ここで一旦ベンチへ下がり、代わりに黛のお姉さんの方がコートに入る。
「よっしゃ、やるでぇ」
気合い充分みたいだ。
守備の要である、リベロの希望ちゃんが抜けた穴は、ユーティリティプレーヤーである私が埋める。
曽木さんのサーブでゲーム再開。
曽木さんは、スタンディングのままで、フローターサーブを打つ。
ユラユラとゆっくり飛んでいくボールは、ネット際の嫌な所に落ちる。
相手エースがそれを拾い、セッターがトスを上げる。
今日初めて、相手のちゃんとした攻撃の形になる。
サーブを拾ったエースさんが、ジャンプしてスパイクを打ってきた。
黛姉と奈々ちゃんがブロックに跳ぶも、技ありのブロックアウトを取られる。
「ごめん、止められんかったわ」
「どんまいどんまい」
あちらのエースさん、空中でのテクニックはかなりのモノみたいだ。
次の相手サーブは、ネットに引っ掛かるミス。
次のうちのサーブは弥生ちゃんだ。
「っ!」
弥生ちゃんも、奈々ちゃんに劣らないパワータイプのサーバー。
矢のようなサーブを、相手セッターがレシーブすると、ライトプレーヤーがトスを上げる。
さすが大学生チャンピオン。 簡単には崩せないね。
「せーの!」
私と黛姉でブロックに跳ぶ。
しかし、相手も上手く私の手に当ててブロックアウトを取られる。
「ごめん」
「OKOK」
うん、やっぱり強い。
こっちの形を作れているにもかかわらず、中々差がつかない。
これはちょっと本気出さないとダメかなぁ?
監督をがっかりさせるわけにもいかないし。
今度は大学生のサーブ。
それを弥生ちゃんが拾う。
よし、前衛に出てきたし、私も攻撃に参加するよ。
助走してジャンプの準備をする。
「いきますわよっ!」
奈央ちゃんが、私にトスを上げる。
私のジャンプが、大学生に通用するかどうか。
私は踏み切って、大きくジャンプをする。
ブロックが2枚見える。
「はぁっ!」
「なっ?!」
私の手は、相手ブロックの遥か上。
相手のブロックに触れさせもせずに、スパイクしたボールは相手コートに落ちる。
「よしっ」
「……」
「ナイスや亜美ちゃん。 さすがの高さやね」
「今日も高かったわねぇ」
「えへへ」
大学生チームの皆も、かなり驚いているようで、私の顔を見て苦笑いしている。
この試合、ここからどんどん引き離していくよぉ。
中々手強い大学生チーム。
ここからユースチームの本領発揮か
「奈々美よ。 大学生との対戦燃えるわねぇ! いつもより気合い入っちゃうわ。 中々手強いけど、戦えてるしなんとかなるでしょ!」