第129話 話し合い、そして……
3人でのショッピング。 その休憩中に何やら不穏な話題が?
☆希望視点☆
亜美ちゃん、夕也くんと3人でお買い物をして、フードコートで休憩している時だった。
急に夕也くんが、「3人は今みたいなこういう関係が一番良い」と言い出した。
亜美ちゃんも「居心地は良い」と、同意する。
話を続ける夕也くんに、亜美ちゃんが深く切り込んだ。
「二股状態なのを気にしてるの?」
「そうなの?」
夕也くんは、静かに小さく頷く。
夕也くん、そんな悩みを持っていたなんて。
「この話は、凄く重要な事だし帰ってからにしよう」
亜美ちゃんがそう言って、強制的に話を締める。
亜美ちゃんの言う通り、この話は落ち着いてゆっくり話すべき内容である。
「そうだな……悪いな、暗い話になった」
「そうだよー。 罰としてホットケーキ」
「奢らねーぞ」
「ははは」
亜美ちゃんが場の空気を変えてくれる。 さすがだよ。
その後も私達は、3人でショッピングを楽しんだ。
◆◇◆◇◆◇
夕暮れ時に帰ってきた私達は、すぐに夕飯の支度を開始する。
春人くんは、どこかに出掛けていたようで、夕飯の支度をしていたら、後から帰って来た。
「あ、春くんおかえりー。 どこ行ってたのー?」
「図書館へちょっと」
「そっか」
奈央ちゃんに誘われたわけじゃないのかぁ。 最近、奈央ちゃんがちょっと大人しいなぁ。
春人くんの事、諦めたってわけじゃないと思うんだけど、何かあったのかなー?
「今日の夕飯はとんこつ出しの鍋だよ。 食後にラーメンもあるよぉ」
「良いですね。 楽しみです」
「待っててね」
春人くんは「はい」と応え、自室へと向かった。
私はお野菜を切ったりして準備、亜美ちゃんはとんこつスープを作っている。
役割分担は大事だよ。
準備が出来たので、夕也くんと春人くんを部屋まで呼びに行く。
部屋のドアをノックして声を掛けると、順番に2人が出てきた。
そのまま順番に階段を下りてダイニングへ向かう。
ダイニングでは、亜美ちゃんが具材を鍋に入れているところであった。
「鍋にー具材をー入れましょぉー」
何か変な歌を歌っている。 可愛いなぁ。
「あ、夕ちゃんと春くん。 もうちょっとだからね」
「おう」
皆で食卓を囲むように座る。
鍋の中でぐつぐつと煮立つ具材。
うーん、美味しそう。
「もういいかなー?」
「いただきまーす」
皆で手を合わせて、鍋をつつく。
とんこつ出汁が野菜に浸みてすごく美味しい。
夕也くんも春くんも「美味しい美味しい」と言ってどんどん食べている。
美味しくて体も温まる。 鍋は冬の食卓には欠かせないよね。
減ってきた具材を足して、ついでに煮込みラーメンも鍋に入れる。
「おお、いいな! 二度美味いってやつだな」
「そだね」
夕也くんが目を輝かせる。 結構食べたのに、まだラーメンが入るあたり凄いなぁ。
春人くんも、ガッツリとラーメンを食べているし、亜美ちゃんも結構食べている方だ。
私が小食なのかな?
