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第138話 バレンタイン

バレンタインデーがやってくる。

亜美と希望はチョコ作りを始めた。

 ☆亜美視点☆


 今日は2月13日。

 翌日はバレンタインデー。

 私は毎年、市販のチョコを友達や夕ちゃん、宏ちゃんにあげていたんだけど、今年は手作りしてみようと思う。

 バレー部1年の皆に配ることになるので、小さなやつを一杯作って小分けにしようと考えている。

 希望ちゃんは市販の友チョコと手作りの本命チョコで分けるみたい。

 

 夜、私は早速チョコを作ることにした。

 といっても、市販のチョコを湯煎で溶かして、手を加えるだけなんだけどねぇ。


「ふんふーん♪」

「亜美ちゃん、私も台所借りて良い?」

「んー? 良いよー。 希望ちゃんも作るの?」


 希望ちゃんは「うん」と頷き、エプロンを着ける。

 友チョコは既に包装し終っているようで、今から夕ちゃんにだけあげる本命の手作りチョコを作るところみたいだね。


「亜美ちゃんのは、なんか小さいね? 友達用?」

「ううん、皆これだよ」

「えっ?! 夕也くんにも?!」

「うん」


 何か問題でもあるかな? 毎年市販のチョコあげてるの知ってるはずなんだけど?

 手作りを上げるなんて進化したでしょ?


「ま、まぁいっか……」


 希望ちゃんはそう言うと、市販の板チョコを取り出して、隣で湯煎を始める。


「え、そんなに板チョコ使うの?」

「うん」


 どんなチョコを作るつもりなのかしら?

 しばらく、2人でお話しをしながら湯煎を続け、先にチョコを溶かし終えた私は、小さな型に流し込みデコレーションする。


「ふんふんふんー♪」

「可愛らしいチョコだね?」

「でしょ? 大きければ良いってもんじゃないんだよ希望ちゃん」

「胸もねー」

「胸は大きい方が男の子は好きでしょ?」

「それは偏見だよ……」


 まあ、希望っちゃんだって一般的な女性よりは大きい方だし、気にしなくて良いと思うけど。

 私はチョコを冷蔵庫に入れる。


「よしOK」

「早っ?!」

「まあ、小さいのだし」


 私はそのまま、希望ちゃんの作業を観察する。

 大量のチョコを湯煎してどんなチョコを作るのだろう?

 と思っていると、急に薄力粉や卵を取り出し始めた。

 材料をボウルに入れてシャカシャカと混ぜ始める。


「え? もしかしてケーキ?」

「うん、チョコレートケーキにしようと思って」

「凝ってるねぇ」


 希望ちゃんは手際よく作業を進める。 溶かしたチョコはケーキの生地に混ぜ込んでいく。

 更にもう一度チョコを湯煎。

 ケーキを焼いている間に、チョコクリームを作るようだ。


「希望ちゃん、凄いねぇ」


 好きな人の為に頑張る姿を見て、感心する。

 私のあんなチョコなんかで、夕ちゃん喜ぶかなぁ?

 ちょっと心配になってきた。


「今年は特別力入れてるからね」

「入り過ぎだよ」


 今年は勝負の年だという事がわかっているからこそ、この気合の入れようなのだろう。

 私だってそう思ったから、今年は手作りにしたんだけど、一緒に渡したら凄く惨めになりそうだ。


「……」

「どうしたの?」

「ううん、なんでも」


 一瞬、新しいのを作ろうかと思ったけど、もう材料も無いし諦めることにした。

 ゆっくり時間をかけて、希望ちゃんはチョコケーキを完成させた。

 凄い出来である。



 ◆◇◆◇◆◇



 翌日──


 春くんには朝一でチョコを渡す。

 夕ちゃんには、夜に希望ちゃんと一緒に持ってくる約束をしている。

 

「俺のはどんなチョコなんだ?」

「春くんのと同じだよ」

「……これ?」

「それ」

「私のは違うよ! 凄いの用意した!」

「おお、期待してるぜ」


 やっぱりこれじゃ嬉しくないんだ……。


「美味しいですよ、亜美さん」

「あ、ありがとう」


 朝食を終えて、登校を開始する。

 いつもの場所で、奈々ちゃん、宏ちゃんと合流し、2人にチョコを渡す。


「お、さんきゅー」

「宏ちゃんのも友チョコね」

「私のもね」

「念を押されなくてもわかってるわい!」


 宏ちゃんは、泣きながら怒っている。

 器用だなぁ。


「私からも皆に、はい。 宏太には夜渡すから」

「おう、期待してるぜ」

「期待してていいわよ」


 奈々ちゃんは、どんなのをあげるんだろう?


