10.初めての戦闘
今日は朝から昨日の作業の続きをしていた。私が小石を拾い集め、その後をマシロが踏み固め整地していく。
ベッドをもう一台作るかも考えたけど、マシロが成長した時のことを考えてやめた。
マシロはまだ赤ん坊だし、きっとすぐに大きくなる。干し草は昨日マシロが抜いて遊んでいたものが大量にあるし、これを地面に敷き詰めればなんとかなるはずだ。
「ピッ!ピッ!」
マシロが嘴でちょんちょんと私をつつく。踏み固める作業が終わったみたいだ。
『ありがとう、マシロ』
頭を撫でてあげると、マシロが目を細めながらふわりと羽を広げる。柔らかくって綺麗で、ずっと埋もれてたいくらい。抜けた羽を集めておけば、いつか何かに使えるかも?
そんなことを考えながら、午後(正確な時間はわからないからあくまで私の感覚だけど)の予定を考える。
今日は、魔物と戦ってみようと思う。もちろん実際に戦うのは私じゃなくて、マシロなんだけど。
マシロは赤ん坊とはいえ立派な魔物だ。私とは比べ物にならないステータス、プチスライムにも負けないランクとステータスを持っている。
レベルも3/5となっていたから、今までに魔物と戦ったことがあるんだと思う。プチスライムなら以前の場所に居るだろうし、マシロなら勝てるはずだ。
『今日は頑張ろうね』
「ピュイ?」
私に出来ることは、きっと少ない。でも、木の実でマシロを助けることは出来る。
せめて攻撃魔法でも使えればいいんだけど、レベルの上がらないハムスターの私には無理なんだろうな。
元気になったばかりのマシロに戦ってもらうのは少しかわいそうだけど、魔物がレベルを上げるには戦って経験値を得るしかない。レベルを上げないと進化も出来ないし、マシロがいつまでも赤ん坊の姿でいる訳にもいかなかった。
私たち自身もいつまでここに住んでいるかわからないし、せっかくならマシロと一緒にこの世界のあちこちを旅してみたい。そのためには、レベル上げは必要だった。
『とりあえず、お昼ご飯にしよっか』
相変わらず、木の実ばっかりなんだけど。種類はいっぱいあるから、飽きない…よね?
私はいつものように木の実を出し、マシロと一緒に昼食にすることにした。
昼食を食べ終え、私たちは以前プチスライムに遭遇した場所に来ていた。今のところ、辺りに魔物の気配はない。
途中で三日月型の傷のある鼠の巣穴に立ち寄ったけど、居ないようだったので木の実を差し入れしておいた。この前は喜んで受け取ってくれていたし、今回もきっと喜んでくれるはずだ。
「ピュルル!」
マシロはマシロで広い場所に来れて嬉しいのか、辺りの植物をつついたり石の上に登って羽ばたいたりしている。飛行Lvが低いとあまり上手く飛べないらしく、こうやって練習してくんだろうな。
─────ガサッ
そんなこんなでのんびり過ごしていると、少し離れた草むらから物音がした。マシロもそれに気付いたのか、遊んでいたのをやめ私のそばに寄ってくる。
心無しか、マシロの目がキリッとしている気がする。魔物同士だと、何か気配を感じたりするのだろうか。
─────ガサガサッ
「ピュイッ!!」
草むらから予想通りのゼリー状の塊が出てくると同時に、庇うようにマシロが私とプチスライムの間に入ってくる。私を守ってくれているのか、はたまた魔物の性なのか。前者だと嬉しいし、マシロのことだから前者なんだろうなって思う。
プチスライムが身体をもごもごとさせながら、私たちに近付いてくる。まだ距離はあるから、今のうちにプチスライムを鑑定する。
【名前】なし
【種族】プチスライム
【ランク】F
【レベル】3/5
【HP】10/10
【MP】5/5
【攻撃力】5
【防御力】4
【魔力】5
【素早さ】7
【器用さ】2
【固有スキル】変形
【通常スキル】体当たりLv1、溶かすLv1
【耐性】落下耐性Lv1、毒耐性Lv1
【称号】なし
どうやら、以前とは別のプチスライムのようだった。同じ種族でも、ステータスやスキル、耐性が違うんだ。うん、これは新たな発見。
「ピュルルルー!!!」
そうこうしている内に、マシロが羽を大きく広げて高らかに鳴き声をあげた。次の瞬間、
―――ヒュンヒュンッ!!
マシロの羽の先から鋭く尖った氷の塊が生成され、真っ直ぐ飛んでいく。氷の塊はプチスライムを貫くと、プチスライムもろとも消滅した。
今のが、魔法…?
「ピュイー!」
マシロが得意気に私の方を振り返り、褒めてくれと言わんばかりに頭を差し出してくる。
一方の私は、あまりの早さに唖然としていた。魔法を見たのも初めてだったし、あんな一瞬でプチスライムを倒せるなんて…
『マシロ、もしかしなくともめちゃくちゃ強いの…?』
「ピッ?」
このあと現れたプチスライムたちも、マシロによる華麗な氷魔法により次々と消滅していったのは言うまでもない。