◆◇◆◇◆◇
皆で満足した後、お鍋やお皿を片付ける。
うん、美味しかった。
洗い物を終えた後、今日は亜美ちゃんと2人で夕也くんの部屋へ向かう。
お昼にしていた話をするためである。
夕也くんの部屋で、黙って座る。
夕也くんが話を切り出すのを、亜美ちゃんと私は待っているのだけど。
「あーそのな……二股してるみたいになってるのは確かにアレなんだが、気になってるのは、またちょっと違う事なんだ」
「違う事?」
「……」
一体何を気にしてるんだろう? 亜美ちゃんは何も言わずに黙っている。
「……その、最低な奴だと思うかもしれないけど、俺は希望も亜美も好きなんだ」
「それはわかってるよ?」
夕也くんが、今でも亜美ちゃんを好きなのは知ってる。 だから私も奪われない様に必死なのだ。
「それが良くないと思ってるんだ。 こんなフラついた気持ちで希望と付き合い続けていて良いのかと……」
あー、そういうことか……。 夕也くん自身もそうだし、私にも悪いって思ってるんだ。
夕也くんは本当に……。
「私は、別にいいよ? 夕也くんの恋人のままでいたい」
私の気持ちを伝える。 夕也くんは腕を組んで考え込む。
亜美ちゃんは、相変わらず黙って成り行きを見守っているようだ。
しばらく夕也くんが考え込んでいると、亜美ちゃんが口を開いた。
「このままでいいじゃない? 希望ちゃんも別にいいって言ってるんだし」
亜美ちゃん的には、私と夕也くんは別れた方が良いはずなのに、私の味方をしてくれている。
夕也くんは、それでも考え込む……そして──。
「いや……希望が良くても、俺がダメだと思ってるんだ。 やっぱり、どっちかはっきりさせるまではこのままじゃ……」
「それじゃもしかして?」
「希望……すまない、俺と別れてくれないか? 一度関係をリセットして、ちゃんと考えてみたいんだ。 希望と亜美の事……]
「夕ちゃんっ! 何言って──」
「わかったよ……一旦別れよう?」
「希望ちゃんっ!!」
「良いの亜美ちゃん。 夕也くんの気持ちを尊重したい」
夕也くんが苦しんでいるんなら、仕方ない。
それに、亜美ちゃんを選んだとか、私を嫌いになったから別れようって言うんじゃなくて、ちゃんとこれからの事を考える為に別れる。
そう、一旦別れるだけなのだ。
「ちゃんと、私を選んでくれる日を待ってるね」
「希望ちゃん……」
「大丈夫だよ亜美ちゃんっ! 私、落ち込んだりしてないし。 それより、これからは私と亜美ちゃん、条件が同じになるし、ここからが本番だよね」
「希望ごめんな? 一番にしてやれなくて」
「良いってばぁ! ちゃんと夕也くんが私を選んで、そのあとで一番にしてくれればいいんだよ」
私は、まだ望みを捨てたりしないよ。 絶対に亜美ちゃんに勝って、もう一度、夕也くんの恋人になるんだから。
「じゃあ、私は今から、夕也くんの幼馴染に戻るってことだよね?」
「そう……だな」
「夕ちゃん元気出しなよ。 自分で決めたんでしょ?」
「あ、あぁ、そうだな」
亜美ちゃんが呆れ顔で言うと、夕也くんは顔を上げた。
でも、幼馴染か。
恋人だった期間は半年程だけど、幼馴染だったころはどんな風に接してたっけ?
「ねぇ、どんな風に接すればいい? 距離感が良く分かんなくなっちゃった」
「私みたいな感じでいいんじゃない?」
亜美ちゃんが「何を悩んでるの?」といったような顔でそう言った。
「亜美ちゃんみたいにって……」
「半裸で迫ってみたり、ガンガンアピールしたり」
「はぅーっ……やり過ぎだよ」
「俺もそう思うけどな……でもあまり気にしなくていいぞ。 どっか出掛けたいって思ったら誘ってくれていし、甘えたい時は甘えてくれていい。 今までと大して変えなくてもいいんだ。 亜美とだって、今はそんな感じだしな。 それに、アピールしてこないと、どんどん亜美の方に傾いちまうぜ?」
「夕也くん……うん、わかった」
夕也くんと別れて、幼馴染としてまた一から再スタートすることになった私。
亜美ちゃんと同じ条件になってしまったけど、私は絶対にもう一度、夕也くんの恋人に戻ってみせる。
頑張って夕也くんにアピールしていくよ。
「夕也くん、大好きだよ」
「おぅ、俺もだよ」
夕也くんは、笑顔でそう返事してくれた。
そんな私達を見て、亜美ちゃんも微笑む。
私と亜美ちゃんの、夕也くんを巡る恋の戦いのファイナルラウンドが始まった。
ここに来て夕也と希望の関係がリセット?
振り出しに戻る三角関係……。
「奈々美よ。 なんかややこしいことになってるわね? 別れる必要あるのこれ? まあ夕也としては苦しんだ上での決断なんでしょうけど。 これからこの3人はどうなっていくのかしら……あー胃が痛いわ」