第125話 皆で混浴
食後の駄弁りタイムを楽しむ皆。
☆希望視点☆
皆との賑やかな夕食を終えて、食堂で駄弁る。
夕也くんと亜美ちゃんは、先に部屋に戻ると言って戻ってしまった。
2人きりにするのはちょっと心配ではあるけど、いつ私が戻るかわからない状況では変なことはしないだろう。
「奈央さん、ちょっとくっつきすぎでは?」
「良いじゃない別にー」
隣に座る春人くんにくっついて、猛烈にアタックしている。
亜美ちゃんも奈央ちゃんも、凄いなぁと思う。 好きな人に、臆せずどんどんアタックを仕掛けられる。 付き合う前の私は、お世辞にでも夕也くんに積極的にアタックしていたとは言えない。
どうして夕也くんは、私と付き合ってくれたのだろう?
「さて、解散しますか?」
満足いくまで存分に駄弁ったところで、奈々美ちゃんが締める。
時計を見ると20時前。
まだ寝るには早い時間だし、亜美ちゃんを誘ってもう一度浴場に行くのもアリかもしれない。
「じゃあ、またね」
「ほいほーい」
皆が、それぞれの部屋に戻っていく。
私もその流れに乗り、亜美ちゃん達の待つ部屋へ戻る。
「亜美ちゃんと今井君、2人きりだし変なことしてたりして?」
紗希ちゃんが、私に耳打ちする。
紗希ちゃんって、私の味方だよね? 何だか楽しんでない?
「多分大丈夫だと……」
「まあ、それもそうか。 いつ希望ちゃんが戻ってくるかわかんないもんね?」
「うん」
「紗希はそんなの気にしないよなぁ」
柏原くんが、意味深な事を口走る。
どういうこと? 人に見られても大丈夫って事だろうか?
「気にはするけどさー。 欲には勝てないなー」
生々しい話だよ。
途中で、そんな紗希ちゃん達と別れて部屋の前に到着。
「一応念の為にゆっくりドアを開けよう……」
普通に入って、もし万が一にも真最中だったら、とても気まずいからね。
私は、恐る恐るドアを開ける。
「夕ちゃんはバカだねぇ」
「ほっとけ」
亜美ちゃん達の声が聞こえてきた。
どうやら真最中という事は無いらしい。 安心したのでドアを普通に開けて中に入る。
2人は仲良く並んで、テレビを見ていた。
どうやらクイズ番組らしい。
「あ、希望ちゃんおかえり」
「うん、ただいま」
「遅かったな?」
「皆と話が弾んじゃって」
私がソファーの方へ近付くと、亜美ちゃんがスッと横にズレて、夕也くんの隣を空ける。
私は、ありがたくそのスペースに座る。
「どんな話をしてたの?」
「いつもの色恋話だよ。 主に奈々美ちゃん達のね」
順調そのものな2人について、紗希ちゃんが根掘り葉掘り話を聞き出していた。
最近は、佐々木くんの家に寝泊まりする事もあるのだとか。
本当に仲が良いようで何よりである。
更にその後、話は「もし今の相手以外と付き合うなら誰?」と言う話になり──。
「夕也くんってモテるんだね?」
「何の話だよ?」
「夕ちゃんがモテるなんて、今更だよ」
それはそうなんだけど……紗希ちゃんも奈々美ちゃんも、夕也くんだって言うし。
奈央ちゃんは佐々木くんだそうだ。
それを2人に告げると──。
「紗希ちゃんは夕ちゃんの事気に入ってるし、奈々ちゃんに至っては当たり前というか……」
「え、でも2人とも夕也くんと、えっちしても良いって思ってるって言ってたよ?」
「紗希ちゃんには一回迫られた事ある……」
夕也くんが何やら問題発言をした。
私はギロリと、夕也くんを睨む。
「私も初耳だよそれ? いつどこで?」
「去年の夏の旅行の時だ。 ほら、柏原君の浮気疑惑で相談に乗ってたろ?」
紗希ちゃんったら、私の目が無い所で夕也くんを誘惑してたんだね。
未遂で終わったみたいだし、許すけど。
「奈々ちゃんは、まあわかるよね。 私も宏ちゃんとだったらアリだし」
「えーっ?!」
亜美ちゃんの方からも問題発言が飛び出す。
わ、私も佐々木くんの事は、どちらかと言うと好きだけど、えっちまでは出来ないかなぁ……。
辛うじてキスまでなら良いけど。
「で、希望は誰って答えたんだ?」
夕也くんが、じーっと私を見つめる。
「さ、佐々木くん……」
そう言うと2人は、「知ってた」と言って詰まらなさそうな顔をするのであった。
亜美ちゃんだって同じなくせに。
「そだ、希望ちゃん知ってた?」
「え? 何が?」
知ってた? と言われても主語が無いとわからないに決まっている。
「ここのホテルの浴場に、混浴露天風呂があるんだって」
「混浴!? そ、それがどうしたの?」
まさか、3人で入ろうとか言い出すんじゃ……。
「奈央ちゃんが貸し切ってくれててね」
この流れは間違い無い。 3人で混浴の流れだよ。
「皆で入ろうかってさっきメールしたの」
「み、皆?」
「そう、男子も女子も皆」
予想の更に上を行く展開だった。
皆って事はつまり、佐々木くんや春人くんや柏原くんもいるわけだよね?
