毒饅頭事件
「ダメです!!」
静粛な国会議事堂に高らかな女性の声が響き渡る。
「京子君! 日本の未来が君の肩に―――いや、パンツに掛かっているのだぞ!?」
国会議事堂の椅子に座る内閣総理大臣。その口には一つの饅頭が咥えられていた。長いこと咥えているのか、饅頭の脇からはヨダレが垂れ、その顔は苦痛に歪んでいた。
饅頭からは赤と青の銅線が見えており、見るからに爆弾だと一目で分かる。
「一国の総理が、いや! 日本が! 正にこの瞬間にも滅びようとしているんだぞ!!」
「何がどうなろうとも嫌な物は嫌なんです!!」
―――爆弾処理部隊は頭を抱えていた。
何故なら、内閣総理大臣が口にした饅頭には爆弾が仕掛けられており、既に起爆スイッチは押されている。後は大臣が口を離せば全てが吹き飛ぶだろう。
火薬の威力はTNT爆弾1000000000個分!!
国会議事堂はおろか、東京すら海に沈むだろう……。
しかし、この饅頭爆弾を仕掛けた犯人から、御丁寧に解除の仕方が饅頭の箱の中に認めてあった!
『京子ちゃんの今日のパンツの色と、同じ線を切れば解除出来るよ♪』
京子ちゃんとは、爆弾処理班の新人の事だ!!
爆弾処理班の班長である田中は困り果てていた!!
「頼む!! パンツの色を教えてくれ~!」
「嫌ですよ!」
「じゃあ、俺だけに!!」
「駄目だ! 田中班長が犯人だとしたら嘘を言う可能性がある!!」
爆弾処理班の中から、やっかみに近いケチが付く。
「誰だ! 今言ったのは!! 俺が嘘をつくとでも言うのか!?」
しかし、それに答える者はいない。
「じゃあ爆弾処理班にだけ見せてくれ! いや駄目だ!! 俺も見たい!!」
「……えっ!?」
田中のまさかのカミングアウトに京子は驚き口を手で押さえた。田中は「やってもうた……」と言わんばかりの顔で咳払いを一つし、頭を掻いた。
「田中さん……責任取って貰えますか?」
「えっ!」
「えっ!」
「はぁ!?」
「死ね!」
まさかの京子の提案に爆弾処理班から凄まじい怨念が込められた念波が田中へと届く。
「……ふが、ふがが…………」
「班長! 総理大臣が『そろそろ限界』と言ってます!!」
「……分かった。私が責任を持って、君を娶ろう!」
「田中班長……♡」
「buuuuuu!!」
「死ね死ね!」
「誰か饅頭取れ!」
「手榴弾を喰らえ!」
爆弾処理班は仕事そっちのけでヤジを飛ばすのに必死だ。
田中は壁にもたれる京子の顔の脇に片手を着き、もう片手をポケットに入れて謎の格好つけ壁ドンポーズを披露した。
「田中さん……素敵です♪」
「そうか、それじゃあ……パンツの色を教えてくれるかな?」
「……ふ、が…………」
「私―――今日はパンツ履いてません!!!!」
その日、日本は滅びた
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犯人は京子ちゃんのパンツの色が知りたかっただけ説