フェリシア・ヴェイン・ボークラーク
お嬢様、お嬢様
誰?
私です、お嬢様
マリア? マリアなの?
はい
マリア!
おっとと――
マリア、うっ、ぐぅぅ
あらあら、私のスカートを掴んで泣く癖はそのままだなんて
やっと、姿を見せてくれたのね
いいえ、私はずっと。お嬢様の側におりました
そうなの?
ええ。何度もお呼びしました。けど、私の声は届かず、姿も見えなかったようで
なら、私が見えるようになったのね。マリアのことを
お嬢様が見てくださるから、ようやく私も触れることができましたわ。ずっとこうして触れたかった
私もよ。あなたに会いたかった、また一緒に過ごせる日を夢見ていた
はい
あの気持ちは本物だったわ。でも・・・・・・
いいのです。いいのですよ。私のことは忘れないでほしい。けれど、枷としてほしくありません
違う、枷だなんて思ったこと、ないもん
私のことが見えるようになったのは、あなたの心が光へ向かったから。あの方は、お嬢様を導いてくださった。だからこうして、髪を撫でてあげられる。お嬢様を抱きしめることができます
あの子、私を救ってくれた。それなのに私・・・・・・酷いことをたくさんしたわ。傷つけてばかり
はい、はい
殺してしまうところだった、あの子のこと
でも、止められました。お嬢様は勝ったんです
人を殺してきたのよ、私。何百人も・・・・・・全てマリアを甦らせるためだって・・・・・・マリアを逃げ道に使って、うぅ
お嬢様
え?
泣いても良いのです。嘆いても良いのです。けど、そろそろ立ち上がって。行かなければならない所があります
マリア
さあ私の手をとって
うん
あなたは、私の宝物。ですから。いきましょう。フェリシア・ヴェイン・ボークラーク様




