*夏の県大会・準決勝戦A(VS.正交.3)
前回の続きです。
千葉県県大会準決勝戦・第1試合、正交女学園.VS.正処女学園の前半戦終了して、ハーフタイムが始まる。
正処女学園側の控え室にて
そこで正処の選手たちが、それぞれシャワーを浴びたり、スポーツドリンクを飲んだり、バスタオルで顔を拭いたり、簡易仮眠所で仮眠をとったりして、みんなが後半戦に向けて身体を休めながらモチベーションを高めていく。 一方で同じ控え室にいる監督とコーチは、二人で隅の方に座って何やら話し込んでいて、一体何を話しているのか、聞き耳をたてる暇な選手もいる。
「―――」
「いや、こうか? 否、そこか?」
「なるほど、そんな感じだな」
「相手は正交女学園だからな。 こんなもんだろう?」
「ああ、それでいいだろう」
「よし、決まりだな」
どうやら二人で作戦会議中だ。
まぁ監督やコーチとしては、前半のうちに得点できたのは大きいけど、ただすぐに失点してしまったのが、非常に残念なところでもあり、相手も勝つために必死だ。 同点で終わったことは、むしろまずまずの出来である。 選手たちには、しっかりと休ませてから後半に臨むつもりだ。
やることは前半と同じ。 あとは守備の質をさらに上げて、自陣堅守してからの速攻・カウンターが理想的。 余計な事は言わずシンプルに攻めることだけを伝えて、あとはしっかりと休ませる。また交代選手にも作戦を伝えると、ハーフタイムが終了する。
そこに監督とコーチが先発選手たちを控え室からピッチ・フィールドまで送り出して、両チームの選手たちが左右の、それぞれの自陣へ散っていった。
後半、正処女学園のキックオフで試合開始。 (P.m.9:10)
まずは自陣後方でボールを回す正処の選手たち。 また正交の選手たちも、すぐにはボールを奪いにいかず、まずは様子見する。
そこで正処の選手たちが早くも中盤までボールを回していき、そこから前線までボールを運ぼうとする。 勿論、正交の選手たちも前線への侵入を阻止すべく、正処の選手たちからボールを奪いに来る。
正処の選手たちは前線へボールを運ぼうとするけど、正交の選手たちに身体を張って阻止されてしまう。 それでボールがなかなか前線へ運べず中盤周辺での、両チームの選手たちによるボールの奪い合いが展開される。
両チーム共に激しいボールの奪い合い。
そのボールが中盤周辺からほとんど動かずに、時間だけがどんどん過ぎていく。
しばらくして、少し焦りだし油断した正処の選手たちから、素早くボールを奪った正交の選手たちが、すぐに正処陣地内に攻めかかる。 正交の選手たちが敵陣地の手薄な所にボールを回していき、素早く前線へボールを運んでいく。
「し、しまったぁ!?」
「や、ヤバいわぁ!?」
「こ、これは……やられたぁ!?」
これにはさすがの正処の選手たちも動揺して、すぐに対応することが出来ずに、正交の選手たちの自陣侵入を許してしまう。
後半28分
正交のMFのミサキが敵陣を切り裂く華麗なドリブルでボールを運ぶ。 さらに彼女の左右からFWのミキとクミの二人も凄く速度で走ってきて、三人同時に前線まで駆け上がる。
「マークして!」
「チェックして!」
「誰か止めて!」
当然、正処のDF陣もドリブルしてくるミサキにマークするけど、すぐにクミにパスして、正処のDF陣がクミにマークすると、今度はミキにパスする。 この三人でボールを回していき、あっという間にあっさりと正処のペナルティーエリアまで駆け上がり、この三人の連携が上手くいってる。
「よーし、行くわよ!」
「さぁ、来い!」
ここでボールを持ったFWのミキが正処のペナルティーエリアのボックスゾーンに入った瞬間に鋭く強力なシュートを放つ。
ズバァン、バシィッ!
シュートしたボールがゴール右下隅の距離と角度のある所に入ろうとするけど、さすがのGK・浅村忍が横っ飛びの左手一本だけでボールに触ってゴールを阻止するけど、すぐにまたゴール前まで詰めてたFWのクミが素早く鋭くシュートする。
「そりゃああぁーーっ!!」
「な、なにぃっ!?」
スドォン、ドォーン!
