プロローグ:side????
プロローグです。
初投稿ですので至らない点が多々あるかと思いますが、温かい目で見ていただけると幸いです。
宇賀神透夜には探し物がある。
何処にあるのか、誰が持っているのか、なぜ探しているのか、何一つ分からないけれど、それは自分が自分である為に必要な物のような気がしている。
けれど、無い無い尽くしの探し物だから、誰にも尋ねられない。
ただ、『それ』がないから常に安堵を覚えないのかもしれないとは思っていた。
反対に宇賀神透夜には記憶がない。
何処で生まれたのか、誰が家族なのか、なぜ記憶がないのか、何一つ分からないまま生きてきた。
今年で16歳になるが、これまで透夜の過去を知っているという人物にあったことがないから、まだ暫くは不明なんだろうとぼんやり感じている。
ただ不思議なことに、幼少期から自分が異端であることを知っていたけれど、孤独だとは思っていなかった。
自分を証明するための探し物と記憶喪失。とても主人公に適したステータスだと、透夜自身自覚している。
それだけではない。見た目も驚く程に整っている。真っ白な髪と赤と青のオッドアイなんて役満過ぎて笑ってしまうような色彩をしているし、身長も順調に伸びてモデルのようなスタイルだ。
それに今透夜を育ててくれている家は大層な家柄の本家筋で、ご当主様から使用人まで皆余所者の彼に優しくしてくれている。
神様は一体何を思ってこんなに贈り物をくれたのだろうか、と時々真剣に悩んでしまう程に宇賀神透夜は恵まれていた。
けれど、
いつも心に穴が空いたような空虚が巣食っている。
誰といても心の底から笑えない。
今こうしてくだらない時間を過ごしている間にも、探し物が二度と手に届かない場所に行ってしまうのではないかという焦燥感が消えない。
誰もが羨む容姿も裕福な家庭も要らないから、失くしてしまった何かを取り戻したい。
それが彼の唯一と言っていい望み。
だというのに、透夜に与えられた山のようなギフトは、しかし透夜が一番求める形の幸せを作るものではなかった。
結局のところ何が言いたいのかというと。
宇賀神透夜という青年は普通の人よりたくさんの幸運を与えられながら、たくさんの失くし物をした人間だということだ。
だからというわけではないが。
この物語の主人公は彼一人ではないけれど、彼の探し物は必ず見つかることを約束しよう。
彼が死なない限り、必ず。
きっと感動的な再会になる。誰もが感情を剥き出しにしてその光景に言葉を送るに違いない。
今からその瞬間が楽しみで、同時に少しいつまでも来て欲しくないような気もしている。
しかし、私はその瞬間の訪れを確信しているのだ。疑いようもなく、当然のようにやってくると。
だって、それが『アレ』の願いだから。
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