7.小鳥と一緒
「ピューイ!」
『うわぁっ?!』
突然耳元から鳥の甲高い鳴き声が聞こえ、私は飛び起きる。びっくりした…小鳥を介抱した後、私も寝ちゃったんだった。
私が小鳥の方を振り返ると、小鳥がぐいぐいと頭を私に押し付けてくる。な、なんなの…?
訳もわからず手を伸ばすと、私の手のひらにぴたりと頭を付ける小鳥。そしてそのまま、何を思ったのか小刻みに頭を左右に振り始めた。
…これは、
『なでなで?』
どうやら小鳥は、私の手のひらを使って自分でなでなでをしているらしい。頭を左右に振りながら、ご機嫌そうに目を細めている。
…かわいい。
私が腕を目一杯伸ばして小鳥の頭を撫でてあげると、小鳥はパッと目を見開き、嬉しそうに「ピュイ!」と鳴いていた。うんうん、癒される。
しばらくそうして和んでいると、小鳥が羽を広げて大きく伸びをする。巣穴いっぱいまでとはいかないけど、真っ白で綺麗な羽だった。そしてふと、先ほどまであったものがないことに気付く。
『あれ、怪我は…?』
そういえば、眠ってしまう前は羽の一部が赤く染まっていたはずだ。今はどこにもその形跡がない。それどころか、あんなに衰弱していた小鳥がかなり元気になっている。どうして…?
「ピュルル?」
私はそっと小鳥の赤く染まっていた羽の部分に、手を触れてみる。特に違和感もなく、傷も血の跡も見つからない。さらさらとして、柔らかい手触りの気持ち良い羽だった。小鳥も痛がる様子もなく、私の方を不思議そうに眺めながら大人しくしている。
怪我が、治ってる…
ただの小鳥が木の実を食べ、寝ただけで怪我が治る…そんなことがあるのだろうか。私は怪我を治せるようなスキルなんて持っていないし、まさか、木の実の効果…?
確か小鳥に与えたのはルコの実とトレントの実だったはずだけど、そんな効果あったかな。
「ピッ!」
『わっ!』
私が色々と考えていると、小鳥が頭を私の頬に擦り寄せてきた。どうやらかなりなつかれてしまったようだ。もちろん、悪い気はしないけど。
私は小鳥の頭を撫でながら、こっそりルコの実を鑑定する。
【ルコの実】食用可。柔らかく、様々な食品に加工しやすい。食べるとHPが回復する。
やっぱりスキルLvが上がったからなのかな、鑑定結果が増えてる!ルコの実にはHP回復の効果。だから小鳥は元気になったんだ。
怪我をしてHPが減ったから、HPを回復すれば怪我が治る。
ステータスが存在するこの世界じゃ当たり前のことなのかもしれないけど、なんだか変な感じだった。元の世界じゃ怪我なんてそんなにすぐに治らないし。
私、本当に異世界に来ちゃったんだな…
「ピュイー?」
小鳥が不思議そうにこちらを覗き込んでくる。この子はまだ雛鳥だろうし、今朝ここに怪我をして居たってことは、親鳥もいないんだと思う。私より身体が大きいとはいえ、この世界でやっていけるのだろうか。
ちらりと巣穴の中を見回す。幸い、ここの巣穴は大きな双子の木に守られている。食料も私のスキルがあるし、水もなんとかなる。巣穴はちょっと狭いかもしれないけど、私の穴を掘るのスキルで地面を掘って広げれてやればいい。
…うん、私でも育ててあげられそう。
『一緒に住む?』
「ピー?」
小鳥に私の言葉は伝わらないし、小鳥の言葉も私にはわからない。でも、この小鳥は私になついてくれている。そして私も、この小鳥のことが気に入っていた。
『私が立派に育ててあげるからね』
短い腕を伸ばして、小鳥の頭を撫でる。きっと小鳥はなんのことか全くわかってないと思うけど、大丈夫。言葉が伝わらなくても、なんとかなるよね。
さて、育てると決めたからには、この子を立派な鳥にしてあげないと。巣穴を広げないといけないし、この子に名前だって付けてあげなくちゃいけない。
でも、まずはその前に…
―――――キュルルルルー…
私と小鳥のお腹が同時に鳴いた。
『お食べー』
「ピュルルルー!」
私も小鳥もお腹が空いていたので、まずは腹ごしらえから。巣穴を広げるのはその後にする。私がスキルで木の実を出すと、小鳥は嘴を使って器用に木の実の殻を剥いて中身を食べていた。
そういえば、この小鳥なんて種類なんだろう?
鳥は昔育てたことがあったけど、種類が多すぎてあんまり詳しくはない。インコや文鳥くらいなら知っているし、この子がそうじゃないことくらいはわかる。鑑定してみるのが一番早いかな。
【名前】なし
【種族】ベビーフェザー
【ランク】E-
【レベル】3/5
【HP】16/16
【MP】8/8
【攻撃力】9
【防御力】6
【魔力】7
【素早さ】11
【器用さ】8
【固有スキル】なし
【通常スキル】飛行Lv1、体当たりLv1、つつくLv1、氷魔法Lv1
【耐性】落下耐性Lv1
【称号】なし
んんっ?!!
ちょ、ちょっと待って…この小鳥、魔物なの?!こんなにかわいいのにっ?!!
プチスライムよりランクもステータスも上だよね?!
「ピュイ?」
小鳥…訂正、魔物の子どもが、首を傾げながら呑気そうにこちらを見ていた。