 そのまま学校へ向かうと、下駄箱の前に女子が集まっていた。


「うわわ……」

「あれ全部、あんたら3人待ちじゃないの?」

「はぅ……凄いよぅ……」


 夕ちゃん、宏ちゃん、春くんは学園内でもかなり人気のある男子だ。

 でも、これはちょっと想像以上かもしれない。


「佐々木君! 受け取ってください!」

「お、おう」

「今井君、これ! 私の気持ちです!」

「ありがとう、でも付き合ったりとかはちょっと無理かな」

「いいんですっ! 絶対に清水さんには敵わないから」

「あ、あはは……」

「北上君、アメリカでも頑張ってください!」

「ありがとうございます」


 本当にこの3人はモテるなぁ。

 と口走ったら、皆からジト目で見られてしまう。

 わ、私もそうだったね。


 女子の大軍をなんとか抜けて教室へ辿り着くと、今度はクラスの女子に囲まれる2人。

 毎年大変そうである。

 朝のHRが始まるまでずっとこんな感じであった。


 その後も休み時間に女子が来たり、D組から紗希ちゃんや遥ちゃんが来たりと、チョコに埋もれていく2人をボーッと眺める。


 放課後になると一通り落ち着いたのか、夕ちゃん達の周りから女子の数が随分と減った。

 

「一杯貰ったねぇ」

「おう……」

「多過ぎだって」


 夕ちゃんと宏ちゃん、これだけ貰って毎年どうしてるのか聞いたことがあったが、どうやら日数をかけて食べているらしい。

 凄いと思う。


「今年もお疲れ様だね、2人とも」


 希望ちゃんが労うと、2人は「ああ、やっと解放された」と、心底疲れた様子で応えた。



 ◆◇◆◇◆◇



 その夜、夕飯を食べた後。


「夕ちゃん、はいこれ」

「おう、ありがとな」


 皆に配ったのと、同じものをあげる。


「その、皆と同じ小さいやつだけどごめんね」

「ん? 別にどんなものでもいいぞ。 毎年市販のだからちょっと進化しただろ」

「うん。 あと、夕ちゃんのはちゃんと本命だからね」

「知ってる」


 頭を撫でてもらう。

 良かった、こんなのでも喜んでくれたよ。


「はいはーい! 次は私の!」


 希望ちゃんが大きい箱を持って前に出る。


「な、なんだかすごいの出てきたな……」

「うん、今年は気合入れて作ったよ」


 希望ちゃんがそれを渡すと、夕ちゃんはテーブルに置いて箱を開ける。

 そこには、昨日希望ちゃんが丹精込めて作ったチョコケーキが。


「おお、ケーキですね。 凄い」


 春くんも目を見開くほどの出来。

 夕ちゃんも、びっくりして言葉も出ないらしい。


「えへへ、せっかくだから皆で食べよ?」

「そうだな、1人じゃ食べ切れないしな」

「ナイフ持ってくるね」


 私は立ち上がってキッチンからナイフを持ってくる。

 希望ちゃんに渡して、ケーキ切り分けてもらう。

 夕ちゃんのケーキは、ほんの少し大きいようだ。 その上に、大好きとホワイトチョコで書かれた板チョコを乗せている。

 本当にマメだね。


「いただきます!」


 皆で同時に口に運ぶ。

 

「んん! 美味しいよ希望ちゃん!」

「おう、まじうめぇ。 ケーキも手作り?」

「もちろん!」

「凄いですねぇ」


 私達は、希望ちゃんの手作りチョコケーキを心行くまで堪能した。


 食べ終えて、帰る支度をし玄関へ向かう。

 

「今日は2人ともサンキューな」

「ありがとうございました」

「いやいや。 喜んでもらえて私も良かったよ」


 私は希望ちゃんと目配せして、小さく頷く。


「夕ちゃん」

「夕也くん」

「ん?」


 2人で夕ちゃんの左右に立ち、同時にほっぺにキスをする。


「また明日、ご飯作りに来るね」

「おやすみ夕也くん」

「お、おう」


 呆然として立っている夕ちゃんに、手を振って今井家を後にした。

 

バレンタインも無事に終了。

気持ちの篭ったチョコを渡して亜美も希望も満足。


「遥だよ。 バレンタインなぁ……何故か知らないけど、あげる方より貰う方が多いんだよねー。 しかも友チョコじゃなさそうのも混じってるし……」

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