新たな仲間
ソニアとピアの過去編から現在の話に変わります。
クリステル達は南国のビレを後にした。
次なる目的地は大陸と多数の小島からなるスネチカ連邦国。
ビレとは違い、スネチカは雪の降る季節であった。
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貴族の屋敷がまるまる収まるほどの巨大な商船が、青い海原を裂いて突き進んでいた。目的地はスネチカ連邦。スネチカでしか採取できない鉱石は高価格で取引され始め、以来このような商船がスネチカと他国を行き来するようになった。
その船の甲板で、スネチカの港が見えることを今か今かと待っている乙女がいる。
「クリステル様、私が着くまで無事でいてね」
海風により、腰に負った彼女の赤髪がはためいていた。編んだ髪には鳥の羽をあつらえた髪飾りがあり、陽の光を反射する海面の如くきらきらと光っている。
海は穏やかだが、いつからか灰色の雲からちらほらと雪が降り始めた。甲板にいれば、肌や服に雪が浸み込むのだが、乙女は意に介さず翡翠色の双眸を輝かせ、笑顔で彼方を見据えていた。
すらりと伸びた手足に起伏の少ない細身の体。一見してしなやかな体躯を有する美女であるが、均衡のとれた顔貌には烈しい義が見て取れる。それが彼女の立ち姿に、力強さを感じさせていた。
「ピアちゃん、もうすぐ会えるよ。待ってて」
彼女、ソニアはヴェルガ国騎士団の一人である。
今はその正体を隠すため外套を纏っているが、中は騎士の正装を着用していた。女騎士の衣装は機動性に長けたコルセットとプリーツである。
彼女はメルリスと呼ばれる騎士の一人。
ソニアはかつて皇女クリステル・シェファーとその妹、アウレリア・シェ ファーの護衛を務めたほどの騎士である。
彼女は今、再びクリステルの護衛となるためスネチカへと急ぎ向かっていた。




