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異世界転生ハムスター  作者: 森林 木々
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2.マイホームとスキル

 ひとしきり動揺した後なんとか落ち着いた私は、一人とぼとぼと歩き始めた。

 私のステータスのスキルとやらを見る限り、他にも魔物や何が生物いるのは間違いない。

 そうとなれば、このままここにいるのは危険だ。他の魔物にでも見つかってしまったら、こんな小さな身体と低ステータスでは勝てる気も逃げきれる気もしない。


『どこかにいい場所ないかなぁ…』


 とりあえずしばらくの間、住める場所もしくは隠れられる場所を探す。まずはこの世界のことを知らなければならないし、スキルやステータスがどういったものなのか、自分自身のこともよく知らないといけない。そのためには、ゆっくりと落ち着ける場所が必要だった。


『大丈夫…私、ゲームとか好きだし…』


 まさか自分がその対象になるとは思わなかったけど。






 背の高い草むらや大きめの石に隠れながら森を進むと、一際大きな二本の木が仲良く並んでいた。枝や根が途中で繋がっているようで、なんだか双子みたいだ。

 その双子の木の根の間に、目立たないけど隙間がある。あそこなら…


『誰もいない、よね…?』


 そっと隙間を覗くと、やはりその奥は空間になっていた。大小様々な根っこが複雑に絡み合い、屋根や壁のようになっている。小さな身体の私には広すぎず狭すぎず、丁度良い広さだ。もちろん中には誰もいないし、枯れ葉が一枚落ちているだけだった。


 よし、ここをしばらく拠点にしよう!


 雨も風もしのげるし、入り口も目立たないから他の魔物や生物に見つかることもないだろうし。近くの草や葉っぱを集めればいい感じのベッドも出来そう。夜は暗くなっちゃうだろうけど、早寝早起きすれば問題ないよね。

 うんうん、これならなんとかやっていけそう。色々と心配してたけど、なんとかなりそうじゃない。あとは…


 キュルルルル…


 …お腹すいたな。

 気が付いてから結構歩いたけど(身体が小さいから実質はほとんど進んでないんだろうけど)、さすがにお腹が空いてきた。ここに来るまで、食べ物のありそうな所なんてあったっけ…?


『うーん…』


 どうしたものかと考えていると、ふと自分の頬袋に何か入っていることに気が付いた。左手で頬袋を伸ばし、右手を奥に…って、全然届かないし。え、これどうやってとるの…?奥に入ってるからまず手前に出してこないと駄目なのかな…んー…とれた!


『やった!』


 頬袋に入っていたのは、思った通り何かの木の実だった。

 形は向日葵の種のような形をしていて、色は白っぽい。よく頬袋に入ってたなってくらい大きいけど、とりあえず貴重な食料だ。

 …これ、食べても大丈夫だよね?


『……………鑑定』


 先程確認した自分のステータスに【鑑定】があったことを思い出し、手にある木の実を鑑定する。



【トレントの実】食用可。みずみずしくて少し甘い。



 …大丈夫みたい。なんだか魔物の名前な気がしなくもないけど、この見た目でみずみずしいの…?

 少し不安になりながらも、そっとトレントの実をかじる。


 もぐもぐもぐ…うん、確かにみずみずしい!味としては、ちょっと味の薄い林檎みたいな感じかな。喉も渇いてたし、丁度良い。

 少し食べ始めるとお腹がより空いてくるもので、私は結局全て食べてしまった。


『ふぅ…』


 まだちょっとお腹は空いているけれど、この世界での初めての食事にしては上出来じゃないだろうか。私がいつ、この木の実を頬袋に仕舞っていたのかは全く見当がつかないけど。


 さて、お腹もくちくなったところで、色々と考えてみる。まずは自分のことだ。


 私はハムスターで、ステータスもランクもめちゃくちゃ低い。スキルと耐性はいくつか持っているみたいで、称号とやらに転生者とあるから、やっぱり私は元の世界では死んでしまったんだと思う。


 スキルの鑑定では自分のステータスも木の実のことも鑑定出来たから、もしかして何でも調べられる便利スキルなのかな?

 Lv1となっていたから、何らかの方法でLvが上がっていくのかもしれない。となるとだいたいは使い込んだ分だけ熟練度が上がっていくパターンだと思うんだけど…とりあえず、目についたもの、気になったもの、手当たり次第鑑定してみるか。

 他のスキルのことも気になるし、あとで他のスキルも鑑定してみよう。


 他の魔物や生物のことだけど、これに関しては全くわからない。まだ自分以外の魔物にも生物にも出会ってないし、私のステータスじゃ少し怖い。

 さすがにスライムくらいになら勝てるかもしれないけど、もう少し色々と調べてからにしたいかな。私の攻撃スキル、二つくらいしかなさそうだし。


 そういえばスキルには固有と通常の二種類があったけど、これも何か違うのかな?通常の方のスキルにはLvが付いてたし…固有はその種族だけが持ってる、特別なスキルって感じなのかなぁ…


『試しに鑑定してみるか』


 まずは固有スキルの一つ目にあった、木の実マスターを鑑定してみる。



【木の実マスター】世界中の食用可能な木の実を、ランダムでいくらでも出すことができる。また、このスキルの持ち主は木の実の効果が二倍。



 おぉー!これ、なかなかな良スキルなんじゃない?

 食べるものに困らなさそうだし、効果が二倍っていうのはよくわからないけど、しばらくはここに引きこもってても大丈夫そう。

 でもいくらでも出せる、んだよね?どうやって出すのかな…念じる、とか…?


 ザァァァァッ


『わっ!?』


 次の瞬間、私の背後で何かが溢れる音がした。びっくりして振り返ると、そこには大量の木の実がある。なるほど、そういうことか。

 …うん、スキルの使い方はだいたい理解した。


 私は適当に手に取った木の実をかじりながら、この調子でもう一つの固有スキルを鑑定する。



【動物好き】低ランクの魔物になつかれやすい。



 シンプルな説明だこと。まぁわかりやすくていいけど。

 なつかれやすいってことは確実ではないんだろうけど、多少なら魔物に見つかっても見逃してもらえるかも?


 固有スキルに関しては、確かにLvは関係なさそうな内容だった。今度は通常スキルを鑑定してみる。



【鑑定】世界の様々なものを鑑定する。Lvが上がると鑑定出来るものの種類が増え、更に詳しく鑑定出来るようになる。



 私の鑑定はまだLv1だったから、鑑定出来る情報が少ないのか。今後のことも考えると、鑑定のスキルは上げていった方が良さそうだ。


 木の実をポリポリとかじりながら、次々と通常スキルを鑑定してみる。

 やはり私の攻撃スキルは体当たりとかじるの二種類で、穴を掘るは攻撃というより回避や防御向けのスキルのようだった。


『んー…』


 住む場所も見つかったし、便利スキルのおかげで食料の心配もないし、今のところ順調な私のハムスターライフ。もちろんまだまだ不安なことは多いけど、それでもなんとかやっていけそうな気がする。


 お腹もいっぱいになったし、安心したらだんだん眠たくなってきた。今が何時なのか、そもそもこの世界が24時間制なのかもわからないけど、そろそろ休もうかな…色々あったし、さすがに今日はちょっと疲れちゃった。

 私は適度な大きさの木の実の殻を枕にして、この日は眠りにつくことにした。




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