倒れ込む忍やゴール前を固める正処のDF陣の対応が遅れる間に、シュートしたボールがゴール左上隅に突き刺すように入ってゴーール!
「よーし、やったぁーーっ!!」
「オフサイドは……なし? ふ~う、良かったわぁ」
「どうやらオフサイドトラップはないようね。 助かったわ」
「くぅ、やるぅ~」
「なかなかやるわね」
「やられたわぁ~」
ピィーーーッ!
ここで審判のゴールの笛が鳴った。
一瞬の油断が命取りになる。
勿論、正処の選手たちだって、その事はよく判ってるハズなのに、それでも一瞬の油断から素早くゴールを決められた正交の選手たちも凄いのだ。
さすがは県大会ベスト4に入るだけのチームである。
後半32分
正交2-1正処
◎選手交代・正処女学園
●14DF.糸井澤茜(SB) → 02DF.小早川かすみ(SB)
●09MF.シェイナ・シューベルト(OMF) → 10MF.白石恵美(OMF)
ここで一気に二人交代させた。
これが起死回生の交代になるのか?
また両チームの選手たちがピッチ・フィールドの左右の、それぞれの自陣に散っていった。
後半、正処女学園のキックオフで試合再開。 (P.m.9:42)
正処の選手たちが後方でボールを回す。 今度は正交の選手たちも後方でボールを回す正処の選手たちからボールを奪う為、積極的に前へ出る。
正交の選手たちがボールを持ってる正処の選手たちを徹底的にマークしており、隙あればボールを奪って速攻して、このままゴールを決めて3点目をゲットしたい、そんな感じの攻め方である。
正処陣地後方での両チームの選手たちによるボールの奪い合いが展開される。 もしここで正交の選手たちにボールを奪われると、一気にピンチになる正処の選手たち。 だからこそ懸命にボールを死守する。
こんな場所で、しばらくボールを奪い合い、時間だけが経過していく。
ところが試合は遂に動く。
今のところ正交の選手たちに隙はない。
それならば隙を作るしかない。
途中から入ったDFの小早川かすみがボールを持つと、同じく途中から入ったOMFの白石恵美が前線右側を走っていき、すぐにかすみが恵美へボールをロング縦パスする。
「恵美ちゃん、行くわよ!」
「オーライ、かすみさん」
パシィッ、タッ!
ボールを受け取った恵美が、そのまま正交のペナルティーエリアの右側を、凄い速度でドリブルしていく。
「えっ、速いっ!?」
「嘘っ、ちょっと待ってぇ!!」
「みんなぁー、早く戻ってぇー!!」
恵美の素早いドリブルに焦る正交の選手たちが慌てて、自陣に戻って後方を固めてゴール前を堅固に守備するけど、それと同時に正処のFWの藍と倫の二人も、同じくゴール前まで来させてしまった。
後半39分
ここで恵美が正交のペナルティーエリアの右隅いっぱいまでドリブルすると、すぐにゴール前まで正確にセンタリングする。
「行きます! 藍! 倫!」
バシィッ、ダッ!
「行くよ、倫」「了解、藍」
ボールがゴール前の上空を移動していき、それに合わせる様にして、FWの藍と倫の二人も同時に高くジャンプ。 それに合わせる様にして、正交のDF陣も高くジャンプ。 これは空中戦でのボールの競り合いだ。
「とりゃあああっ!!」
「させない!!」
「それはどうかしら!!」
ザァッ、ズドォン、ドォーン!
「な、なにっ!?」
「いっけぇぇっ!!」
まず藍とのボールの競り合いに勝った正交のDF陣がすぐにボールをクリアしようとするけど、すかさず倫が素早く鋭くヘディングシュートする。 正交のGKも真正面で待ち構えるけど、あまりに近すぎるヘディングシュートの威力と速度の為、対応が間に合わずにボールがゴール正面上部を突き刺すように入ってゴーール!
「くっ……そぉ!!」
「嘘でしょぉぉぉ!?」
「これで同点……っ!?」
ピィーーーッ!
ここで審判のゴールの笛が鳴った。
さすがは県大会ベスト4の正処女学園。
ここですぐ同点にした。
途中交代した二人が見事にハマってゴールをアシストした。
やっぱり、ただでは終わらない。
後半42分
正交2-2正処
どうやら試合はまだまだ続くけど、もうあまり時間が残されていない。
残りあとわずかの時間で決着つくのか?




