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これは、壮大なイジメか?1 ヤバすぎる降臨の祭典


 ロワールブランジュ教団という得体の知れない宗教団体は、異世界の大陸アルファンヴェールという場所にあるらしく、恭平とベアトリスは、転移門――俗に言うゲートを通って、その世界へと至った。


ちなみにそのゲートは日本におけるロワールブランジュの教会内にあり、できたてほやほやの新型であると同時に――見た目は、単なる巨大な魔法陣だった。

 それより驚くのは、その白い洋風の教会入り口に、ちゃんと「ロワールブランジュ教」と看板があったことだ。


 場所は恭平のアパートから電車で数駅離れた秋葉原駅近郊だったが、まさかオタクの街に異世界の宗教団体があるとは!


 その驚きも醒めないうちに、恭平はベアトリスと共にゲートを経て、異世界の教団本部とも言える教会へ出たのである。

 どうやら先にベアトリスがなんらかの方法で連絡を入れておいたらしく、巨大な屋根付きスタジアムのような場所に出現した二人を、いきなり大歓声が迎えた。


 漏斗場に配置された、周囲の客席みたいな数段重ねの椅子に充ち満ちた、人、また人、さらに人! 数百万の信徒というのはどうやらフカシではないらしい。


 なぜなら、既にここに、最低でも二万人くらいはいたからだ!





「うあああああっ」

「戦神、ロワールブランジュ!」

「偉大なる我らが教祖っ」

「転生された、偉大なる神よっ!」

「十年ぶりの、約束された救世主様あっ」

「我らをお導きくださいぃいいっ」


 叫んでいる信徒達は、全員が絶叫していた。

 正直、「マジかっ」と恭平は精神的に数歩たじろいだ。


 観客……ではなく信徒達のほとんどは泣かんばかりに感激した様子であり、あるいは実際に泣きじゃくっており、心底感激しているのがわかる。 

 呆れたことに誰一人として「戦神の転生とか、笑かしてくれるわっ」などとは疑っていないらしい。恭平自身は思いっきり疑っているというのに。


 しかも、出現したばかりの恭平を、帯剣した戦士達が取り囲み、片膝をついていた。

 挨拶くらいはした方がいいのかと恭平が考えている間に、ベアトリスが話しかけた。


「ご覧下さい、ロワールさま(誰だよっ)。今、聖刀ゲネシスに罪人が引っ立てられていきます」


 言われて恭平が見れば、首に鎖を繋がれた半裸の男が、兵士達に引きずられるようにして、中央へ連れていかれる途中だった。


 そこにはなぜか、刀にしか見えない武器が地面から突き出た手に握られていて、しかもその周囲を青い薄霧のようなものが覆っている。


 腕だけが地面から生えているのも不気味だが、周囲が青いフィルターに浸されたように見えるので、不気味感がさらにアップしていた。




「あの刀は?」

「聖刀ゲネシスです、ロワールさま」


 ベアトリスが、辛抱強く繰り返した。


「天上で過ごされていた頃よりの、ロワールさまの武器でございます」


 当然、恭平がよくわからない顔をしていたからだろう、ベアトリスは詳しく説明してくれた。



「あの聖刀は、先代の教祖様が死の間際にあそこへ安置されたものです。代々、戦神の転生体である教祖様しか持つことが許されていませんし、その資格なき者があの刀に触れようとすると、即座に神罰が下ります。……これは、重罪を犯した罪人への罰であると同時に、教祖さまの権威を示すために、今回特別に催された降臨祭典でもあります」



 ……恭平は決して頭の回転が速い方ではないが、この時ばかりはなぜかはっきりとわかった。おそらく、生存本能故だろう。



「もしかして――先にあの罪人が聖刀に触れようとして死ぬところを見せておいて、その後で俺が颯爽と聖刀を手に取る、という段取りかな!?」



 やめてくれ、頼むからやめてくれっという思いで尋ねたのだが、あいにく、ベアトリスは大喜びで低頭した。


「さすがはご慧眼けいがんであらせれますっ。まさしく、そういう催しであり、ロワールさまの十年ぶりの復活を、内外に示すための祭典なのですっ」


 冗談じゃないぞっと恭平は思った。

 逃げたかったが、周囲は強そうな教団所属らしき戦士に囲まれ、とても逃げるような隙はない。そもそも、この異世界でどこに逃げるのかっ。


 恭平があたふたしているうちに、罪人とやらは、槍で追い立てられるようにして、聖刀の方へ進んでいった。

 しかし、見た目には青く染まっているようにしか見えない部分に立ち入った途端――その罪人の運命は決まった。


 悲鳴が聞こえたが、それが一瞬で終わったのは、本人のためにも、そして見物していた恭平のためにも幸いだったろう。

 半裸の男は、聖刀に辿り着く前に溶け込むようにして消滅してしまったからだ。肉切れ一片も残さず。

 一拍置いて、大歓声が湧き起こる!

 偉大なる我らが神よっ、などと叫ぶ声もあちこちから聞こえ、恭平は頭が痛くなった。


 次は俺の番か!

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