「はぅー」
「亜美は恥ずかしくないのかよ」
「別に? バスタオル巻けば見えないし」
「そういう問題じゃないよぅ」
「嫌なら無理に入らなくても良いよ?」
亜美ちゃんは入る気満々らしい。
夕也くんとだって恥ずかしいのに、他の男子も一緒なんて……。
私は夕也くんに助けを求めるように、視線を向ける。
「俺も行くけど?」
「はぅー!」
この2人は、恥ずかしいという感情は無いのだろうか。
でも、このままじゃ私1人でお留守番になってしまう。
それはそれで嫌だよ。 仕方ない。
「私も行く……」
「決まりねー。 メール見たら、皆もOKみたいだし、ちょっとしたら行こ」
「だなー」
「はぅ……」
◆◇◆◇◆◇
で、今脱衣所に来ているわけなんだけど。
「本当に皆来てたね……」
「希望ちゃんにはハードル高いかー」
紗希ちゃんは笑いながら服を脱いで行く。
むしろ、なんで恥ずかしくないの?
私がもたもたしている間に、皆はさっさと服を脱いで、露天風呂へ向かってしまった。
「えーいっ! 仕方ない!」
意を決して服を脱ぎ、バスタオルをしっかり巻いてから皆を追いかけた。
「あ、来た来た」
私が中に入ると、皆は既にお湯に浸かっていた。
後から来た事により、皆の視線が私に集まる。
私は、亜美ちゃんの隣に浸かって、身を隠すように小さくなる。
「しかし、絶景だな」
佐々木くんが、明らかにいやらしい顔をしながら言う。
「何がよ?」
「大小の山脈が……がぁっ?! あだだだだ! 折れる! 首が折れる!」
佐々木くんは、奈々美ちゃんに関節技を極められている。
黙っていれば良いのに、いつも口に出るんだから。
「今井君、良い体してるじゃーん。 さすがはバスケ部エース」
ばしゃばしゃと、夕也くんの前までやってきたのは紗希ちゃん。
視線を下におろして──。
「こっちはどーかなー?」
下半身に手を伸ばす。
私はすかさずにその手を取り、紗希ちゃんを目で牽制する。
「希望ちゃん、怖い……」
「紗希が悪いんだろ……」
柏原くんが呆れたような顔をする。
彼は本当に苦労しているようだ。
「しかし、男子は皆ガタイ良いね。 北上なんて、なよっちく見えるのに脱いだら凄いじゃん」
遥ちゃんの言う通りで、春人くんも夕也くんや佐々木くんに負けないぐらい、良い体つきをしている。
奈央ちゃんが、目をハートにしながら眺めているぐらいである。
「夕ちゃん、私の背中流してくれる?」
「な?!」
「亜美ちゃん、攻めるわねー。 春人君、私もお願い」
「勘弁してくださいよ、奈央さん……」
あちらはまだまだ、距離があるようだ。
最初は恥ずかしいと思ったけど、時間が経って慣れてしまえばなんて事は無かった。
「希望ちゃん、もうポロリしちゃダメだよ?」
「しないよ?! 何で常習犯みたいになってるの?!」
「あんた、夏に一回やってるじゃない」
「あれは……はぅ……」
気を付けよう。
その後は、どの女子が1番良い体をしているかを、男子に選んでもらうという謎の催しが始まり、紗希ちゃんがダントツで優勝するのだった。
男の子って……。
皆で混浴。 裸の付き合いで仲良し度アップ?
「紗希よーん。 ふふーん、またこの体で男どもを魅了してしまったわね。 でも、奈々美も侮れないわ。 佐々木君と付き合いだして色気も出てきたしなーあの子」